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【2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ】大会スポンサーの理由をブリヂストン 執行役員 ブランド戦略担当 鈴木通弘氏に聞く

2017年10月8日~15日(現地時間) 開催

ブリヂストンワールドソーラーチャレンジについて語る、株式会社ブリヂストン 執行役員 ブランド戦略担当 鈴木通弘氏

 10月8日(現地時間)に開幕した「2017 ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ」。オーストラリアを舞台に隔年で開催される世界最大級のソーラーカーレースの大会スポンサーとなっているのがブリヂストンだ。ブリヂストンは2013年の開催から大会スポンサーとなっており、2015年、2017年と継続。大会スポンサーのほか、ソーラーカー用に低燃費(低転がり抵抗)タイヤ「ECOPIA with ologic」を開発し、多くのチームにタイヤ供給も行なっている。

 ブリヂストンはどのような思いで、このワールドソーラーチャレンジをスポンサードしているのだろう。現地でブリヂストン 執行役員 ブランド戦略担当 鈴木通弘氏に話をうかがった。


──ブリヂストンがソーラーカーレースである「ワールドソーラーチャレンジ」をサポートしようと思ったきっかけはどこにありますか?

鈴木氏:世界中からたくさんの学生を中心としたチームがここに集まって、オーストラリア大陸の約3000kmの縦断にチャレンジするという大会の目的、学生たちが自分の力で未来の技術であるソーラーカーを作り上げるということ。これらが我々が貢献したいと思っている、モビリティであり、1人1人の生活であり、環境であり、すべてにわたるイベントであるということです。

 我々はタイヤメーカーとして、将来持続可能な社会におけるモビリティは企業活動の目的でありますし、それに加え1人1人の生活ということでいえば、次世代の若い人たちに学びの場を提供する、ということも非常に重要な点だと思っていますし、未来の子供たちに安心して暮らせる環境を残しいていく。これらすべてにつながっていくイベントだと考えています。

 ブリヂストンもタイヤサプライヤーとして、いくつかのチームにタイヤを供給していますけれども、それ以上にこの大会そのものを支えていくという意味を強く感じています。我々がタイヤをサポートしているチームも、していないチームも、この場に集まって知恵と工夫と技術を結集したソーラーカーを試すというものを、なんとか提供していきたい、多くの人に知っていただきたい、今はそういう思いで大会のタイトルスポンサーを行なっています。

──ブリヂストンは、ワールドソーラーチャレンジのタイトルスポンサーを2013年から行なっていますが、2013年、2015年、2017年と見てきてイベントに変化はありますか?

鈴木氏:大会を初めてサポートした2013年は、私どももそれほどワールドソーラーチャレンジを深く理解しているとは言えませんでした。タイヤについても、2013年は1チーム、工学院さまに提供するのみでした。ソーラーカーのタイヤに求められる性能であるとか、といった部分についても十分な情報収集もできていない状況でした。それが2015年にもう少し多くのチームにタイヤを供給させていただく状況となって、いろいろなチームからの要望を理解して、そしてそれらを今回の大会に活かしてという。そういった意味では、まだラーニングプロセスの途中にあると言えます。今回の大会で学んだことも、次の2019年につなげていきたいと思っています。

鈴木氏が注目する1台、11号車 HS Bochum SolarCar-Team「Thyssenkrupp Blue.Cruiser」。クラシッククーペデザインの4人乗りソーラーカー

──ソーラーカーは、自分で発電してそのままモーターで走行することができるなど“究極のEV”とも言われています。世界的なEVシフトの兆しが見える中で、ワールドソーラーチャレンジも変わってきているのでしょうか?

鈴木氏:EV化のスピードがこれからどういうスピードで、どういう広がりで進んでいくのかは、まだ分からないところはありますが、そちらの方向にいくのは間違いないだろうなと思っています。EV化との関連で言えば、ワールドソーラーチャレンジは30年の歴史があり、この大会で開発された技術が量販EVに使用されたという事例はいくつもあると聞いています。

 8月の東海大学の参戦発表会においても、パナソニックさまが太陽電池のセルを曲面に貼る技術については、ソーラーカーにおいて初めて開発されたもので、それが現行「プリウスPHV」の太陽電池セルに活かされているとの話がありました。ソーラーカーそのものが将来の社会において大きな選択肢の1つになるかどうか分かりませんが、少なくともソーラーカーレースにおいて使われた技術は、太陽光発電以外のものはすべてEVにつながっているはずなので、今後のEV開発の中で大きな影響を与えるのではないかと思っています。

──ブリヂストンは、このワールドソーラーカーチャレンジ用に低転がり抵抗の「ECOPIA with ologic」を多くのチームに供給していますが、そのほかのものを提供することもあるのですか?

鈴木氏:今回の大会では、チームの求めに応じて樹脂ホースを提供しています。チームも限られた予算のなかでやっている部分もありますので、ブリヂストンの持っている製品の中で「よかったら使ってください」というものはあります。

ブリヂストンがチームの要望に応じて供給している低燃費タイヤ「ECOPIA with ologic」

──タイヤに関しては、現地に来てから急に2チーム供給が増えたということも聞きました。これはどのような理由があったのでしょうか? また、供給余力は十分あるのでしょうか?

鈴木氏:チームによってどのくらいタイヤを使うというのは変わりますし、事前にオーストラリアでどの程度テストするかによってもタイヤの必要本数は変わると思います。そのため、余裕をもってオーストラリアにタイヤを運び込んではおりました。タイヤを供給するチームが増えた件についてですが、オーストラリアの1チームが、車重の関係で装着しようと思っていたタイヤでは、タイヤの荷重が足りず車検が通らないということが分かったそうです。当社のタイヤであれば荷重をクリアできるので、「ブリヂストンのタイヤでサポートしていただけないか」という話がありました。いろいろあるのですが、荷重の問題でレースを走れなくとなるというのは、私どもとしても避けたい部分でもありますし、折角タイヤもあるので、契約をさせていただいたという次第です。

──ワールドソーラーチャレンジをサポートして3回目となりますが、EVが注目される昨今、大会の規模は大きくなっていくのでしょうか?

鈴木氏:今回の大会ではエントリーは50チームありました。ここまで(オーストラリアまで)たどり着いたチームは42チームあり、(トラブルなどの関係で)明日の決勝を走れるチームは40チームになるのではと見ています。ただ、元々のエントリーである50というのも(30年の)歴史の中で多いものだと思います。つい先日、ワールドソーラーチャレンジにチャレンジしていたオランダの大学チームの卒業生がライトイヤー(Lightyear)という会社を立ち上げ、量産ソーラーカーを2019年から出荷するという発表を行ないました。

Introducing Lightyear: The electric car that charges itself with sunlight

 このクルマの価格は11万9000ユーロとまだ高いのですが、このようなこともあり、ワールドソーラーチャレンジは注目されていくと思いますし、盛り上げていくことが我々の仕事だと思っています。


ワールドソーラーカーチャレンジに参加するさまざまなソーラーカー。次世代EVの技術要素も盛り込まれている