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2014 SUPER GT 第6戦「43rd International SUZUKA 1000km」GT300クラス決勝リポート

4時間に渡るバトルを制して60号車 TWS LM corsa BMW Z4が初優勝

2014年8月31日決勝開催

 8月31日、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で2014 AUTOBACS SUPER GT 第6戦「43rd International SUZUKA 1000km」の決勝レースが開催された。GT300クラスは今シーズンから参戦した60号車 TWS LM corsa BMW Z4(飯田章/吉本大樹/佐藤晋也)が、55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志)との4時間に渡る熾烈な争いに競り勝って参戦1年目で優勝を飾った。

優勝した60号車 TWS LM corsa BMW Z4

 シリーズ最長の1000km(173周)で争われる第6戦「43rd International SUZUKA 1000km」は通常のシリーズ戦より獲得ポイントが多い。レース距離が通常の300kmより3倍以上となるので第3ドライバーを起用するチームもある。実際にはGT500クラスで第3ドライバーを起用するチームはなかったが、GT300クラスは24チーム中16チームが第3ドライバーを起用して臨んだ。

 予選トップは55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志)、2位は0号車 MUGEN CR-Z GT(中山友貴/野尻智紀/道上龍)、3位は31号車 OGT Panasonic PRIUS(新田守男/嵯峨宏紀/中山雄一)となり、ハイブリッド勢が上位を独占した。

 スタートで上位3台はポジションをキープ。予選4位の61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(佐々木孝太)はオープニングラップで5位に後退すると、3周目に6位、11周目に7位と徐々にポジションを下げて優勝争いから脱落した。序盤から快走を見せたのは予選6位からスタートした60号車 TWS LM corsa BMW Z4(吉本大樹)。3周目に5位、10周目に4位とポジションを上げて上位争いに加わった。

スタートは55号車、0号車、31号車、3号車、61号車の順
ハイブリッドカー3台がトップグループを形成
5位に後退した61号車の背後に60号車
61号車を抜き、5位に浮上した60号車は3号車に迫る

 トップ3台のハイブリッド争いから最初に脱落したのは31号車 OGT Panasonic PRIUS(新田守男)。5周目あたりからジリジリと差が広がっていった。CR-Z同士の争いでも、0号車 MUGEN CR-Z GT(中山友貴)が10周目あたりから55号車 ARTA CR-Z GT(小林崇志)に差を付けられ、15周目には10秒差とトップ独走の展開となった。

トップグループから31号車が脱落。0号車も徐々に遅れて55号車は独走状態
0号車を大きく引き離した55号車
2位の0号車も31号車を大きく引き離す
3位の31号車の後方に60号車が上がってきた

 最初に首位争いから脱落した31号車 OGT Panasonic PRIUSだったが、その後はペースを維持して3位をキープ。逆に2位の0号車 MUGEN CR-Z GTのペースが落ち始め、20周あたりから2位争いはテール・トゥ・ノーズとなった。この2台の争いに急接近したのが60号車 TWS LM corsa BMW Z4。25周目には2位争いをする3台が2秒以内の差となった。

2位の0号車と3位の31号車が接近。このあとから60号車も2位争いに追い付く

 勢いで優る60号車 TWS LM corsa BMW Z4は、26周目の130Rを驚異的な速度で通過。シケインまでの短いストレートで31号車 OGT Panasonic PRIUSをあっさりオーバーテイクして3位に浮上する。そのまま0号車 MUGEN CR-Z GTもロックオン。右に左にとマシンを振りながら威嚇し、ヘアピンのアウトから仕掛けるもののギヤが入らずに失速。31号車 OGT Panasonic PRIUSに抜き返されて4位にポジションダウンした。

 60号車 TWS LM corsa BMW Z4は一時的な失速からすぐに復活。再び2台の背後に迫った。28周目の130Rの進入で前を行く2台がサイド・バイ・サイドで軽く接触。31号車 OGT Panasonic PRIUSがエスケープに外れたところを逃さずオーバーテイク、さらに2周前と同じく130Rを高速で抜けた速度を生かし、シケイン手前で0号車 MUGEN CR-Z GTを抜いて一気に2位まで浮上した。

