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D-SPORTが合法チューンドのコペンで挑むタイムアタック企画が本格始動!
新規パーツも投入したシェイクダウン走行レポート
- 提供:
- D-SPORT
2021年1月13日 00:00
「ダイハツ車の性能を最大限に引き出す」というテーマのもと、各種パーツを開発、販売しているダイハツ車のトータルチューニングブランドのD-SPORT。ダイハツ車販売店での取り扱いと装着が可能ということでダイハツ車オーナーにはおなじみの存在である。
そのD-SPORTはパーツ開発の一環として、2017年にLA400K コペンを使用した筑波サーキットでのタイムアタックを行なっているが、今回は新パーツを投入した新たな仕様でのシェイクダウンを行なうとの情報が入りCar Watchも現場に同行したので、新たなデモカーの情報とシェイクダウン走行の模様をお伝えしたい。
車両の主な仕様に関して紹介しよう。D-SPORTはダイハツ車販売店でも取り扱うチューニングブランドであるため、サーキットが舞台になる取り組みに対しても走らせるクルマは保安基準適合であることが大前提となる。
そのため使用するパーツはD-SPORT製品を中心に(一部試作品も含まれる)、車高も最低地上高の基準を厳守、タイヤも車検対応サイズのストリートラジアルを装着。また、一般ユーザーが普段行なうことのない内装やエアコン、ナビなどを取り外すような軽量化もしない。つまり希望すれば同等の仕様をダイハツ車販売店で製作できるレベルでクルマを作っている。
今回の仕様で最大のポイントになるのがD-SPORTのLA400K/A コペン用「コペン スポーツECU」というチューニングコンピュータを装着しているところだ。
コペンにはVSC(ビーグル・スタビリティ・コントロール)という横滑り抑制用の電子制御が装備されていて安全性や走行安定性が高められているのだが、速度制限がないサーキットでは話がちょっと変わってくる。
サーキットでは一般道では発生しない高いG(重力加速度)が出る速度域で走行したり、タイヤをスライドさせるなど特殊なテクニックを使うのだが、そういった走らせ方をするとVSCは「異常な状態」と判断、車体の挙動を安定させるため出力抑制の制御を行なう。すると状況が落ち着くまではアクセルを踏み込んでも加速しない状態になってしまうのだ。
なお、コペンにはVSCの動作を切り替えるスイッチがダッシュボード部に付いているが、VSCは事故を未然に防ぐための機能なので、スイッチをオフにしても完全な機能オフにならず通常より余裕を持った介入タイミングになる。ただ、それでもサーキット走行やジムカーナなどハードな走行をするとバンバン介入してきてしまう。
こうした状況に対してD-SPORTのスポーツECUはVSCの介入レベルをスポーツ走行に対応するよう適正化。サーキット走行はもちろん、ジムカーナなどコペンでスポーツ走行を楽しみたい人にとって必須のアイテムといえるものだ。
それに加えて燃料マップ、点火時期マップ、ブーストマップの変更により最高出力は約80ps、最大トルクは約11kgm(D-SPORTによる開発値、この数値は保証されるモノではない)となる。さらに電子制御スロットルの動作の適正化やスピードリミッターの設定値変更も行なわれているので、実質的な速さも向上する内容になっている。
そのほかエンジンでは吸気系は試作品へ変更し、排気系にD-SPORT製のフルチタンマフラーを装着する。このマフラーは現在市販されているモノで、特徴はシングルテール化とチタンという軽量素材の採用。これらの効果によってノーマルマフラーより約4kgもの軽量化を実現。排気音に関してもJQRの認証を取得済みの新基準対応品なので、ダイハツ車販売店でメンテナンスをしている車両にも安心して装着できるマフラーになっている。
サスペンションはショーワチューニングの「Evolution-極-」を装着。これはショーワチューニングのコンセプトである「ストリートからワインディングに対応」という領域だけでなく、サーキット走行にも対応するスペックに仕上げてあるハイスペックシリーズだが、車高調整式サスキットのように組み込んでからいろいろな調整をする必要はなく、組み込めば即最適なセットアップを得ることができる作りとなっている。セットされるスプリングはフロントが31N/mm、リアが30N/mmで、車高ダウン量は前後ともに5~10mmダウンとなる。
なお、2017年のときは車高調整式サスキットを使用していたがD-SPORTの松尾氏によると、ユーザーのクルマ作りの参考にしやすくするためノーマル形状ショックでシンプルに進める方向へ方針をシフトしたとのことだった。
仕様変更と新パーツ投入で走りはどう変わった?
