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D-SPORTが合法チューンドのコペンで挑むタイムアタック企画が本格始動!

新規パーツも投入したシェイクダウン走行レポート

ダイハツ車用のトータルチューニングブランドであるD-SPORTは自社製品を組み込んだLA400K コペンで筑波サーキットのタイムアタック企画を開始

「ダイハツ車の性能を最大限に引き出す」というテーマのもと、各種パーツを開発、販売しているダイハツ車のトータルチューニングブランドのD-SPORT。ダイハツ車販売店での取り扱いと装着が可能ということでダイハツ車オーナーにはおなじみの存在である。

 そのD-SPORTはパーツ開発の一環として、2017年にLA400K コペンを使用した筑波サーキットでのタイムアタックを行なっているが、今回は新パーツを投入した新たな仕様でのシェイクダウンを行なうとの情報が入りCar Watchも現場に同行したので、新たなデモカーの情報とシェイクダウン走行の模様をお伝えしたい。

D-SPORTが筑波サーキットのタイムアタック用に製作しているコペン。2017年にもこのコペンで筑波サーキットコース2000を走行しているが、今回は仕様を大幅に変えているのでまたイチからの挑戦となる
こちらはプロジェクトをまとめるD-SPORTの松尾光洋氏。コペンのポテンシャルの高さを証明するための取り組みで、2017年に最初のトライを行ない、2020年から再始動したとのこと
Robeのように見えるが実はXPLAYがベース。デモカーに装着されているエアロパーツは東京オートサロン2017出展用に製作したワンオフ品。オーバーフェンダーも装着するが車幅は軽規格に収まる。リアウイングはワンオフ

 車両の主な仕様に関して紹介しよう。D-SPORTはダイハツ車販売店でも取り扱うチューニングブランドであるため、サーキットが舞台になる取り組みに対しても走らせるクルマは保安基準適合であることが大前提となる。

 そのため使用するパーツはD-SPORT製品を中心に(一部試作品も含まれる)、車高も最低地上高の基準を厳守、タイヤも車検対応サイズのストリートラジアルを装着。また、一般ユーザーが普段行なうことのない内装やエアコン、ナビなどを取り外すような軽量化もしない。つまり希望すれば同等の仕様をダイハツ車販売店で製作できるレベルでクルマを作っている。

D-SPORTの製品はダイハツ車販売店での取り扱いと装着が可能な保安基準適合パーツ。それだけにタイムアタック用のクルマといっても合法仕様となる。この日はD-SPORTが所有する7台の新旧コペンが筑波サーキットに集結した

 今回の仕様で最大のポイントになるのがD-SPORTのLA400K/A コペン用「コペン スポーツECU」というチューニングコンピュータを装着しているところだ。

 コペンにはVSC(ビーグル・スタビリティ・コントロール)という横滑り抑制用の電子制御が装備されていて安全性や走行安定性が高められているのだが、速度制限がないサーキットでは話がちょっと変わってくる。

 サーキットでは一般道では発生しない高いG(重力加速度)が出る速度域で走行したり、タイヤをスライドさせるなど特殊なテクニックを使うのだが、そういった走らせ方をするとVSCは「異常な状態」と判断、車体の挙動を安定させるため出力抑制の制御を行なう。すると状況が落ち着くまではアクセルを踏み込んでも加速しない状態になってしまうのだ。

 なお、コペンにはVSCの動作を切り替えるスイッチがダッシュボード部に付いているが、VSCは事故を未然に防ぐための機能なので、スイッチをオフにしても完全な機能オフにならず通常より余裕を持った介入タイミングになる。ただ、それでもサーキット走行やジムカーナなどハードな走行をするとバンバン介入してきてしまう。

 こうした状況に対してD-SPORTのスポーツECUはVSCの介入レベルをスポーツ走行に対応するよう適正化。サーキット走行はもちろん、ジムカーナなどコペンでスポーツ走行を楽しみたい人にとって必須のアイテムといえるものだ。

