季節の変わり目にはオイル交換を
冬だから低粘度オイルに交換してみた

規格がいろいろエンジンオイル

今回オイル交換に使用したカストロールのマグナテック 0W-20の4L缶。オイルで知られるカストロールの中心販売モデル。0W-20は超省燃費タイプということで、缶の表面にその旨うたわれている
 車にはさまざまなオイルが使われている。エンジンに使われているエンジンオイルや、デフギアやミッションなどに使われているギアオイル。AT車であればATF(Automatic Transmission Fluid)が必要であるし、ブレーキにはブレーキフルード(Brake Fluid)が使われているだろう(現在の車のブレーキはディスクブレーキにしろドラムブレーキにしろ、油圧式がほとんど)。

 その中でも一番なじみがあるのが、エンジンオイル。車の心臓部とも言えるエンジンを潤滑し、エンジン内の摩擦の低減やエンジン内で発生する高熱をうまく分散させる役割を担っている。なお、以降断りなくオイルと表記した場合、エンジンオイルのこと指す。

 血液に例えられることの多いこのオイルだが、高熱を発するエンジン内を潤滑しているため、家庭で使っている天ぷら油のように、長期間使っているとどうしても劣化してきてしまう。エンジンにはオイルフィルターが取り付けられていて、エンジン内を潤滑するうちにどうしても発生してしまう不純物を濾してはいるものの、経年劣化や熱による劣化は避けられず、自動車メーカーも定期的なオイル交換を推奨している。

 ただ、オイル交換で悩ましいのはオイルの種類が無数にあり、どれにすればよいか分かりにくいことと、オイルは日々少しずつ劣化していくため、その劣化具合を明らかに体感するのが難しいところだろう。そこで今回は、東京都内でも有数の大型カー用品店「スーパーオートバックスTOKYO BAY東雲」で、エンジンオイルを交換することにし、オイル売り場担当のカーライフアドバイザー肖秋麗(ショウ・シュウレイ)さんに、そのあたりをうかがった。

オイル交換をするために東京都江東区東雲にあるスーパーオートバックスTOKYO BAY東雲へうかがった。1階が作業をするピットコーナー、2階が各種カー用品を販売するコーナーとなる販売コーナー入口に山と積まれるオイル。寒い時期になると低粘度タイプがよく売れていくとのことエンジンオイルに限らずオイルコーナー全般を担当する、カーライフアドバイザーの肖秋麗さん。ほかのスタッフからも頼りにされているようで、取材中に声がかかることが何度もあり、その度にテキパキと答えていた。オイルに関する知識がとても豊富

 肖さんによると、エンジンオイルは3、4カ月に1度くらいの割合で交換したほうがよいとのことで、実際スーパーオートバックスTOKYO BAY東雲に来店するお客さんのほとんどが、そのぐらいの間隔で交換しているとのこと。また、距離を走った場合やはりオイルが劣化してしまうため「6000km~7000kmごとには、オイルを交換したほうがいいです」と言う。3、4カ月経たない場合でも、短期間に距離を重ねた場合は、エンジンのためにも交換したほうがよいそうだ。

 エンジンオイルは、いくつかの品質や粘度に分かれており、交換する際の目安にはなる。品質の目安となるのは、API(American Petroleum Institute:米国石油協会)規格。エンジン浄化性能や耐久性能、耐熱性、耐摩耗性などの観点で年々進化するオイルに対して、SAからSMまで11のグレードに分けられており、2004年に制定されたSMが最高グレード。

 また、エンジンオイルの粘度に関しても、SAE(The Engineering Society For Advancing Mobility Land Sea Air and Space International:米国の技術者協会)規格があり、「0W-20」であるとか「10W-30」などと表記されている。WはWinter(冬)を表し、数値が低ければ低いほど低温でもオイルが固まりにくく柔らかで、高ければ高いほど固く、高温の環境下でもオイルとしての性能を発揮してくれるというもの。一般に低めの数字のオイルを低粘度オイル、高めの数字のオイルを高粘度オイルと呼び、低温の冬場であれば低粘度オイルを、夏場やサーキット走行などエンジンが高温になる環境下では高粘度オイルが向くとされている。肖さんによるとやはり冬は低粘度オイルを購入する人も多いようで「低粘度オイルはエンジンへの粘度による抵抗も小さく、省燃費にもなります」と語ってくれた。

