ニュース

ホンダ、社長交代人事で伊東孝紳氏と八郷隆弘氏が記者会見

“ホンダらしさ”を実現するF1などのレース活動への挑戦は継続

2015年2月23日開催

現社長の伊東孝紳氏(左)と6月から新社長に就任する八郷隆弘氏(右)

 本田技研工業は2月23日、同日発表した社長交代人事に関する記者会見を実施した。人事についてはすでに記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20150223_689596.html)として紹介しているが、2009年6月から代表取締役社長 社長執行役員を務めてきた伊東孝紳氏(61歳)に代わり、6月に開催される定時株主総会終了後の取締役会を経て代表取締役社長 社長執行役員に八郷隆弘氏(55歳)が就任する。

 この会見のようすはUSTREAMで生中継される予定となっていたが、サーバーの不具合により配信が行えなかった。現在はアーカイブ映像を「Honda News Channel」(http://www.ustream.tv/channel/honda-news-channel)で公開している。

 以下に記者会見における伊東孝紳氏、八郷隆弘氏によるスピーチと質疑応答の内容について紹介する。

飛躍する準備は整った。新しいリーダーのもとチャレンジすべきと考え社長を交代

 まずスピーチを行った伊東氏は、同日行われた取締役会での人事内定について語り、自身が2009年6月に前任の福井威夫氏から代表取締役社長 社長執行役員を引き継いだことを紹介。「2008年に起こった世界同時不況からの回復の兆しが見えないなか、すでにホンダのなかで進んでいたさまざまな領域における事業の選択、集中を敢行して、生き残りのために大きく舵を切りました。弊社は6極と呼んでいますが、世界各地6極における開発や開発の強化を推し進め、小型車や環境などに軸足を置き、各地域のお客さまのニーズに合った、喜ばれる商品を生み出すことに全社でベクトルを合わせて邁進してまいりました」「そしてホンダらしさを実現すべく、F1へのチャレンジ、ジェットの初飛行、スポーツカーの復活、ホンダロボティクスの進化、水素社会へのチャレンジを続けてまいりました。この6年のあいだ、自動車産業を取り巻く環境は大きく変化をしましたが、ホンダが目指す方向はこれからも変わることなく、お客さまに喜んでいただける商品をお届けすること、そして、新しい技術に永続的に挑戦し続けていくことだと考えております」と語った。

 また、「2015年に飛躍する準備は整いました。今ここで、新しく若いリーダーのもと、一丸となってチャレンジすべきと考え、八郷に社長を引き継ぐことを決めました。八郷さんには今まで培ってきたさまざまな経験や知見を生かし、各地域の事業をさらに発展させ、世界6極グローバルオペレーションを引っ張っていってもらいたいと考えています」として、社長交代人事の理由を説明した。

 最後に伊東氏は、約6年に渡る就任中の支援について感謝の言葉を述べ、「これからのホンダに引き続きご期待いただき、ご支援を賜りたい」とコメントしている。

2009年6月からホンダ7代目の社長を務めてきた伊東孝紳氏

「レース活動でみなさまの期待にお答えできる結果を出したい」と八郷氏

 続いてスピーチした八郷氏は、「前任の福井さんから社長のバトンを受けとられた伊東さんは、困難を乗り越えてさまざまな領域で大なたを振るい、改革を行われました。2015年は、その成果やチャレンジを続けてきた結果が形になって、みなさまにお届けできる段階になりました。このほど、伊東さんから次の社長をやってほしいとのお話しを受け、大変重責ではありますが、お受けすることにいたしました」とコメント。「私の役割は、ここまで進めてきたこと、すなわち、チャレンジングな商品や技術を生み出すこと、グローバルなオペレーションを世界6極でさらに進化させることだと考えています。新しい価値を提供し、お客さまの夢と喜びに応える、そしてお客さまに優れた魅力的な商品をよりお求めやすい価格で提案することだと考えています。これはホンダが常に得意としてきたところです。これを着実に展開していくため、全力でチャレンジしてまいります」と意気込みを語った。

 また、「世界6極体制のもと、2輪、4輪、汎用事業において、各地域が自主自立をしながら、グローバルで相互補完もできる体制をさらに強化し、環境、安全、テレマティクスなどの新しい技術をとおして、将来につながる盤石な事業運営体制を構築してまいります」と新体制における方向性の道筋を語り、さらに「F1やMotoGPをはじめとするレース活動につきまいても、最先端技術の追求、量産車へのフィードバック、人材育成、そしてみなさまの期待にお答えできる結果を出したいと考えています」と、モータースポーツ活動をさらに推進していく姿勢を見せた。

4月に専務執行役員に昇格し、6月から代表取締役社長 社長執行役員に就任する八郷隆弘氏

 両氏のスピーチに続いて行われた質疑応答では、就任中の約6年で印象的なこと、力を入れてきたことなどについて質問された伊東氏が「いろいろとありましたが、最初の世界同時不況には個人的にかなり鍛えられたなと思っています。記憶に残っているのはやはり震災ですね。震災のときに、弊社のとくに研究開発部門が被災して、現場が痛んでほとんど開発が続けるのが不可能な状況になった。現場にすぐ行きましたが、私も研究所でずっとやってきた人間なので、ひと目見て数カ月間は稼働不可能だと感じました。このときが一番ショックというか、課題のときだったと思います。ちょうどそのとき、設計部隊を鈴鹿製作所や狭山製作所において設計の作業を続けさせたいとかけ声をかけたら、約2週間ほどでやってくれました。このときに、現場の力、現場の頑張りというものを非常に頼もしく思いました。また、このときに彼(八郷氏)が鈴鹿製作所の所長をやっていて快く受け入れてくれ、それが鈴鹿での軽自動車の開発部隊を作るきっかけになっています」と回答した。

 また、次期社長の指名を、いつ、どのような言葉でされたかについて質問された八郷氏は「お話しは、年明けに中国にいるときに伊東さんから電話でいただきました。予想していないことだったので非常にびっくりしましたが、伊東さんから私が今までにホンダで経験してきたことをぜひ生かしてほしいと言われ、大変な重責ですがお受けすることにしました。私は伊東さんからもあったように研究所を経験し、そのあとに購買、鈴鹿製作所と経験して、ホンダで言う“DEB”を経験することができました。また、研究所時代にはアメリカ、直近ではヨーロッパ、中国という地域本部の事業も経験して、少しですが2輪や汎用の事業にも携わってきています。その幅広い経験が私の強みだと思っており、今後のホンダの事業に反映させていきたいと考えております」と語っている。

質疑応答のようす
会見の最後に行われたフォトセッションでガッツポーズを見せる八郷氏

(編集部:佐久間 秀)