トピック
「調音施工」ってなに? 音の専門メーカーが考えた“走行音静粛化プログラム”を体感した
フォーカル・オーディオ・ジャパン独自の新工法で「静けさの質」はどれだけ向上するのか
- 提供:
- フォーカル・オーディオ・ジャパン株式会社
2020年12月22日 00:00
クルマというのは、エンジンやタイヤの発するノイズや風切音などにより意外と騒々しいものだ。気にしなければ済む話ではあるが、快適性にこだわる人や敏感な人にとっては、ひとたび気になり始めると、次に乗ったときもその次に乗ったときも気になってしかたがなくなる。もちろん、放っておいてもよくなるわけはないし、実際にはいろいろなものの経年劣化や走行による負荷の蓄積で少しずつ悪化していくもの。
「せめてタイヤだけでも……」と、新品に履き替えたら少しは静かになる場合もあるものの、タイヤの消耗や劣化は避けては通れないので、そのうちまた同じことの繰り返し。なんとか手軽にできて効き目のあるよい手立てはないものかと思ったことのある人は少なくないんじゃないだろうか。
そんな車内へと入り込むノイズ類がちょっと耳障りに感じている人にもってこいの耳よりな話がある。それは、フォーカル・オーディオ・ジャパン(Focal Audio Japan)が新たに編み出した「調音施工」という走行音静粛化プログラムだ。ぜひ目と耳を向けてみて欲しい。
初めて聞く「調音施工」ってナンダ?
「この調音施工は、クルマが走る際の主な騒音源となる“ロードノイズ”と“エンジンルームからの透過音”という2つのノイズに的を絞りピンポイントで対策するもので、独自に開発した遮音材を適宜ホイールハウス周辺と、希望によってエンジン車ならエンジンルーム(バルクヘッド周辺)、EV(電気自動車)なら走行音の入ってきやすいラゲッジスペース周辺に施工することで、車内に入ってくるノイズを低減させるものです」と、フォーカル・オーディオ・ジャパンの中島氏が解説してくれた。
続けて中島氏は「ただ“遮音材を貼る”とだけ聞くと、昔からあるオーディオのカスタムメニューの“デッドニング”を想起する方もいらっしゃるのですが、調音施工はまったく考え方が異なります。天井やドアの内張を剥がした内部やフロアマットの下に遮音材を貼るデッドニングは、車室を完全に包み込むことで確かに音響をよくする効果はありますが、大量に貼り付けるとクルマが重くなるうえに、車種によって貼る量が異なりあらかじめ価格が分からないといった問題があると考えています。そこで、我々が提案する調音施工の場合は、4輪のインナーフェンダーへの施工を“基本プログラム”とし、最小のコストで最大の効果を得ることができるのを特徴としています。また、バルクヘッド周辺やラゲッジスペースへの追加施工は“オプションプログラム”で希望制としています」と調音施工の透明性を説く。
いろいろな車種を施工したことでデータも蓄積してきたそうで、中島氏は「インナーフェンダーが半分しかない車種の場合、遮音材を貼る量も半分になってしまい、しっかりとした効果が得られないので適合外としています。特に日本車はフロントのインナーフェンダーが半分しかないクルマが多いです。もちろんボディ(鉄板)に直接貼っても効果は得られますが、貼ったシートが剥き出しの状態という訳にはいきません」と、適合車種が限定される理由を明かしてくれた。
施工前にノーマル状態を体感しておく
ここまで知っただけでも、施工するとどれぐらい効果があるのかが気になるところ。そこで今回は、Car Watch営業スタッフが私用車で使っている走行7万km超えの「BMW 118d」を使い、実際に調音施工を試してみることに。まずは都内からの往路で、あらかじめ施工前の車内のノイズ状況をしっかりと確認しておいた。
BMWのディーゼルエンジンは、走りのよさには定評があるが、やはりディーゼル。それなりに騒々しい。実はこのBMWには、走行距離の少ない頃からたびたび筆者も乗る機会があったのだが、やはり距離が増えるにしたがってだんだん音や振動がにぎやかになってきたのは否めない。それにBMWのエントリーモデルである1シリーズに、上級モデルと同じような手の込んだ手当てが施されていることには期待すべくもなく、施工前後でどう変わったか、より違いが分かりやすいような気がする。
そしてアクアラインを渡りきってすぐの、木更津のフォーカルプラグ&プレイ本店に到着。作業時間の目安は、4輪インナーフェンダー施工の基本プログラムは約4時間~、基本プログラム+オプションプログラムは5時間~となる。今回は取材なので作業を見学させてもらったが、大型ショッピングモールの「三井アウトレットパーク木更津」が歩いて行けるほど近くにあるので、ドライブの機会に合わせてあらかじめ予約しておき、最初にクルマを預けてしまい、作業してもらっている間にアウトレットで食事やショッピングをゆっくり満喫するということもできちゃうのも嬉しいポイントだろう。
さっそく作業に入る。まずはホイールハウス内側にあるインナーフェンダーを外し、糊が付くようにしっかりと洗浄。インナーフェンダーの裏側は、そうそう洗う機会がないので、かなり汚れているクルマがほとんどで、こういう機会に洗浄してもらえるのもありがたいポイントの1つ。
BMW1シリーズの場合、フロントのインナーフェンダーはプラスチック製で、リアのインナーフェンダーは糊が貼りつき難いフェルト製だったため、リアはボディに直接貼り付けるが、インナーフェンダーがしっかりあるので仕上がり状態でシートが見えることはない。
クルマによって手順や貼り付ける範囲は異なるが、4か所のホイールハウスに施工するのは同じ。フォーカル秘伝の3層構造の遮音シートを、見てのとおりくまなく貼り付けていく。隙間があるとそこから音が侵入してしまうので、本当に文字どおり「くまなく」である。その作業に、まさしくプロフェッショナルぶりをヒシヒシと感じた。
さらに今回は、先ほどのホイールハウスまわりを中心とした基本プログラムに加えて、オプションプログラムとなるエンジンルーム内のバルクヘッド周辺を中心とした施工も合わせて実施してもらった。こちらはワイパーなど作業の邪魔になるパーツはすべて外すのでけっこう大掛かり。しかもBMWのFR系で1番コンパクトであり、かつフロントミッドシップゆえエンジンが後方に搭載されている(加えてディーゼルエンジン)モデルを今回体験車両として用いた事もあり、バルクヘッドとの隙間はかなり狭く、工具が入らないところも手作業でしっかりと効果のある部位に貼り付けていく。スゴイ! これぞ職人技! またしてもプロフェッショナルぶりを目の当たりにすることができた。
この作業をしている時点では、F20型のBMW1シリーズは初めてとのことで適合車種には入っていないが、今回の施工により今後のラインアップに加わる予定だ。このように確実な作業実績をベースに、地道に適合車種を増やしている姿もプロならではのこだわり。施工してしっかりと効果が認められなければ適合車種には入れてもらえないわけだ。
施工完了。その効果のほどは……ぜんぜん違う!
