日下部保雄の悠悠閑閑
ドルフィン
2023年9月4日 00:00
中国電気自動車大手のBYDがミドルサイズSUVの「ATTO3」に続いて、コンパクトBEV「ドルフィン」を導入する。わずか創業十数年のメーカーとは思えないスピードの速さだ。
ドルフィンは4290mmの全長に1770mmの全幅、そして1550mmの全高とC-HRに近いサイズで日本市場でも使いやすそうだ。バッテリは44.9kWhで航続距離約400kmが標準モデル。160kg重いロングレンジは58.56kWhで約476km走行可能だが、いずれも公式値ではない。普通充電とCHAdeMOの急速充電が可能。FWDでリアサスはトーションビームだが、ロングレンジは重量増に合わせてマルチリンクとなる。
ドルフィンのネーミングにちなんで気の利いたチャームポイントが楽しい。室内はホイールベース2700mmを活かして後席のレッグルームもかなり余裕がある。
コンパクトと言ってもCセグメントで、それなりにサイズ感はあるが憎めないデザインで日本の道にも違和感なく溶け込めそうだ。
ガソリン車から乗り換えると静かで滑らかな加速はBEVらしい。またBEVでイメージされる爆発的な加速力は抑えられており、穏やかで違和感はない。最大トルクは180Nmとおとなしいが十分だ。
一方、ロングレンジはバッテリ容量が大きく、310Nmの大トルクでアクセルを踏み込むとトルクステアを感じるほど。懐かしいな、このハンドルを抑え込む感覚。
BYDはもともとバッテリメーカー。BYDのBEVに搭載されるバッテリは、リン酸鉄リチウムイオンをブレード状に配置した安定性の高さが特徴でブレードバッテリと呼ばれる。また電気の出し入れのノウハウも高く、充電は言うに及ばず使える量も攻めて実走行距離も長い。
ドライブフィールはロールも小さく、安定性もわるくない。路面に吸い付くような味わいは薄いが、日常の足としては、突き上げをうまくいなしてくれる足まわりとBEVらしい静かな車内、それに進化した遮音性で、ストレスなく乗れるところがドルフィンの持ち味だ。
ADAS系の熟成やディスプレイの見せ方など、もう少し頑張ってほしいところもあるものの日本市場でも大きなチャンスがある。価格発表は9月20日。助成金も含めるとかなり期待が持てそうな予感。
BYDと対極にあるメルセデスもEQE SUVの発表に上野社長だけでなく本国のグループ会長、オラ・ケレニウス氏が来日し、メルセデスの事業戦略を自らプレゼンした。
ケレニウス氏曰く、日本はほかの国と同様、BEVの黎明期で今後発展が期待できること、インフラ整備においても急速充電器の充実など日本のBEVユーザーの利便性を高めていくと明言。気が付けばEQシリーズですでに7車種ものラインアップがあり、今後ますます充実させていくという。いずれもメルセデスらしいBEVとしているのが素晴らしい。
これから2030年に向けてBEVは好むと好まざるにかかわらずいろいろなメーカーが車種を増やしていく。その中でもPHEVやHV、そして内燃機と日本には多くを選択肢がある。
ところで恒例の伊東でこの夏最後の花火を見ることができた。遊覧船ではイルカには会えなかったけど心に残る夏休みになりました。