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【ITS東京2013】一般ユーザーも参加できる「高度運転支援・自動運転デモ」を実施

“ぶつからないクルマ!?”や駐車アシストなどを実車に乗って体験

2013年10月14日~18日開催

 世界のITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)関係者が産官学の分野から一堂に集まる世界会議「ITS世界会議東京2013」が、東京・お台場の東京ビッグサイトを中心に10月14日~18日の日程で開催されている。

 この会議では、グローバルレベルでの交通問題解消についての意見交換、将来に向けた研究開発と実用化などについての議論、各分野からの研究内容発表などが開催内容の中心になるが、今回の開催では一般ユーザーが参加することも重要事項として取り上げられており、メイン会場となる東京ビッグサイトでは通路スペースに面したアトリウムを使い、公開討論や技術展示などを積極的に展開している。

 これに伴い、東京ビッグサイトから少し離れた青海西臨時駐車場を会場に、体験型イベント「高度運転支援・自動運転デモ」が実施されている。残念ながら折からの台風26号接近によって、実施初日となった15日午後と16日は安全のために中止となったが、17日、18日は会場で申し込むことで誰でも無料で参加できるイベントとして行われている。

 ITS世界会議の本会場で議論されている将来的な技術ではなく、すでに市場投入されている手の届く最新技術の体験会となっており、これまでの会議などを経て具体化された技術を体験することで、次世代技術に対しても興味を持ってもらうことが目的となっている。

歩行者衝突回避支援型プリクラッシュセーフティーシステム

 レクサス LSを使ったトヨタ自動車の出展内容は、ミリ波レーダーとステレオカメラを組み合わせた障害物の認識と衝突回避支援。ミリ波レーダーによって障害物との相対距離や移動速度などを緻密にチェックできることに加え、人の目のように立体視を行うステレオカメラで障害物の形状も認識可能。フロントバンパーに近赤外線の投光機を設置しているため、夜間でもカメラによる歩行者などの認識が可能なシステムとなっている。さらに車内側に対しても、ステアリングコラム上に設置するドライバーモニターカメラがドライバーの目線を検出し、正面を見ていない場合や目を閉じている時間が長い場合ではブザー音や警報ブレーキの作動を早めて危機回避をアシストする。

停止車両の死角から車両前方に歩行者が出てきたことを想定したデモンストレーション
逆アングルからの撮影。歩行者に見立てたダミーはかなり速いスピードで車両前方に引き出されてくるが、ブレーキが即座に制動を開始してぶつかることなく停車

パーク・アシスト・パイロット

 ボルボ・カー・ジャパンは、2013年2月発売のV40から導入した「パーク・アシスト・パイロット」を紹介。車両の左前方に設置したセンサーで縦列駐車が可能なスペースを検出し、必要なステアリング操作を自動制御。ドライバーはメーターパネル内のディスプレイに表示される指示に従ってシフト操作とブレーキをかけることで縦列駐車が可能になるという機能となっている。このほかにも同社は、公道を使ってV40に標準装備されているアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)やレーン・ディパーチャー・ウォーニング(LDW)などの先進安全技術をアピールした。

パーク・アシスト・パイロットを利用する場合、歩道側の駐車車両から1m以内の位置でセンターコンソールに設置されたスイッチを押してシステムを起動。メーターパネル内のディスプレイに駐車スペースのスキャンが開始されたことが表示される
パーク・アシスト・パイロットでは自車の約1.2倍のスペースがあれば駐車可能。センサーが通り過ぎながら空きスペースをチェックして、駐車可能な場所があればディスプレイに表示してドライバーに通知する
駐車作業に必要な位置まで前進。ブレーキを踏んでシフトノブをリバースに動かすと、ステアリングが自動的に回転を始める。この場合は左側に回転している
必要に応じてステアリングをV40が自動操作しながら、6速DCTが生み出す擬似的なクリープ力をドライバーがブレーキペダルを踏んで制御して後退
必要な位置まで後退して停車すると、次はDレンジに動かすよう画面表示。シフトレバーを操作すると、すぐにステアリングがノーズを歩道側に寄せるため左に回転
今回は駐車スペースが狭めに設定されていたため、数回の切り返しが必要となった。もちろん、車内での操作はシフトレバーとブレーキだけ。切り返しを重ねるうちに、次にステアリングをどちらに切ればいいか混乱するようなこともない
細かく位置を調整して駐車完了
駐車スペースの確認は左側のフェンダー前方にあるセンサーで行う。距離を確認するためのセンサーだが、スペースを探しながら同時に駐車位置の前方にある車両のリア形状を学習。ここで使われたXC70はフェンダーが丸みを帯びているのでそれを前提にステアリングを操作。これが例えばトラックのような四角い形状だった場合には、それを考慮してぶつからない位置を通過する

