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オリックス自動車の高齢ドライバー見守りサービス「あんしん運転 Ever Drive」説明会

見守りたいドライバーの運転挙動をスマホで家族が共有

2017年2月1日 提供開始

オリックス自動車の見守りサービス「あんしん運転 Ever Drive」。実際にヒヤリハットが発生した場所の表示例

 オリックス自動車は、高齢ドライバーの事故リスク低減を目指す見守りサービス「あんしん運転 Ever Drive」の提供を開始した。

 高齢の両親など、見守りたいドライバーのクルマに専用車載機を搭載し、速度超過や急加速、急減速といった運転の挙動を、スマートフォンなどを通じてリアルタイムで家族が共有できるサービスで、運転履歴から地図上に危険挙動の発生箇所をマッピングできるため、日頃走行するエリア内での危険箇所を認識できるほか、運転挙動や運転時間の推移を日別、月別で比較することで、認知症などによる行動変化にも気づきやすくなるという。

 Ever Driveでは、100km/h以上の速度に達したり、0.24G以上の急加速、マイナス0.27G以上の急ブレーキを危険挙動の発生と見なし、家族などにメールで知らせることができる。さらに、2時間以上の長時間運転や18時以降の夜間運転も高齢者にとっての運転リスクと判断し、通知を行なう。

「0.24G以上の急加速、マイナス0.27G以上の急ブレーキは、同乗者が不快に感じる運転挙動。また、昨今では認知症をもとにした徘徊運転といった可能性が指摘されるなど、長時間運転もリスクと判断するようにした。家族のメールは最大5人まで設定が可能であり、離れた場所に住んでいる家族には1日1回の日次運転情報メールによって、毎日の運転状況を確認できる」(オリックス自動車 リスクコンサルティング部 Ever Driveデスクの中村健太郎課長)という。

急加速をするとメールで通知される
運転履歴や危険挙動が発生した回数などを表示する
クルマに搭載される専用車載機

 毎日運転している親が急に運転しなくなったり、突然長時間の運転をしたりといった状況も確認可能だ。さらに、指定場所到着メールや現在位置確認といったサービスも提供しており、自宅や旅行先のホテルに到着したことを確認したり、帰宅時間が遅い場合には、現在のクルマの位置をリアルタイムで確認できる。また、これらの情報を日別運転記録、月次レポート、ヒヤリハットマップ、行き先履歴といった形で表示。PCやタブレット、スマホを使いながら、家族で運転リスクについて話し合うきっかけづくりができるという。

 そのほか同サービスには、運転者サポートサービスとして、契約時の簡易認知機能チェックテストや、24時間対応の電話による健康相談、運転緊急時の駆けつけサポートも付帯しており、オペレーターとのやりとりを通じて健康相談や認知機能チェックができる。専用車載機の取り付けおよびシステム登録のための初期費用が1万円(税別)。月額利用料金が2980円(税別)。1年契約となっており、それ以降は1カ月ごとの自動更新となる。なお、5月31日までに申し込むと初期費用が無料になるキャンペーンを行なっている。

Ever Driveの概要

高齢者の自動車運転による重大事故が社会問題化

 昨今では高齢者の自動車運転による重大事故が社会問題化しており、3月12日から施行させる改正道路交通法においても、75歳以上の高齢者に対する認知症対策強化が盛り込まれた内容になっている。高齢者とクルマの問題は、日本における重要テーマの1つだ。実際、65歳以上の高齢者では約3400万人に対して免許所有者は約1700万人と、2人に1人となっている。一方で、過去10年間に渡る自動車による死亡事故件数は右肩下がりであるのに対して、75歳以上の高齢運転者の死亡事故はほぼ横ばいで、結果として構成比が増加。しかも、最も過失が高い第1当事者となる割合は75歳以上が圧倒的に多いという結果が出ている。

 今後は団塊の世代が70歳以上となり、高齢ドライバーの増加が加速することなるが、クルマを持つことがステータスと感じていた世代にとっては運転が生きがいであったり、移動手段として欠かせなかったりという状況もあるため、高齢者がクルマを簡単に手放すことができないという実態がある。30代から50代の子世代を対象とした意識調査によると、親が生活するうえでクルマが「必需品」と回答した人は76.3%にのぼるという。