 それに加えて燃料マップ、点火時期マップ、ブーストマップの変更により最高出力は約80ps、最大トルクは約11kgm(D-SPORTによる開発値、この数値は保証されるモノではない)となる。さらに電子制御スロットルの動作の適正化やスピードリミッターの設定値変更も行なわれているので、実質的な速さも向上する内容になっている。

コペンユーザー待望のLA400K/A コペン用のチューニングECUとなるD-SPORTの「コペン スポーツECU」。ユニット販売のみでノーマルECUを書き換えることはしていないし下取りも不要。販売店に入庫時などでノーマルECUが必要になった場合は付け替えて対応できる。価格は高熱価プラグ3本付きで12万8000円(税別)

 そのほかエンジンでは吸気系は試作品へ変更し、排気系にD-SPORT製のフルチタンマフラーを装着する。このマフラーは現在市販されているモノで、特徴はシングルテール化とチタンという軽量素材の採用。これらの効果によってノーマルマフラーより約4kgもの軽量化を実現。排気音に関してもJQRの認証を取得済みの新基準対応品なので、ダイハツ車販売店でメンテナンスをしている車両にも安心して装着できるマフラーになっている。

ノーマルマフラーは左右振り分けのレイアウトだが、D-SPORTのフルチタンマフラーは左側シングルテールになる。価格は21万5000円(税別)
取り回しレイアウトの変更と軽量素材の使用により、重量はノーマルマフラーより約4kg軽くなっている
インタークーラーは2020年9月に発売された「レーシングインタークーラー」を装着。純正インタークーラーより容積比は200%以上となる。価格は7万8000円(税別)
ラジエターは「スーパークーリングラジエター」に交換。オールアルミ製の2層コアになっている。価格はMT車用が7万8000円(税別)、CVT車用が8万8000円(税別)

 サスペンションはショーワチューニングの「Evolution-極-」を装着。これはショーワチューニングのコンセプトである「ストリートからワインディングに対応」という領域だけでなく、サーキット走行にも対応するスペックに仕上げてあるハイスペックシリーズだが、車高調整式サスキットのように組み込んでからいろいろな調整をする必要はなく、組み込めば即最適なセットアップを得ることができる作りとなっている。セットされるスプリングはフロントが31N/mm、リアが30N/mmで、車高ダウン量は前後ともに5~10mmダウンとなる。

 なお、2017年のときは車高調整式サスキットを使用していたがD-SPORTの松尾氏によると、ユーザーのクルマ作りの参考にしやすくするためノーマル形状ショックでシンプルに進める方向へ方針をシフトしたとのことだった。

サスペンションはショーワチューニングの「Evolution-極-」を装着。街乗りも快適な仕様ながらサーキット走行もこなす。価格は12万8000円(税別)
ブレーキは開発中のキャリパーキットが装着されていた。サーキットを走るコペンではブレーキのコントロール幅が広まることと、耐フェード性が大幅に向上するのでとても有効なパーツ。発売時期は2021年4月頃、価格は未定。タイヤはブリヂストンのポテンザRE-71RS。タイヤも2017年から変わった大きな要素の1つ

仕様変更と新パーツ投入で走りはどう変わった?

 今回の走行はスポーツECUを含めた新仕様の状態を見るためのシェイクダウンとなる。ドライブするのは前回のアタックも担当した加藤彰彬氏。レーシングドライバーでもあり、東京都町田市にて「TCR JAPAN」というチューニング、メンテナンスガレージを主宰し、D-SPORTパーツ開発のサポートも行なう人物だ。

 新仕様になって初めてのサーキット走行ということで最初の走行は主に全体のチェックにあてていたが、2度目の走行ではペースアップするものの、タイムを出すことよりECU交換に伴うアクセルのツキやパワー感、それにノッキングなどの有無、そしてコーナーではわざと挙動を不安定にすることでVSCの介入状況も確認していた。

