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ホンダ、八郷隆弘社長の記者会見で“北米シビック”国内導入を検討中と表明

新型「CR-V」「アコード」は新プラットフォームとダウンサイジングターボ採用

2016年2月24日 開催

本田技研工業株式会社 代表取締役社長 社長執行役員 八郷隆弘氏

 本田技研工業は2月24日、東京 南青山にある本社で「2016年2月 社長会見」を実施。本田技研工業 代表取締役社長 社長執行役員の八郷隆弘氏は、具体的な施策から将来に向けた方向性などについて、「4輪事業」「開発体制」「環境問題に対する取り組み」「モータースポーツ」などのテーマに分けて説明。

 このなかで八郷氏は、2015年11月に北米市場で販売を開始した新型「シビック」(北米仕様)について、アジアや中国などの市場に導入予定であることに加え、日本市場でも販売するべく検討していること、導入する場合には2年以内を想定していることなどを明かした。

 なお、この会見の前半部分となる八郷氏によるスピーチは、インターネット上にある「Ustream」の「Honda News Channel」などでライブ配信が行なわれ、アーカイブ映像を「本田技研工業株式会社 - YouTubeチャンネル」で試聴できる。

「CR-V」「アコード」の次期モデルでも新プラットフォームとダウンサイジングターボを採用

 八郷氏は会見冒頭で、2015年7月に行なった自身の社長就任会見で表明した「グローバル6極体制の進化」「Hondaらしいチャレンジングな商品の開発」という2つのテーマに向けて取り組みを進めていると語り、具体的な成果として小型ビジネスジェット機「HondaJet」のデリバリー開始、法人向けのリース販売を行なっている歩行訓練用機器「Honda 歩行アシスト」などを取り上げ、「ホンダは幅広い事業をつうじて、世界中のお客さまの喜びのために、ホンダらしい魅力的な商品を提供し続けたいと考えています」とこれまでの成果について語った。

 一方で企業を取り巻く環境が変化していることを受け、抜本的な事業改革が必要であるとの考えから取り組みを開始。ホンダの事業の中核となっている4輪事業では「グローバル6極体制」の方向性を、「地域専用車」と「グローバルモデル」に分けて解説。地域ごとの特性に合ったモデルとして、北米市場の「パイロット」、アジアの「ブリオ」シリーズなど、グローバルモデルとして「シビック」「CR-V」「アコード」などを紹介した。

 このなかで2015年11月にフルモデルチェンジしたシビック(北米仕様)は、新型のプラットフォームとダウンサイジングターボのエンジンを採用して優れた走行性能を実現。メディアや購入者から高く評価され、「2016年 北米カー・オブ・ザ・イヤー」も獲得している。このセダンボディの新型シビックについて日本導入を検討しているというのは前出のとおり。また、この商品性の高さをほかのグローバルモデルに受け継いでいくため、次期モデルとなる「CR-V」と「アコード」でも新プラットフォームの採用とエンジンのダウンサイジングターボ化を実施。走行性能の高さとデザイン性に磨きをかけた商品にしていく予定であると明らかにされた。

 八郷氏は「地域専用車を引き続きしっかり育てていくとともに、シビック、CR-V、アコードといったグローバルモデルを、さらに魅力的で4輪事業を支えるモデルに刷新してまいります」と意気込みを語った。

「地域専用車」として、日本独自の企画である軽自動車の「N-BOX」もスライドに登場。N-BOXシリーズは2015年の年間軽自動車車名別販売台数のトップとなっている
「グローバルモデル」の一部は、地域によって車名を変えて販売されている
新型「シビック」は直列4気筒DOHC 1.5リッターの直噴ターボエンジン、直列4気筒DOHC 2.0リッターi-VTECの2種類を採用。スポーティなデザイン、広い室内空間、安全運転支援システム「ホンダ センシング」採用なども評価されて「2016年 北米カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した
シビックの成功を受け継ぐべく、モデルチェンジする「CR-V」と「アコード」でも新型プラットフォームとダウンサイジングターボエンジンを採用する