マグナテック 0W-20の側面に書かれている、SAE、APIの表記。ILSAC GF-4であることも分かる。このようにオイル缶の側面にはそのオイルが持つ特性がきちんと書かれている0W-20の“サラサラ”具合。計量カップに注ぐオイルが緩やかな感じだった。ほかの粘度のオイルとの比較もいずれ試してみたいところ

 そのほか、覚えておきたいのがILSAC(International Lubricant Standardization and Approval Committee:国際潤滑油標準化承認委員会)が定めた省燃費型のオイル規格。GF-1から始まり最新のGF-4まであるが、省燃費性が高く、また省燃費性能が持続するエンジンオイルをGF-4として認定している。

 このようにエンジンオイルには、いろいろな規格があり、それに伴い多くの製品が発売されている。オイルメーカーとして知られているカストロールでは、同社のWebサイト上に「車種別エンジンオイル選び」というコンテンツを用意しているので、それを参考にしてオイルの選択をするのもよいだろう。本記事では一般的なコンパクトカーである「ホンダ フィット(初代)」を使い、車種別エンジンオイル選びで「for Street」と表示された、カストロール「マグナテック 0W-20」に交換してみることにした。

エンジンオイルを交換するホンダのフィット初代モデル。ベストセラーコンパクトカーだカストロールのWebサイトにある車種別オイル選び。すべての車種が網羅されている訳ではないが、オイルを選ぶ目安になるだろう。今回はfor Streetと表示されたオイルに交換してみることにした

 マグナテック 0W-20は、API規格でSM、ILSACでGF-4と認定されているエンジンオイルで、SAE規格で0W-20という値は低粘度オイルに分類されるものだ。粘度が低いのでエンジンへの抵抗も小さく省燃費性に優れるとされているのだが、古い車の場合など粘度が低いがためにオイルシールからオイルが漏るなどのトラブルが起こることもあり、最終的にはオーナーズマニュアルを確認の上、お店に相談することで、オイルを決めることをお勧めする。最近の車であればそうしたことは少ないし、このフィットであれば問題はない。

オイル交換履歴を管理してくれるオイル会員ポイントアップカード
 さて、ここからは実際のオイル交換の手順となる。オートバックスの場合、「オートバックスポイントアップカード」という100円ごとに1ポイントが付き、たまったポイントを次回購入時に1ポイント=1円として使える会員カードが用意されている。このオートバックスポイントアップカードには入会無料のポイント会員と、車1台につき入会時初年度年会費1050円(継続年会費525円)のオイル会員があるが、お勧めは有料のオイル会員になること。

 年会費はかかってしまうものの、オイル交換とオイルフィルター交換工賃が無料になる特典付き。その2つの作業の合計工賃が525円+525円=1050円で、初年度年会費と同額のため、オートバックスでオイル交換を行うのなら入会しておいたほうがよいだろう。交換工賃が無料になるメリットは当然あるが、オイル交換の履歴を管理してくれ、自分がいつ、どこで(全国のオートバックスで使用可能)、どんなオイルに交換したのかが分かるのがポイント。交換時期が大切なオイルだけに、きちんと管理されているのはうれしいところだ。

 すでにフィットのオーナーはオートバックスのオイル会員だったために手続きもすぐに終了。前回のオイル交換時にオイルフィルターを交換していなかったので、これも交換。肖さんによると「オイルフィルターは、2回に1回は交換したほうたいいです」とのことなので、ごく一般的なオイルフィルターに交換することにした。

ずらりと並ぶ各車種ごとのオイルフィルター注文タグ。自分の車のタグを選び、オイルと一緒にカウンターに持って行けばよい。分からなかったら、近くにいる店員さんに聞けば適切なものを教えてくれるだろうもちろん今回はフィット用のオイルフィルターを選択

 また、古いオイルを抜き取った後、フラッシングオイルという走行には使えないオイルを使って「エンジンフラッシング」もすることにした。エンジンフラッシングで、古いオイルがエンジン内に残ることが少なく、新しいオイルの性能を発揮できるはず。これはオイル交換ごとにする必要もないのだが、時期が師走ということもあり、新鮮な気持ちで新年を迎えるためにやってみた。