 GT500は173周でゴールとなるが、GT300は約160周でゴールとなる。4回のピットインが義務付けなので4ピット5スティントだと1スティントは32周、5ピット6スティントだと27周となる。30周を前後して上位陣のピットインが始まった。29周目に0号車 MUGEN CR-Z GT、30周目に31号車 OGT Panasonic PRIUS、31周目に60号車 TWS LM corsa BMW Z4、32周目に55号車 ARTA CR-Z GTがピットイン。

 トップの55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一)がアウトラップを終えた33周目のタイム差は、60号車 TWS LM corsa BMW Z4(飯田章)が14秒、31号車 OGT Panasonic PRIUS(嵯峨宏紀)が29秒、0号車 MUGEN CR-Z GT(野尻智紀)が31秒となった。

 レーススタートから1時間10分。2位争いから抜け出した60号車 TWS LM corsa BMW Z4と55号車 ARTA CR-Z GTとの4時間にも及ぶマッチレースがここから始まった。

 14秒あった2台の差は8秒ほどに縮まったが、そこからは10周に渡り一進一退。お互いに見えない距離での神経戦が続いたが、48周目からその差が縮まり始める。50周目には7秒、55周目には5秒、60周目には1秒を切ってテール・トゥ・ノーズ。61周目の1コーナーで60号車 TWS LM corsa BMW Z4がアウトから抜き去り、ついにトップに立った。

55号車の背後に60号車
60号車が55号車を抜いてトップに浮上

 攻守を入れ替えた2台が2度目のピットインを迎える。55号車 ARTA CR-Z GTが63周目、60号車 TWS LM corsa BMW Z4が64周目にピットイン。ともにほぼ32周刻みの4ピット5スティント作戦だ。ピットアウト後は60号車 TWS LM corsa BMW Z4(吉本大樹)が8秒ほどリードするが、75周目には4秒、80周目には3秒と55号車 ARTA CR-Z GT(小林崇志)がその差を詰め、85周目には1秒以下の争いとなった。

 テール・トゥ・ノーズの争いにはなったが追い抜くまでにはいたらず、96周目、97周目に2台はそれぞれ3回目のピットイン。ピットアウト後は60号車 TWS LM corsa BMW Z4(飯田章)が55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一)を突き放していき、100周目には11秒、120周目には18秒のリードを築いて最後のピットインを迎えた。

 先にピットインしたのは55号車 ARTA CR-Z GT。127周目にピットインしてロスなくコースに復帰。続く128周目に60号車 TWS LM corsa BMW Z4がピットイン。元々55号車 ARTA CR-Z GTよりピットストップが長めの60号車 TWS LM corsa BMW Z4だったが、最後のピットインは通常より時間を要した。60号車 TWS LM corsa BMW Z4(吉本大樹)がコースに戻ると、55号車 ARTA CR-Z GT(小林崇志)はすでに最終コーナーからストレートへという位置。アウトラップの60号車 TWS LM corsa BMW Z4に55号車 ARTA CR-Z GTがあっという間に追い付き、逆バンクの立ち上がりでトップの座を奪い返す。

S字でアウトラップの60号車に55号車が追い付く。逆バンクの立ち上がりで55号車がトップ奪還

 最後のピットインをセクタータイムで比較すると、ピット進入からセクター1まで55号車 ARTA CR-Z GTが1分54秒、60号車 TWS LM corsa BMW Z4が2分14秒。20秒のマージンをピットロードで失ったことが分かる。残り周回は30周ほど。トップ2台はまたテール・トゥ・ノーズの争いとなった。

 131周目の1コーナーでサイド・バイ・サイドとなるが、ここは55号車 ARTA CR-Z GTがトップを死守。しかし、133周目の1コーナーで60号車 TWS LM corsa BMW Z4がアウトから55号車 ARTA CR-Z GTを抜き去り、トップの座を取り戻した。

131周目に60号車が55号車に並びかけるが、55号車が首位をキープ
133周目に60号車が55号車を抜いてトップに

 2台のトップ争いは3時間半を超えた。トップに立った60号車 TWS LM corsa BMW Z4が137周目にはその差を5秒に広げ、残り20周あまりをこのまま逃げ切るかと思われたが、55号車 ARTA CR-Z GTが最後の力をふりしぼってペースアップ。140周目には3秒、143周目には2秒と差を詰め、残り15周で1秒以下の争いへと持ち込んだ。