アタックドライバーはD-SPORTのパーツ開発のサポートも行なうTCR JAPANの加藤彰彬氏。レーシングカート出身で、国内レースのほかニュルブルクリンクVLNシリーズや24時間耐久レースに参戦歴があるレーシングドライバーでもある

 冬季の筑波サーキットはタイムアタックに向けた練習走行やセットアップを行なうクルマが多く、スポーツ走行時間はけっこうな台数が同時にコースインしているが、そんな中でもときにはコーナーで普通車以上の速さを見せつつ走行していたD-SPORTのコペン、外から走りを見ている限りでは快調のように見える。

 そして走行時間が終了し、パドックへ戻ってきた加藤氏に印象を聞いてみた。最初は運転席側ダッシュボードにあるVSC動作切り替えスイッチを通常の位置(VSCオン)で走行したとのこと。この状態でも一般ユーザーがスポーツ走行を楽しむくらいのペースであればVSCの介入はなく気持ちよく走れるとのことだ。

 ただ、そこからさらにペースを上げていくとコーナーによってはVSCが作動することがあったという。そこで運転席にあるVSCをオフ(介入レベル下げる)にしたところ、すべてのコーナーでの介入がなくなり狙いどおりの走りが可能になったという。

最終コーナーが速いのでアンダーパワーの軽自動車でもストレートの伸びはいい。普通車と比べても遜色ないレベル
以前はVSCの介入が出ていたコーナーもスポーツECUに変えているとそれがなく、サーキットなりの走り方でスムーズに立ち上がっていけるようになった。この特性に合わせてセットアップを進めていけばどんどんタイムアップできそうとのこと
ブーストも上げてありそれにあわせた燃料、点火、スロットルの各マップも変更されているため、全域でトルクフルな印象になったという。また、アクセル操作に対するエンジンの反応もよりリニアになった

 ピットでクルマに搭載していたデータロガーに記録された走行データをパソコン上で確認。VSCの介入がない方が明らかに速く、筑波サーキットの第1ヘアピンではVSCが介入したときの走行データと比較すると、コーナー立ち上がりですぐに2車身ほどの差が開き、その後もVSC介入なしの方が速度のノリがいいので差はぐんぐん開く。1周になれば大差となるだろう。

 ただ、こうした結果が残ってもVSCが不要というわけではない。一般道を走るときはもちろんのこと、サーキットでも路面ミューが低いコースだったりウエット時は車体の安定性を確保するためにVSCは有効な機能であることは明白。そういったことからD-SPORTのスポーツECUはVSCを完全に効かなくするのではなく、介入した際の制御を適切化(ノーマルより介入しにくくしている)しているので、VSCの介入が必要なときはキチンと効いてくれるのだ。

VSCの介入がない方が速いことデータで確認。あっという間に2車身ほどの差が付く
筑波サーキットは第1コーナー、第1ヘアピン、第2ヘアピンとタイトなコーナーが多いので、スポーツECUへの交換はタイムアップのための大きな武器になる
ドライ路面のサーキットではVSC介入がないほうが好結果になるが、ウエット路面ではスポーツECU交換済みで、スイッチ標準位置のVSC制御くらいマイルドな効きであれば、効かせた方が安心して速く走れるかもしれない。また、街乗りでは必須の機能なので完全オフとはならない設定はうれしい部分

 この日はテストに専念した走行のみとなったが、それでもコンスタントに1分11秒台をマークできていたし、区間ベストをつなげれば10秒台も見えた。電動オープン機構という重量物を持つため車重が重めのコペンであり、とくにサーキットに特化した作りをしていない状態でこれだけのタイムはかなり速いと思うが、この日はあくまでもシェイクダウン。VSCの介入を抑えたことでセットアップがさらに進むことを考えると……1分9秒台に入る可能性は大いにありうる。

 街乗りも快適にできて販売店で普通にメンテナンスできる軽自動車が本気を出すとサーキットも快速というのはなかなか楽しいクルマと言えるのではないだろうか。そして今後のD-SPORTコペンの成長も楽しみだ。

D-SPORTコペン第2章の挑戦は始まったばかり