オイルとオイルフィルターが決まったらカウンターへ持って行き精算をする。その際にオイル会員カードを出すのをお忘れなく。左の赤いカードがオイル会員カード。ちなみに右のカードは駐車券交換工賃を考えるとオイル会員になるのがよいだろう。何より、履歴を管理してくれるのが便利会員ではない場合は、申込書に必要事項を記入すれば即時発行してもらえる。申込書の下にある白いカードはポイント会員カード。無料で発行してくれるポイントカードだが、こちらのカードではオイル交換工賃は無料にならない
カウンターの上に掲示してあった各種交換工賃精算が済むとこのようにPHSが手渡される。PHSには番号が付けられており、自分の待ち番号が分かるカウンター上部には液晶モニターがあり、現在の待ち状況が分かる。ほかの人の進行状況も分かるので、待ち時間にあわせて広い店内を見て回るのもよいだろう

オイル交換作業は30分もかからずに終わる
 作業時間が来たら、PHSに呼び出しがありピットのある1階へ。指定されたピット番号に行くと、今回作業を担当してくれるカーライフアドバイザーの野澤裕貴氏が待っていてくれた。

ピット作業をしていただいた、カーライフアドバイザーの野澤裕貴氏
 野澤氏によるとオイル交換の流れは、古いオイルを抜く→フラッシングオイルを入れる→エンジンをかけ5分から10分アイドリング→フラッシングオイルを抜く→オイルフィルターを交換→新しいオイル(マグナテック 0W-20)を入れる、というステップで行われると言う。フラッシングオイルを入れた後エンジンをかけるのは、なるべく古いオイルをエンジン内に残さないためとのこと。

 また、オイル交換には、“上抜き機”と呼んでいる機械を使い、車のエンジンに必ず付いているオイルレベルゲージ穴からオイルを取り出すそうだ。オイルを抜く方法にはこのような“上抜き”と、エンジン下部に必ず付いているドレンボルトを外して下から抜く“下抜き”とがあるが、とくにお客さんからの要望のない場合や、上抜きできないエンジンでない限り上抜き機で交換をするとのこと。「古いエンジンオイルが残ってしまうことがありませんか?」と訪ねてみたら、「オイルレベルゲージ穴はオイルがたまっている一番深い場所まで到達している(そうでないとオイルレベルを計測できない)ため、ほとんどの場合問題ありません。上抜きできないエンジンについては把握しており、そういう場合は下抜きしますし、またお客さんから下抜きの要望があればもちろん対応します」とのこと。

 作業自体は、撮影のために中断しながら行ったものの30分程度で終了。横でいろいろ見ていたのだが、スムーズで静かな作業に終始した。作業の最後には、オイルキャップやオイルフィルターなど取り外したものが確実に締まっているかどうか2人の作業者による“ダブルチェック”を行い確実を期していた。後はお客さんにサインをもらっての終了となった。