ドキドキしながらいざ乗ってみると、ぜんぜん違う! エンジンスタート直後のアイドリング状態からしてだいぶ静かになっていたが、走り出してすぐに明らかな違いを体感。アクセルを踏んだときのエンジン音と振動がオブラートで包んだように抑えられて、ディーゼル特有のゴロゴロした感覚が薄れ、滑らかになったように感じられた。
さらに、段差を乗り越えたときのタイヤのアタック音も格段に小さくなっている。おかげで足まわりはまったく変わっていないのに、突き上げが減って乗り心地がよくなったように感じたほどだ。さすがに「対処するのが難しい」と中島氏がいう低速域で発する低周波の音については若干耳に入ってくるが、中速域からの騒音はひとたびクルマに乗ると必ず感じる領域なので、こうして快適になったのは本当にありがたい。
そして帰路、アクアラインに乗ってエンジンを上まで回してみると、より違いは明白で、圧倒的に静かになっている。まるでディーゼルエンジンがガソリンエンジンになったかのようで、本当は変わっていないのに、吹け上がりまで軽やかになったように感じられたほどだ。
また、施工前よりタイヤのロードノイズが減って、前後席間の会話の明瞭度がまったく違う。さらには、施工前はロードノイズでかき消されていた風切り音を「本当はこんなに風切り音が鳴っていたのね」と感じるほど車内が静かになった。違いは歴然としていた。これなら長時間のドライブでも疲れが少なくてすむことが期待できる。
最大のポイントは「静音」ではなく、あくまで「調音」であって、目的はそのクルマが持つ本来の静粛性を発揮させることにあるともいえる。それに「調音」という言葉は、音を調律するというプロフェッショナルな雰囲気も携え、質の高さを感じさせてくれる。
中島社長は「施工した直後はその効果の大きさに感動して頂けるのですが、人間は慣れる生き物でして、その状態が1~2か月も続くと、それが標準値として体にインプットされます。そのあとにノイズが聞こえてくると調音施工の効果が薄れたように感じる方もいらっしゃいますが、効果は維持されていますのでご安心ください」と教えてくれた。
その他の車種の効果も気になるところ
せっかくなので、作業中にフォーカル・オーディオ・ジャパンのデモカー「テスラ モデル3」と「メルセデス・ベンツ E 220 d ステーションワゴン」も試乗させてもらったのだが、こちらも同じく未施工の車両とはぜんぜん違ったことをお伝えしておこう。
駐車場を出る際に段差を越えて最初の信号まで低速で数十m走ってみただけでも違いを感じられ、静かで滑らかになっているのは明らか。さらに周辺を走ってみると、とくにフルBEVのテスラは、タイヤの音を抑えるだけでこんなに静かで快適になるのかと感動。一方のメルセデスは、意識させられたはずのディーゼルの音や振動がずっと低減していた。前出のBMW 118dよりもずっと走行距離が少なく、もともとコンディションがよい個体でも効果をしっかり体感できることを確認できた。
いずれも足まわりは何もしていないのに乗り心地までよくなったように感じたのは筆者だけでなく、すでに愛車に施工してもらった多くの人からも同じような感想が聞かれたとのことで、“音”そのものが人間の快適性に対する感覚に大きな影響を与えていることの表れといえそうだ。
そして、こんなに気持ちのよい変化を体感できるにも関わらず、施工費用が10万円あまりという金額のリーズナブルさにもあらためて驚かずにいられない。作業にはそれなりに時間を要するし、見ているとかなり手間がかかっている。割に合わないんじゃないだろうかと心配になったぐらいだ。
現状で対応する車種は、テスラ「Model 3」「Model X」「Model S」、メルセデス・ベンツ「Cクラス(W205/S205)」「Eクラス(W213/S213)」、BMW「X1(F48)」「2シリーズ(F25)」「3シリーズ(G20/G21/F31/F34)」「X3(G01)」「5シリーズ(G30/G31)」、ポルシェ「ボクスター(981)」、アウディ「A4(B9)」、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア(30系)」「ハリアー(60系)」となっているが、車種によって施工の効果に大小があることも判明しており、効果の大きい車種から徐々に増やしていく予定とのこと。すでに対応車種に乗っている人、または「言われてみればちょっとノイズがうるさい気がするけれど、対応車種に入っていないクルマでも施工可能かな?」と思った人は、ぜひ一度問い合わせてみてほしい。とにかくこの変わりぶりはスゴイ!