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トヨタ、日産、ホンダ、三菱自動車が共同で会員制充電サービスを提供する新会社設立へ

CHAdeMO協議会第4回総会より。同協議会の法人化も検討

東京ビッグサイトで開催されたCHAdeMO協議会第4回総会
2014年5月20日開催

CHAdeMO協議会の志賀俊之会長(日産自動車 副会長)

 CHAdeMO(チャデモ)協議会は5月20日、東京・お台場の東京ビッグサイトで「チャデモ協議会第4回総会」を開催した。

 CHAdeMO協議会は、電気自動車(EV)に使用する急速充電器の設置個所拡大と、充電方式の標準化を目的に、2010年3月に設立。CHAdeMOは同協議会が標準規格として提案する急速充電器の商標名となっており、「動く、進むためのチャージ」「de(電気)」に加え、「クルマの充電中にお茶でもいかがですか」の3つの意味を含む。

 総会の冒頭、志賀俊之会長(日産自動車 副会長)が登壇して挨拶を行った。志賀会長は、2013年に経済産業省による次世代自動車充電インフラ整備促進事業が始まったことに加え、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業の自動車メーカー4社が同事業を支援する共同プロジェクト「PHV・PHEV・EV充電インフラ普及支援プロジェクト」を発足させたことに触れ、「充電インフラ普及の環境が大きく進展した」と振り返る。

 海外においてもCHAdeMO対応の急速充電器設置個所が増加し、米国では約600個所に、欧州では1000個所を超えた。志賀会長は、グローバルでの急速充電器の数が4000基を超え、2012年度と比べ倍増したことを説明するとともに、「CHAdeMO協議会としてE-モビリティのグローバル展開の実現を加速させるため、CHAdeMO仕様の急速充電器のさらなる拡張・進化を図るとともに、既設充電器へのサポート体制について検討していき、お客様のニーズに応えていきたい」と今後の抱負についても述べた。

 一方、急速充電器の国際規格としては日本仕様のCHAdeMO、欧米仕様のコンボなどがあり、一時期は独フォルクスワーゲンや米GMなどの欧米メーカーがコンボ方式を採用するとアナウンスしたことなどにより、報道で“コンボ対CHAdeMO”という構図が盛んに取り上げられた。しかし2014年1月にCHAdeMO(充電システム/通信プロトコル/コネクター)がIECの国際標準として認められたことで、「コンボ対CHAdeMOという図式で話題になったが、その関係にも変化が出てきており、CHAdeMOを排除するという動きが消えつつある。コンボとCHAdeMOの両方に対応したマルチタイプの充電器という提案も出てきており、検討が進められている。電気自動車並びに充電器の普及に向け、双方が協力して将来に向けた推進策が検討できるよう努力していきたいと考えている」と語った。

 また、充電インフラの普及や、EVと住宅間で電力を相互供給できるシステム「V2H」(Vehicle to Home)の機能拡張など、次のステップに向けた業界横断的な取り組みが急がれており、「こうした課題に対応していくには現在の任意団体という運営体制では難しい面が出てきている。このため運営体制を見直し、ガバナンスを改善して(CHAdeMO協議会を)法人化したいと考えている。これまで慎重に検討してきたが、環境も整いつつあり、具体化を推進したいと思っている」と、今後の展開についても紹介した。

トヨタ、日産、ホンダ、三菱自動車が共同で会員制充電サービスを提供する新会社設立

 総会当日は日産自動車の今津知也氏、三菱自動車工業の木野耕氏、CHAdeMO欧州事務局のブレッシュ山辺知子さんらによるセミナーを開催。志賀会長も触れた「PHV・PHEV・EV充電インフラ普及支援プロジェクト」については、木野氏がセミナーで紹介を行った。

日産自動車の今津知也氏
三菱自動車工業の木野耕氏
CHAdeMO欧州事務局のブレッシュ山辺知子さん

 日本における電動車両向けの急速充電器の数は1967基(2014年4月22日現在)と、まだ十分とは言えない状況で、さらに複数行われている有料充電サービス(住友商事/日産自動車/NEC/昭和シェル石油が設立したジャパンチャージネットワーク、トヨタ/ホンダ/三菱自動車/中部電力などが設立したチャデモチャージなど)同士の連携が不十分など、電動車両購入のハードルになっている。このハードルを解消するため、政府は2013年に1005億円の充電器設置補助金を用意。この支援を背景にトヨタ、日産、ホンダ、三菱自動車の4社は利便性の高い充電ネットワークサービスの構築を共同で実現していくことを同年7月に発表した。

 そして同年11月に具体的な支援内容を発表。自治体等で策定している補助金活用ビジョンに基づいた公共性を有する充電設備のうち、商業施設や宿泊施設等の「目的地充電スポット」や、高速道路のSA/PA(サービスエリア/パーキングエリア)、一般道路沿いのコンビニエンスストア、ガソリンスタンド等の「経路充電スポット」など、一定の要件を満たす業種・業態の施設内に設置されるものを対象に、普通充電器や急速充電器の設置/維持費用などを支援するという内容になっており、申請は同プロジェクト事務局の専用窓口で受け付けている。

 木野氏は同プロジェクトの活用例を挙げ、NEXCO東日本(東日本高速道路)/NEXCO中日本(中日本高速道路)/NEXCO西日本(西日本高速道路)が200基超の急速充電器を新設すること、ファミリーマートが全国500店舗に急速充電器を設置すること、JTBコーポレートセールスが観光宿泊・レジャー施設に1000基の普通充電器を今後保有していくことなどについて触れるとともに、会員制充電サービスを提供する新会社を設立する予定であることを発表。

 先に述べたとおり、現時点で複数行われている有料充電サービス同士の連携は不十分な状態となっている。そのことから4社が新会社を設立し、他の充電サービスと連携することで、1枚のカードがあればどこでも充電できるサービスの提供を目指すとした。また、さまざまな問い合わせに即座に対応できるコールセンターを設立する予定であるほか、充電完了時にメールを配信して充電完了を知らせるサービスなども予定しているという。

 最後に、「これまで日本の自動車メーカーはお客様の目線できめ細かいサービスをご提供するということで、世界中のユーザーから信頼をいただいてきた。これまでのノウハウを活かし、日本の電動車両ユーザーが安心・快適にクルマをお使いいただける状況になるよう努力していきたい。この取り組みが成功したら、必ず日本の電動車両市場は大きく変わると思う。そのことがやがて世界に広がっていくと信じている」と述べ、解説を締めくくった。

自動車メーカー4社による共同プロジェクトを2013年7月に発表
申請は同プロジェクト事務局の専用窓口で受け付けている。申請期限は2014年9月末まで
支援内容
普通充電器は商業施設、自治体、道の駅、宿泊施設などを中心に、急速充電器はコンビニエンスストア、高速道路を中心に設置数が増加している
普及支援プロジェクトを活用した設置の動き
トヨタ、日産、ホンダ、三菱自動車の自動車メーカー4社が、会員制充電サービスを提供する新会社を設立する予定であることを発表

【訂正】記事初出時、JTBコーポレートサービスとなっていましたが、正しくはJTBコーポレートセールスとなります。CHAdeMO協議会の資料については、訂正事項を確認中です。

(編集部:小林 隆)