まずは作業を行うピットにお客さんの運転で車を入れる作業伝票と作業を行う車が一致しているかなどを確認
1階にあるピットの壁際には、2階と書類やパーツなどをやり取りする運搬システムが設置されていた車の内装が汚れないように保護ビニールをシートやステアリングにかぶせる野澤氏の運転で、フィットの位置を微調整。後でこれはオイルフィルター交換のためだったと分かる
フィットのエンジンルーム。水色の丸で囲った部分がオイルキャップでここからオイルを注ぎ込む。手前の赤丸部分がオイルレベルゲージで、まずこれを引き抜きオイルの量を確認する。その際に注意する必要があるのは、いったん引き抜きウエスなどでゲージをきれいにして再度差し込んでから引き抜いて確認。これは移動直後はオイルの揺れなどにより、正確なオイルレベルが判断できないためオイルレベルを確認中。奥の穴が最低ラインで手前の穴が最高ライン。この間隔にオイルが収まっていれば適正量だ。オイルが少な過ぎるのは論外だが、多過ぎてもエンジンに余分な負荷がかかるため、適正量に収まっているのが望ましい古いオイルを抜く前に、エンジンに付いているオイルキャップを外す。外しておかないとエンジン内が負圧となり、オイルを確実に抜けなくなってしまう
オイルキャップを外すとオイルの注ぎ口が。オイルはこの穴から入れるこれがオイルを上抜きする機械。現場では上抜き機と呼ばれているそうだ上抜き機に取り付けられているホース。これでオイルを吸い上げる
上抜き機のホースをオイルレベルゲージを引き抜いた穴に入れていく。この箇所であればエンジン内のオイルがある一番低い場所にホースが届くと言う。エンジンによっては、上抜きが難しいものもあるので、その際は下抜きに変更真ん中のに見えるビニールホースからどんどんオイルが吸い出されて行く吸い出されたオイルは上抜き機の上部にある円柱状の部分にたまっていく
汚れたオイルがどんどん上抜き機に流れ込んでいく上抜き機にたまった古いエンジンオイル。はっきり言って真っ黒に近いが、もっとひどく汚れている場合も多いとのことだフラッシングオイルタンク(というより外見はロッカー)。この中にフラッシングオイルが蓄えられている
先ほどのフラッシングオイルタンク下部からフラッシングオイルが出てくるので、オイルジョッキにためていくオイルジョッキでフラッシングオイルをエンジンの中に入れていく。オイルジョッキはじょうごの親玉みたいなもの。この後5分から10分エンジンをアイドリング状態のまま保ち、先ほどの上抜き機でフラッシングオイルを取り出すこれがオイルフィルター。オイルフィルターの交換はエンジン下部の作業となるためこの時点で箱から出していた
いよいよ新品オイルのマグナテック 0W-20をオイルジョッキに注ぐ(写真左)。と野澤氏から「普段はこういう風に注いでいないのですが」という声が。普段どおりでとお願いしたら右の写真のようにして注いでくれた。ちょっとした作業上の工夫が、さすがプロマグナテック 0W-20をオイルジョッキに移し替えることができた。量については、古いオイルを上抜きする時に出た廃オイルの量を参考にしているそうだ(最終的にはオイルレベルゲージで確認)。余ったオイルは持ち帰ることもできる
フィットのエンジン下面。ピットの地下にもぐり、地下からオイルフィルターの交換に取りかかる。赤丸で囲ってあるのがオイルフィルターオイルフィルターにフィルターレンチを掛け、ネジと同様な仕組みで取り付けられているフィルターを緩める緩んだオイルフィルターの取り外し行程の最後は手で行う。これはオイルフィルター内に古いオイルが残っているためで、手の感覚を頼りに緩めていく。最後には写真のようにオイルが垂れてきた。手のひらの手前に写るオイルの筋が見えるだろうか
新しいオイルフィルターを取り付ける。最初は手で締めていき、最後はフィルターレンチできっちり締めるオイルフィルターが交換できたら、オイルジョッキでエンジン上部からマグナテック 0W-20をエンジン内に注いでいくピット上部からピットの地下を見たところ。地下からは、オイルの漏れがないかどうか確認している
作業の最後にオイルレベルゲージで、新しく注がれたオイルの量をお客さんと一緒に目視で確認する。新しいオイルがきれいなため分かりにくいが、オイルレベルゲージの先にオイルが乗っている作業項目を伝票に書き込み、お客さんから作業確認のサインをもらって作業終了ピットを出て行くフィット。野澤氏は「ありがとうございました!」という元気な声とともに、お客さんを送った

 なお、エンジンオイル代のほかにかかった費用は、オイルフィルター代1134円、フラッシングオイル代1950円。いずれも交換工賃はオイル会員のため無料となった。

 後日フィットのオーナーにオイル交換後の感触を聞いてみたところ「エンジン始動直後のエンジン音が静かになった感じがする」と言い、オイル交換による変化はあったようだ。とは言え、あまりにハッキリ効果が分かるのは、相当オイルが悪くなっている場合で、そのようになる前に自分の走行パターンや生活にあわせて定期的に交換したほうがよいだろう。筆者自身、以前のオイル交換日を忘れており、「年を越す前にオイル交換はしておこう」と改めて思った取材であった。

 

URL
カストロールジャパン
http://www.castrol.com/jp/
スーパーオートバックスTOKYO BAY東雲
http://www.sa-tokyobay.com/
API
http://www.api.org/
SAE International
http://www.sae.org/servlets/index
オイルの基礎知識(カストロール)
http://www.castrol.com/castrol/genericarticle.do?categoryId=82927803&contentId=6005895
車種別エンジンオイル選び(カストロール)
http://www.castrol.jp/oilselect/

(編集部:谷川 潔)
2008年12月15日