 モデル開発と組織体制の面では、「ホンダでは地域専用車とグローバルモデルをぞれぞれ進化させてきましたが、開発や生産といった現場では課題も生まれていました」と八郷氏は率直に認め、「身の丈を超えたスピードと規模で各地域のニーズを考慮した商品投入に追われた結果、日本からのサポート業務が増え、生産や研究所の開発といった現場では工数と負荷が増大していました。そして複雑化したプロセスにより、各領域の責任者が不明確になったり、権限委譲ができていないなど、組織としての課題も見えてきました」と分析。社長就任後に4輪事業の現場に足を運んでこういった課題を再確認し、この状況が「ホンダが持つ創造性の原動力を低下させる」と感じたという。

 この状況を克服してグローバル6極体制での4輪生産体制を進化させるため、組織変更に着手することを決断。前日の2月23日に発表しているとおり、4月1日付けで役員人事、6月付で取締役人事を行ない組織運営体制の変更を実施して、開発の現場がクルマ造りに集中し、一貫したコンセプトで1台の商品に注力して取り組めるようにすると語られた。

 また、魅力ある商品造りに向け、自身を含めた経営陣が率先して意識を変え、社員1人ひとりが仕事の仕方を大きく進化させる「ホンダのクルマ造りの変革」が必要であると語り、このためにホンダの特徴的なクルマ造りとする「SED(セールス・エンジニアリング・ディベロップメント)開発体制」の開発、生産、販売という一貫したフローをさらに進化させて、時代の要請に合ったクルマ造りを目指すとしている。なお、車両生産に関連して、日本市場向けの「フリード」が、2016年中にフルモデルチェンジすることも明らかにされている。

グローバル6極体制を強化するため、領域ごとに責任者を設置するほか、車両単位で評価する責任者、ホンダ・アキュラ両ブランドのデザインを統括する責任者などをそれぞれに設置。役割分担の明確化によってスピード感のある組織体制を構築する
ホンダ独自の「SED(セールス・エンジニアリング・ディベロップメント)開発体制」をさらに進化
ホンダのDNAである「デザイン」と「走り」を進化させ、これに加えて「電動化技術」を強化していく
体制の整備と開発方法の進化でクルマ自体とブランドの魅力を高めていく
生産体制の取り組みについての解説。グローバル6極体制を生かし、地域別の生産を補完していく
ジュネーブショーでプロトタイプの初公開を控える新型「シビック ハッチバック」は、英国から世界に向けて供給していく予定。現行型モデルはハッチバック専用のプラットフォームを採用しているが、次期型ではセダンやクーペと共通化する
CR-Vはカナダ工場から欧州市場にも輸出する予定だったが、北米でのライトトラック市場拡大を受け、北米向けCR-Vの生産に集中することになった。欧州市場には日本で生産したCR-Vを輸出する
フレキシブルな生産体制を整えられる日本の工場では、欧州向けの「HR-V」(日本名:ヴェゼル)や「Jazz」(日本名:フィット)、北米向けの「フィット」や「アコード ハイブリッド」などを生産して輸出。必要に応じた補完体制を構築する重要な拠点となる。グローバルモデルを中心とした海外向けの生産、日本国内での販売強化により、日本で90万台半ばの生産体制を目指すと表明した
北米市場の代表的な地域専用車。パイロットが好評であることに加え、新型「リッジライン」、次期「CR-V」などのライトトラックといった有力な新製品を投入していく
高いライトトラック需要に応えるため、これまでアラバマ工場に集中させていた大型SUVの生産をオハイオ工場などに拡大。北米市場での収益性向上を目指す
中国市場で主力になると目するSUV2モデルを市場投入する計画。日本市場ではコンパクトミニバン「フリード」をフルモデルチェンジする

