日下部保雄の悠悠閑閑
新型SUVラッシュ
2020年8月3日 00:00
新型コロナウイルス禍の影響で、新型車の発表はすべてオンラインで行なわれているが、自動車業界は前を向いて進んでいる。そして国内外メーカーの発表する新型車はすべてSUVだった。
日産はe-POWERの「キックス」と、来年発売になるBEVの「アリア」で、一気に電動化に向けて走り出した。輸入車ではフォルクスワーゲンの「T-Roc」、アウディの「Q3」、BEVではBMWの「iX3」などがある。
また、いち早く生産を再開したトヨタは「RAV4 PHV」と「ハリアー」、国内販売は決まっていない「カローラ クロス」、そして9月に発売される「ヤリス クロス」と元気がいい。
で、国内メーカーの国内販売を自販連の統計表を見ると、コロナ禍で各社いろいろ障害のあった中で、スタートの早かったコンパクトSUVのトヨタ「ライズ」が1月~6月までの通期で小型車部門5万8492台とトップになった。少し前は「プリウス」や「カローラ」がトップを占めることが多かったが、時代の潮流を表しているようだ。一方でプリウスはかつてほどの元気がなく、ベスト10に入るのがやっとだ。
そして、販売が2月から始まった「フィット」や「ヤリス」も新型コロナウイルス禍で生産が落ちている中、ベスト5以内に顔を出しているのはさすがだ。市場がコンパクトカーに向く傾向は変わらないが、これも6月発売のハリアーが受注で4万5000台を超えているというから、12月までの通算で一気に浮上するのは間違いない。
SUV攻勢をかけている各メーカーだが、まだベスト10に顔を出すモデルは限られているものの、今後増えてくるだろうことは予想がつく。SUVだけ見ると6月単月ではベスト20にライズ、RAV4、ハリアー、ヴェゼルの4車種が上がっている。
一方、輸入車でもSUV比率が年々高くなる傾向が続いており、最近ではコンパクトSUVに人気があるのは日本車と同様だ。輸入車と国産車の価格差が徐々に縮まっているのも輸入車人気が高まっている理由だと思うが、よくご存じのように日本車のDセグを検討すると輸入車のCセグが視野に入ってくる。さらにダウンサイジングの場合は日本車からの買い替えが多いと言われるが、車格のヒエラルキーから逃れられる心境もなんとなく分かる。
というわけで、前回から続く妄想クルマ購入は、これまで一度も車歴の中に入らなかったSUVも選択肢に入ってくる。
SUVに思いが及ばなかったのは、もともとスピードラリーに憧れてこの世界に入ってきたので、アドベンチャーの要素が高いラリーレイド系には苦手意識が強く、結果、一度も参加したことはない。映画「栄光への5000キロ」の世代としては憧れではあるけど、サファリラリーでさえもスタックしてクルマを掘り起こすイメージが強く、「諦めのいいオレには無理」と敬遠していた。きっと何かのチャンスがあって参加していれば夢中になっていたかもしれないが、これがSUVにも縁がなかったことにつながっている理由だ。
しかし今あるほとんどのSUVはご存じのように、初代レクサス RX(ハリアー)が成功して以来、乗用車のプラットフォームを使いながら最低地上高を上げ、悪路走破性を高めたSUVだ。使ってみるとちょっと背の高い乗用車の感覚で、SUVを強く意識することはない。
これらの多彩なSUVが選択肢に入ると、さらに幅が広がる。こんな職業をしていながら選ぶのは難しいものだ。わが家の近未来のクルマは何になるのだろう。またまた在宅の鬱々とした空気の中、ああ、決められない時間が流れる。