踏み間違い衝突防止アシスト

 日産自動車がデモを行ったのは、2012年12月発売のエルグランドに世界初の装備として搭載した踏み間違い衝突防止アシスト。アラウンドビューモニターで使う4台のカメラと超音波ソナーを使い、駐車場の白線を認識して自車が駐車場内にいることを把握。アクセルペダルが大きく踏み込まれた場合でも、アクセル開度の抑制と自動ブレーキの作動で急発進や壁などの障害物にぶつかる危険性を低減させる。

道路上の白線より駐車場で使われている白線は細いので、白線の幅をカメラがチェックして車両が駐車場内にいると認識。この状態ではアクセルペダルを全開まで踏み込んでもクリープ走行と大差ないスピードしかでないので、ドライバーが間違いに気づいて踏み換える時間的余裕ができるという。また、カメラ画像なので柵のような対象でもしっかり認識できる
超音波ソナーが進行方向の障害物を検知し、ぶつかると判断した場合は自動ブレーキを作動させて衝突を回避

自律移動車からの他車の発見と停止

 産業総合研究所(産総研)は、長崎大学、名古屋大学と共同で開発を進めている「自律移動車」のデモンストレーションを実施。この車両はルーフ上に設置したレーザーレーダーを使って周辺の環境を検知。人間が1回運転すると、走った周囲の地図を自動的に作成し、2回目以降は指定された経路を自動的に走行できる。産総研ではこの車両を使い、グーグルがアメリカで行っているような道路環境のデータ化のほか、日本の道路で実際にどのような走行が一般的に行われているかをビッグデータとして観測し、将来的な製品作りなどの指針として役立てたいとのこと。ここでのデモは周囲から見学するだけで、車両に乗り込むことはできないが、車両が歩行者を検知して自動的に停車、再発進する光景などが披露された。

2代目プリウスを使った産総研の自律移動車。ルーフ上の高速回転するレーザーレーダーで車両から80m四方程度の距離を観測して地図を作成。さらに移動する物体を見分けることも可能で、自車の進行方向に障害物が出てくると判断したときは自動的にブレーキを作動させる
会場に設定された周回コースを、人間の運転で1周したときに収集・作成した地図データを使って自動走行。歩行者が出てきた場合、レーザーで計測した歩行者の移動速度から数秒先までの移動位置を予測。自車の進行方向と重なると判断すると停車する
コース脇に置かれたノートパソコンには、無線で自律移動車が計測したデータをリアルタイム表示。車両がどのように周辺環境をチェックし、判断材料として利用しているかが表示されていた

衝突被害軽減ブレーキ

 多くのメーカーが出展していたのが、“ぶつからないクルマ!?”こと衝突被害軽減ブレーキ。ラインアップもLクラスセダンから軽自動車、SUVからコンパクトカーまでと多種多様。それぞれのメーカーごとに目指している安全性能や使っている技術の違い、作動状況などについて比較できる珍しい体験試乗となっていた。

7メーカーの“ぶつからないクルマ!?”が並んで衝突回避性能を披露
「シティブレーキアクティブシステム」を装備するフィット
「スマート・シティ・ブレーキ・サポート」を装備するアテンザワゴン
「プリクラッシュブレーキ」を装備するインプレッサ XV
「衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)」を装備するアウトランダー
デモンストレーション用の障害物を使って性能をアピール
このほか、GMはキャデラック SRXのキャデラック・アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)を公道試乗で紹介。全車速型のACCとなっており、40km/h以下の領域では前方の車両が急ブレーキなどを掛けたときでも自動ブレーキを作動させて衝突防止やダメージ軽減などを図る

(編集部:佐久間 秀)