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ホンダ、八郷隆弘社長の記者会見で“北米シビック”国内導入を検討中と表明
新型「CR-V」「アコード」は新プラットフォームとダウンサイジングターボ採用
(2016/2/25 00:00)
- 2016年2月24日 開催
本田技研工業は2月24日、東京 南青山にある本社で「2016年2月 社長会見」を実施。本田技研工業 代表取締役社長 社長執行役員の八郷隆弘氏は、具体的な施策から将来に向けた方向性などについて、「4輪事業」「開発体制」「環境問題に対する取り組み」「モータースポーツ」などのテーマに分けて説明。
このなかで八郷氏は、2015年11月に北米市場で販売を開始した新型「シビック」(北米仕様)について、アジアや中国などの市場に導入予定であることに加え、日本市場でも販売するべく検討していること、導入する場合には2年以内を想定していることなどを明かした。
なお、この会見の前半部分となる八郷氏によるスピーチは、インターネット上にある「Ustream」の「Honda News Channel」などでライブ配信が行なわれ、アーカイブ映像を「本田技研工業株式会社 - YouTubeチャンネル」で試聴できる。
「CR-V」「アコード」の次期モデルでも新プラットフォームとダウンサイジングターボを採用
八郷氏は会見冒頭で、2015年7月に行なった自身の社長就任会見で表明した「グローバル6極体制の進化」「Hondaらしいチャレンジングな商品の開発」という2つのテーマに向けて取り組みを進めていると語り、具体的な成果として小型ビジネスジェット機「HondaJet」のデリバリー開始、法人向けのリース販売を行なっている歩行訓練用機器「Honda 歩行アシスト」などを取り上げ、「ホンダは幅広い事業をつうじて、世界中のお客さまの喜びのために、ホンダらしい魅力的な商品を提供し続けたいと考えています」とこれまでの成果について語った。
一方で企業を取り巻く環境が変化していることを受け、抜本的な事業改革が必要であるとの考えから取り組みを開始。ホンダの事業の中核となっている4輪事業では「グローバル6極体制」の方向性を、「地域専用車」と「グローバルモデル」に分けて解説。地域ごとの特性に合ったモデルとして、北米市場の「パイロット」、アジアの「ブリオ」シリーズなど、グローバルモデルとして「シビック」「CR-V」「アコード」などを紹介した。
このなかで2015年11月にフルモデルチェンジしたシビック(北米仕様)は、新型のプラットフォームとダウンサイジングターボのエンジンを採用して優れた走行性能を実現。メディアや購入者から高く評価され、「2016年 北米カー・オブ・ザ・イヤー」も獲得している。このセダンボディの新型シビックについて日本導入を検討しているというのは前出のとおり。また、この商品性の高さをほかのグローバルモデルに受け継いでいくため、次期モデルとなる「CR-V」と「アコード」でも新プラットフォームの採用とエンジンのダウンサイジングターボ化を実施。走行性能の高さとデザイン性に磨きをかけた商品にしていく予定であると明らかにされた。
八郷氏は「地域専用車を引き続きしっかり育てていくとともに、シビック、CR-V、アコードといったグローバルモデルを、さらに魅力的で4輪事業を支えるモデルに刷新してまいります」と意気込みを語った。
モデル開発と組織体制の面では、「ホンダでは地域専用車とグローバルモデルをぞれぞれ進化させてきましたが、開発や生産といった現場では課題も生まれていました」と八郷氏は率直に認め、「身の丈を超えたスピードと規模で各地域のニーズを考慮した商品投入に追われた結果、日本からのサポート業務が増え、生産や研究所の開発といった現場では工数と負荷が増大していました。そして複雑化したプロセスにより、各領域の責任者が不明確になったり、権限委譲ができていないなど、組織としての課題も見えてきました」と分析。社長就任後に4輪事業の現場に足を運んでこういった課題を再確認し、この状況が「ホンダが持つ創造性の原動力を低下させる」と感じたという。
この状況を克服してグローバル6極体制での4輪生産体制を進化させるため、組織変更に着手することを決断。前日の2月23日に発表しているとおり、4月1日付けで役員人事、6月付で取締役人事を行ない組織運営体制の変更を実施して、開発の現場がクルマ造りに集中し、一貫したコンセプトで1台の商品に注力して取り組めるようにすると語られた。
また、魅力ある商品造りに向け、自身を含めた経営陣が率先して意識を変え、社員1人ひとりが仕事の仕方を大きく進化させる「ホンダのクルマ造りの変革」が必要であると語り、このためにホンダの特徴的なクルマ造りとする「SED(セールス・エンジニアリング・ディベロップメント)開発体制」の開発、生産、販売という一貫したフローをさらに進化させて、時代の要請に合ったクルマ造りを目指すとしている。なお、車両生産に関連して、日本市場向けの「フリード」が、2016年中にフルモデルチェンジすることも明らかにされている。
2030年に「電動化技術」で販売台数の3分の2を目指す
4輪事業での取り組みと方向性についての説明に続き、「電動化技術」を中心とした「Hondaらしい新たな価値の創造」というテーマについて八郷氏は解説。地球規模での気象変動に対し、ホンダでは2050年のCO2総排出量を2000年比で半減させるという目標を掲げて取り組んでいる。この実現のため、ダウンサイジングターボエンジンをさらに進化させることに加え、これまで培ってきた電動化技術の本格的な普及を推進していくとして、具体的には「プラグインハイブリッド」の技術を今後の電動化で中心と定めて、「2018年までに北米市場で『新型プラグインハイブリッドモデル』を発売」「主要モデルでのプラグインハイブリッド設定を順次拡大」という計画を進めていくと明らかにした。
また、FCV(燃料電池車)やEVといった「ゼロエミッションビークル」の普及拡大も目指していき、FCVでは日本市場で3月に「クラリティ フューエルセル」を発売。GMと共同開発している「次世代型燃料電池システム」についても順調に開発が進んでおり、2020年ごろの商品化に向けて「生産・購買を含めた次のステージ」に移行させていく予定になっているという。八郷氏は「FCVはまだまだ普及段階にあり、2社で協力して商品化に取り組むことはスケールメリットを生かしたコストダウンが期待できるとともに、普及を加速させるために大きな役割を果たすと考えている」と述べている。
これらにより、2030年をめどに、4輪製品ラインアップにおける販売台数の3分の2を「プラグインハイブリッド」「ハイブリッド」「ゼロエミッションビークル」に置き換えることを目指すとの計画を明らかにした。
スピーチ後に行なわれた八郷氏に対する質疑応答では、2030年時点で電動化技術を採用する車両販売比率の内訳についての質問について「FCVとEVといったゼロエミッションビークルで15%程度、プラグインハイブリッドとハイブリッドで50%以上ぐらいといった比率になれば、CO2削減の目標値にも届くんじゃないかということで、それぐらいの台数で考えています」と回答。また、「2018年までに北米で発売する新型プラグインハイブリッドモデルが具体的にどんなモデルをベースにするかについては、「プラグインハイブリッドについては、今度出るクラリティ フューエルセルとプラットフォームを共有した同じようなクルマと考えています」と答えている。
このほか、組織改革の目的を「開発現場をクルマ造りに集中させたい」と語られた点について、そもそも開発拠点は研究開発に特化したところではないのか、これまでなにが起きていたのかという問いかけに対しては、「もともと研究所では(技術だけでなく)商品を含めて開発するところがありましたが、本社の4輪事業本部にも『事業統括』という商品と事業を統括して見る責任者を置いたことで、少し商品の企画が本社側に強くなってきていた。今回それを研究所に移して現場でできる体制にしました」と表現している。