今回の走行はスポーツECUを含めた新仕様の状態を見るためのシェイクダウンとなる。ドライブするのは前回のアタックも担当した加藤彰彬氏。レーシングドライバーでもあり、東京都町田市にて「TCR JAPAN」というチューニング、メンテナンスガレージを主宰し、D-SPORTパーツ開発のサポートも行なう人物だ。
新仕様になって初めてのサーキット走行ということで最初の走行は主に全体のチェックにあてていたが、2度目の走行ではペースアップするものの、タイムを出すことよりECU交換に伴うアクセルのツキやパワー感、それにノッキングなどの有無、そしてコーナーではわざと挙動を不安定にすることでVSCの介入状況も確認していた。
冬季の筑波サーキットはタイムアタックに向けた練習走行やセットアップを行なうクルマが多く、スポーツ走行時間はけっこうな台数が同時にコースインしているが、そんな中でもときにはコーナーで普通車以上の速さを見せつつ走行していたD-SPORTのコペン、外から走りを見ている限りでは快調のように見える。
そして走行時間が終了し、パドックへ戻ってきた加藤氏に印象を聞いてみた。最初は運転席側ダッシュボードにあるVSC動作切り替えスイッチを通常の位置(VSCオン)で走行したとのこと。この状態でも一般ユーザーがスポーツ走行を楽しむくらいのペースであればVSCの介入はなく気持ちよく走れるとのことだ。
ただ、そこからさらにペースを上げていくとコーナーによってはVSCが作動することがあったという。そこで運転席にあるVSCをオフ(介入レベル下げる)にしたところ、すべてのコーナーでの介入がなくなり狙いどおりの走りが可能になったという。
ピットでクルマに搭載していたデータロガーに記録された走行データをパソコン上で確認。VSCの介入がない方が明らかに速く、筑波サーキットの第1ヘアピンではVSCが介入したときの走行データと比較すると、コーナー立ち上がりですぐに2車身ほどの差が開き、その後もVSC介入なしの方が速度のノリがいいので差はぐんぐん開く。1周になれば大差となるだろう。
ただ、こうした結果が残ってもVSCが不要というわけではない。一般道を走るときはもちろんのこと、サーキットでも路面ミューが低いコースだったりウエット時は車体の安定性を確保するためにVSCは有効な機能であることは明白。そういったことからD-SPORTのスポーツECUはVSCを完全に効かなくするのではなく、介入した際の制御を適切化(ノーマルより介入しにくくしている)しているので、VSCの介入が必要なときはキチンと効いてくれるのだ。
この日はテストに専念した走行のみとなったが、それでもコンスタントに1分11秒台をマークできていたし、区間ベストをつなげれば10秒台も見えた。電動オープン機構という重量物を持つため車重が重めのコペンであり、とくにサーキットに特化した作りをしていない状態でこれだけのタイムはかなり速いと思うが、この日はあくまでもシェイクダウン。VSCの介入を抑えたことでセットアップがさらに進むことを考えると……1分9秒台に入る可能性は大いにありうる。
街乗りも快適にできて販売店で普通にメンテナンスできる軽自動車が本気を出すとサーキットも快速というのはなかなか楽しいクルマと言えるのではないだろうか。そして今後のD-SPORTコペンの成長も楽しみだ。