60号車を55号車を引き離した
60号車に55号車が迫ってきた

 このまま最終ラップまで2台のバトルが続くと期待されたが、147周目の2コーナーで55号車 ARTA CR-Z GTが突然失速。スロー走行でピットに戻り、4時間、110周を越える2台の争いに決着が付いた。

55号車は2コーナーで突然スローダウン。60号車との差が広がり、周回遅れの61号車にも抜かれた

 55号車 ARTA CR-Z GTの後退で2位にポジションアップしたのは31号車 OGT Panasonic PRIUS(嵯峨宏紀)で、その5秒後方には7号車 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー)。この2台もレース前半から100周以上に渡ってバトルを続けていた。残り10周を切って2台は急接近。残り5周でその差は2秒以内となるが、順位を入れ替えることなくゴールを迎えた。

終盤2位の31号車に3位の7号車が接近した
序盤にトップ争いをした0号車だったが、残り2周で9号車に抜かれて8位に後退

 60号車 TWS LM corsa BMW Z4はチーム初年度で見事に優勝を飾った。飯田章は実に7年ぶりの優勝となった。ちなみに飯田章は、弊誌で「飯田裕子のCar Life Diary」を連載するモータージャーナリスト 飯田裕子さんの弟。2位の31号車 OGT Panasonic PRIUSは今期初表彰台、3位の7号車 Studie BMW Z4は開幕戦以来2度目の表彰台となった。

優勝した60号車 TWS LM corsa BMW Z4(飯田章/吉本大樹/佐藤晋也)
2位の31号車 OGT Panasonic PRIUS(新田守男/嵯峨宏紀/中山雄一)
3位の7号車 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒聖治/アウグスト・ファルフス)

GT300クラスの結果
1位 60号車 TWS LM corsa BMW Z4(飯田章/吉本大樹/佐藤晋也)
2位 31号車 OGT Panasonic PRIUS(新田守男/嵯峨宏紀/中山雄一)
3位 7号車 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒聖治/アウグスト・ファルフス)
4位 10号車 GAINER Rn-SPORTS SLS(植田正幸/山内英輝)
5位 4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4(谷口信輝/片岡龍也)
6位 33号車 PUMA KRH PORSCHE(都筑晶裕/ティム・ベルグマイスター/ヨルグ・ベルグマイスター)
7位 9号車 国立音ノ木坂学院NACポルシェwith DR(白坂卓也/アンドレ・クート/飯田太陽)
8位 0号車 MUGEN CR-Z GT(中山友貴/野尻智紀/道上龍)
9位 61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(佐々木孝太/井口卓人)
10位 11号車 GAINER DIXCEL SLS(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)

 年間ランキングで上位を争う4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4(谷口信輝/片岡龍也)は予選17位から地道な走りで5位。ポイントランキングでトップに返り咲いた。11号車 GAINER DIXCEL SLS(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)は予選18位からスタートして10位でフィニッシュ。ポイントラインキングでトップの座は譲ったものの、4ポイント差の2位となった。

GT300クラス 年間ランキング
1位 4号車 グッドスマイル 初音ミク Z4(谷口信輝/片岡龍也) 56
2位 11号車 GAINER DIXCEL SLS(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム) 54
3位 7号車 Studie BMW Z4(ヨルグ・ミューラー/荒聖治) 43
4位 61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(佐々木孝太/井口卓人) 38
5位 60号車 TWS LM corsa BMW Z4(飯田章/吉本大樹) 36
6位 65号車 LEON SLS(黒澤治樹) 28
7位 31号車 OGT Panasonic PRIUS(新田守男/嵯峨宏紀) 28
8位 55号車 ARTA CR-Z GT(高木真一/小林崇志) 25
9位 86号車 クリスタルクロコ ランボルギーニ GT3(細川慎弥/山西康司) 25
10位 3号車 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ルーカス・オルドネス) 25

 次戦は10月4日~5日にタイのブリーラム ユナイテッド インターナショナル サーキットで開催される。そして、11月15日~16日にツインリンクもてぎで最終戦が開催されるスケジュールだ。

(奥川浩彦)