2030年に「電動化技術」で販売台数の3分の2を目指す

GMと共同開発している次世代型燃料電池システムを、2020年ごろの商品化に向けて「生産・購買を含めた次のステージ」に移行させる予定と語る八郷氏

 4輪事業での取り組みと方向性についての説明に続き、「電動化技術」を中心とした「Hondaらしい新たな価値の創造」というテーマについて八郷氏は解説。地球規模での気象変動に対し、ホンダでは2050年のCO2総排出量を2000年比で半減させるという目標を掲げて取り組んでいる。この実現のため、ダウンサイジングターボエンジンをさらに進化させることに加え、これまで培ってきた電動化技術の本格的な普及を推進していくとして、具体的には「プラグインハイブリッド」の技術を今後の電動化で中心と定めて、「2018年までに北米市場で『新型プラグインハイブリッドモデル』を発売」「主要モデルでのプラグインハイブリッド設定を順次拡大」という計画を進めていくと明らかにした。

 また、FCV(燃料電池車)やEVといった「ゼロエミッションビークル」の普及拡大も目指していき、FCVでは日本市場で3月に「クラリティ フューエルセル」を発売。GMと共同開発している「次世代型燃料電池システム」についても順調に開発が進んでおり、2020年ごろの商品化に向けて「生産・購買を含めた次のステージ」に移行させていく予定になっているという。八郷氏は「FCVはまだまだ普及段階にあり、2社で協力して商品化に取り組むことはスケールメリットを生かしたコストダウンが期待できるとともに、普及を加速させるために大きな役割を果たすと考えている」と述べている。

 これらにより、2030年をめどに、4輪製品ラインアップにおける販売台数の3分の2を「プラグインハイブリッド」「ハイブリッド」「ゼロエミッションビークル」に置き換えることを目指すとの計画を明らかにした。

「第44回東京モーターショー2015」の会場で2016年3月に766万円でリース販売を開始すると発表した「クラリティ フューエルセル」
GMとの「次世代型燃料電池システム」共同開発も順調に進んでいるとのこと
スマート水素ステーションや外部給電器などとクラリティ フューエルセルを組み合わせ、幅広い水素の利活用を視野に入れている
「プラグインハイブリッド」技術が今後の電動化の中心
2030年をめどに、電動化技術を採用した車両を販売台数の3分の2に高める計画
電動化技術を推進していくことに合わせ、ダウンサイジングターボエンジンもさらに進化させていく
2年後の2018年ごろに「EV-CUB」を量産化。生活に根ざした2輪製品や汎用製品の電動化により、CO2削減を進めていく考え
ホンダのモータースポーツ活動の象徴として2015年から参戦を再開したF1。「今シーズンは昨年学んだことを生かして着実に前進することで、マクラーレンとともに成果につなげていきたい」と八郷氏
スピーチを総括するスライド。グローバルブランドスローガン「The Power of Dreams」を原動力に、ホンダに関わる全員がこの言葉を心に留めながら「チームHonda」の力を最大限に発揮して改革に取り組んでいくと八郷氏はスピーチを結んだ
モータースポーツ活動に関するスピーチ内での取り上げが少なかったことの指摘に対して「F1は昨年が残念な結果になりましたので、結果がしっかり出るまではあまり言うのはやめようかな、と。今期はまず予選10位以内に入って決勝に望むということを、安定的にできるようになることを目的していきたい」と答えた八郷氏

 スピーチ後に行なわれた八郷氏に対する質疑応答では、2030年時点で電動化技術を採用する車両販売比率の内訳についての質問について「FCVとEVといったゼロエミッションビークルで15%程度、プラグインハイブリッドとハイブリッドで50%以上ぐらいといった比率になれば、CO2削減の目標値にも届くんじゃないかということで、それぐらいの台数で考えています」と回答。また、「2018年までに北米で発売する新型プラグインハイブリッドモデルが具体的にどんなモデルをベースにするかについては、「プラグインハイブリッドについては、今度出るクラリティ フューエルセルとプラットフォームを共有した同じようなクルマと考えています」と答えている。

 このほか、組織改革の目的を「開発現場をクルマ造りに集中させたい」と語られた点について、そもそも開発拠点は研究開発に特化したところではないのか、これまでなにが起きていたのかという問いかけに対しては、「もともと研究所では(技術だけでなく)商品を含めて開発するところがありましたが、本社の4輪事業本部にも『事業統括』という商品と事業を統括して見る責任者を置いたことで、少し商品の企画が本社側に強くなってきていた。今回それを研究所に移して現場でできる体制にしました」と表現している。

(編集部:佐久間 秀)