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「GTC Japan 2014」でNVIDIAの自動車関連事業を統括するダニー・シャピーロ氏にインタビュー

日本の自動車メーカーの採用は「大きな自動車ショーなどで何らかの発表があるのではないだろうか……」

2014年7月16日開催

日本メーカーの採用が発表されるのは大規模な自動車ショーになるだろうとシャピーロ氏

NVIDIA 自動車担当 シニアディレクター ダニー・シャピーロ氏

 半導体メーカーのNVIDIAが7月16日に開催した「GTC Japan 2014」。その基調講演の模様はすでに記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140716_658274.html)でお伝えしたとおりだ。今回のGTC Japan 2014の基調講演には同社で自動車関連事業を統括するダニー・シャピーロ氏が登壇し、自動車関連ソリューションに関する説明を行った。その基調講演後には、報道関係者を集めて質疑応答が行われたので、その様子をお伝えしていく。

──NVIDIAの自動車事業の概要を教えてほしい
シャピーロ氏:NVIDIAはグローバルに8800人の社員がいて、ゲーミング、HPC、仮想化、自動車という主に4つの事業でビジネスを展開している。自動車関連では約300人の社員がこれに従事しており、その多くはソフトウェアエンジニアだ。現在はTegraというSoC(Sytem on Chip)を販売する事業を中心に展開しているが、元々は1999年にQuadro(クアドラ)というGPUをCADやCAMなどのデザイン用途に販売する事業から自動車産業向けのビジネスを開始した。

──顧客はどんな自動車メーカーなのか? 日本メーカーとのビジネスの状況は?
シャピーロ氏:米国ではテスラ・モーターズ、ドイツではアウディに代表されるフォルクスワーゲングループ、BMWなどが顧客となっている。日本メーカーともビジネスを前提とした話を進めており、近い将来には採用いただけると確信している。ただ、詳細はメーカー側から発表があるまで我々からお話することはできない。今後大きな自動車ショーなどで何らかの発表があるのではないだろうか……。

──ADAS(エイダス、次世代ドライバ・アシスト・システム)についてNVIDIAの取り組みを教えてほしい。
シャピーロ氏:すでにアウディが1月にラスベガスで行われたInternational CESで発表しデモを行っている。このシステムはTegra K1を搭載しており、今後生産に入っていくことになるだろう。ただ、現時点では具体的なタイミングを明らかにすることはできない。

──それはVWグループが今後もTegraをADASに利用していくという意味か?
シャピーロ氏:フォルクスワーゲングループの製品計画については何もコメントすることはできない。ただ、アウディは我々の新製品が出る度に採用していただいている。Tegra 3をメータークラスターに、Tegra 4を車載タブレットに、そしてTegra TK1をADASにといった具合にだ。

──NVIDIAの自動車ビジネスの市場規模を教えてほしい。
シャピーロ氏:自動車ビジネスでは非常に数え方が難しく、正しい数え方とは何かということは常にアナリストとも話し合っている。すでに我々の半導体を搭載した自動車は累計で600万台が販売されている。さらに現在契約がすんでいる分として2500万台があると我々は推定しており、それが今後市場に登場することになる。非常に大きな成長を遂げている市場だと我々は考えている。今後さらにADASが導入されたり、車載情報システムだけでなくメータークラスタにもという動きが続けば、さらに大きな市場になるだろう。

──スマートフォンやタブレット向けのSoCに比べると、自動車向けの半導体は価格モデルは違うのか?
シャピーロ氏:自動車向けのSoCは、特別な保証や検査などが必要になるのでコストがかかる。また、ゼロ・ディフェクト(エラー率をできるだけ0に近づけること)を目指さないといけないと言うこともあり、その点でもコンシューマ向けよりもコストがかかるため、価格モデルとは異なっていると考えている。さらに、弊社の自動車向けSoCはソフトウェアもあわせて提供する形になっており、その点でも付加価値が高いと考えている。

──多くの競合メーカーがある中でのNVIDIAの強みは何か?
シャピーロ氏:確かに自動車向けの半導体を提供する企業は少なくない。しかし私が強調したいのはそうした競合他社は単なる半導体メーカーであるのに対して弊社はコンピュータ会社という点だ。我々はハードウェアとソフトウェアをコンビネーションで提供しており、ソフトウェアこそが魔法の種。今回のカンファレンスではそうしたハードウェアのアーキテクチャだけでなく、ソフトウェアのエコシステムを説明している点が重要だと考えている。

──NVIDIAの強みは1つにはCUDA(Compute Unified Device Architecture)だと思うが、NVIDIAのプロプラエタリな技術である。自動車メーカーにそれに対する懸念はないのか?
シャピーロ氏:その心配はないと思う。CUDAはすでにエコシステムができあがっており、新しいプログラミングモデルとして認知されているからだ。開発環境も多くダウンロードされ、800を超える大学で実際に教育にも利用されており、今回のカンファレンスでも高校生がこれを学びに来てくれている。

──顧客にドイツメーカーが多いのはなぜか?
シャピーロ氏:弊社の自動車向けの事業は、最初はあるフランスメーカーとの取引から始まった。このため、主にヨーロッパの拠点が対応しており、それにあわせてヨーロッパのメーカーへの売り込みが進んだ。ヨーロッパのメーカーの動きは非常に速く、リスクを積極的にとって取り組んでいく姿勢を持っている。それが故に大きな成功を収めることができた。

──開発はどのように行われているか?
シャピーロ氏:開発センターを米国のシリコンバレー、ドイツのミュンヘン、日本の東京、韓国、インドなどに設置している。そこにはセールスだけでなく、ソリューションを提供できるエンジニアなども用意しており、自動車メーカーに対して売り込みや提案などを行っている。

 言うまでもないことだが、自動車メーカーに部材を納入する部品メーカーはコンピュータ会社ではない。このため、そうした部材メーカーをきちんとサポートできることが重要だ。

──Open Automotive Aliance(OAA)についてのNVIDIAの取り組みは?
シャピーロ氏:弊社はGoogleとは長年協力関係にあり、OAAに関しても創設メンバーの1社だ。ご存じのとおり、Googleは先日Android Autoを発表しており、スマートフォンを車内で利用する際により安全を確保するためにはよいやり方だと考えている。

──Android Autoは言ってみればリモート操作の仕組みだが、今後OAAではAndroid OS自体を車載情報システムに搭載していく取り組みも行っていくのか?
シャピーロ氏:OAAの取り組みには2つの側面がある。1つはケーブルで接続するAndroid Autoのソリューション。これでは認証されたアプリケーションだけが動く、ただしゲームは不可だ。もう1つはAndroid OSそのものが自動車に入るソリューションだが、現時点では何も発表できることはない。NVIDIAとしてはどちらのソリューションも提供していくことになる。

──AppleはCarPlayを発表しているが、NVIDIAはAndroid Autoとどちらをサポートするのか?
シャピーロ氏:弊社としてはどちらもサポートする。顧客が欲しいモノをサポートするというのが基本姿勢であり、CarPlayが必要な顧客にはCarPlayを、Android Autoが必要な顧客にはAndroid Autoのソリューションを提案していく。いずれにせよ、CarPlayにせよ、Android Autoにせよ、車載情報システム側に搭載されるのはクライアント側になるのでサポートは容易だ。

(笠原一輝)