高齢者の死亡事故件数比率は上昇傾向にある
NPO法人 高齢者安全運転支援研究会の岩越和紀理事長
オリックス自動車株式会社 リスクコンサルティング部 Ever Driveデスクの中村健太郎課長

 会見に出席した高齢者安全運転支援研究会の岩越和紀理事長は、「クルマの運転は手続き記憶と呼ばれるもので、認知症であっても自然と運転ができてしまうという傾向がある。徘徊老人が目的なく歩きまわって居場所が分からなくなるように、目的がなく運転を続けるというようなことが増える可能性がある。実際、ガス欠になって止まっていたクルマに認知症の高齢者が乗っていたり、考えられないところを逆走して事故を起こして発見させるといった例がある」と指摘。「クルマによる徘徊はどこも問題視していないが、今後は、行政をまたいだ地域ネットワークで対応をしていく必要がある」と提案する。

 オリックス自動車 リスクコンサルティング部 Ever Driveデスクの中村健太郎課長は、「オリックス自動車として高齢者が安心して運転できる環境づくりができないかという観点から、約1年間に渡って議論を続けてきた結果、今回のサービスを開始することにした。高齢者が自らの運転を把握してコントロールできれば、運転できる期間を引き延ばすことができるという考え方のもとに、それを支援するサービスとして提供することになる」とする。

法人向けテレマティクスサービス「e-テレマ」のノウハウを活用

オリックス自動車株式会社 リスクコンサルティング部の竹村成史部長

 オリックス自動車では、2006年から法人向けテレマティクスサービス「e-テレマ」を提供しており、今回のサービスはこのノウハウを活用したものだ。

 法人向けのe-テレマでは、法人が所有するクルマに専用車載機を搭載。通信回線を利用して車両運行データを管理者に送信する。管理者は速度超過や急加速、急減速が発生したことをリアルタイムで確認でき、「帰社後に運転していた社員に運転状況の確認作業を行ない、日常から運転行動を意識させることで運転の改善につなげるといった効果が生まれている」(オリックス自動車 リスクコンサルティング部の竹村成史部長)という。

 さらに、収集したデータをオリックス自動車が分析し、コンサルティングを通じてリスクマネージメントをサポートすることで、ヒヤリハットや不安全な運転行動の未然防止につなげている。

 e-テレマは2016年9月末時点で2000社、13万7000台に採用されており、導入した企業では、事故の因子とされる危険挙動が1年後には約65%削減。2年後には約80%削減されたという結果が出ている。同時に、事故件数が減少するとともに支払い保険金の削減といった効果が生まれているほか、安全運転が増えたため、1割以上も平均燃費が改善される効果も生まれているという。「企業が使うクルマの安全を守り続けてきた、豊富な経験とノウハウを生かした個人向け新サービスがEver Drive。e-テレマは会社の上司と部下との関係を活用して運転を見守っていたが、Ever Driveでは家族とのメール機能を活用して、高齢者の運転を見守っていくことになる。高齢ドライバーと家族が一緒になって適正な運転行動を考える機会の創出にもつながる」(竹村氏)とした。

e-テレマの導入状況。2017年3月末には15万台に達する予定だ
e-テレマを導入した企業における成果
e-テレマでは事故件数のほか、支払保険金、平均燃費の改善も図られている

 また、免許取りたての若年層の事故率が高いことにも着目。「若い世代に対してもEver Driveを提案することで、社会人に対するe-テレマ、高齢者に対するEver Driveという3つの層に対してドライバーを支援していきたい」(オリックス自動車 リスクコンサルティング部 Ever Driveデスクの中村健太郎課長)と述べた。

収集したデータをもとにした共同研究も行なっていく

 オリックス自動車では高齢者安全運転支援研究会などの関連団体と協力しながら、認知機能の低下に関する予兆発見確度の向上や、高齢ドライバー向けサポートサービスの構築を進めるほか、将来的には、法人向けサービスで蓄積された「運転行動ビッグデータ」も含めて、AIによるデータ解析や大学との共同研究などを行ない、世代やエリアごとのドライバー運転リスク判断技術の開発を進める考えを示した。