日下部保雄の悠悠閑閑

ドルフィン

BYDの新型車ドルフィン。文字どおりイルカをモチーフにした躍動的なデザインが特徴。デザインは欧州の著名デザイナーでした

 中国電気自動車大手のBYDがミドルサイズSUVの「ATTO3」に続いて、コンパクトBEV「ドルフィン」を導入する。わずか創業十数年のメーカーとは思えないスピードの速さだ。

 ドルフィンは4290mmの全長に1770mmの全幅、そして1550mmの全高とC-HRに近いサイズで日本市場でも使いやすそうだ。バッテリは44.9kWhで航続距離約400kmが標準モデル。160kg重いロングレンジは58.56kWhで約476km走行可能だが、いずれも公式値ではない。普通充電とCHAdeMOの急速充電が可能。FWDでリアサスはトーションビームだが、ロングレンジは重量増に合わせてマルチリンクとなる。

 ドルフィンのネーミングにちなんで気の利いたチャームポイントが楽しい。室内はホイールベース2700mmを活かして後席のレッグルームもかなり余裕がある。

インナードアハンドルはイルカのヒレを思わせるデザインで大きくて握りやすかった
サイドウィンドウに風を当てるデフロスターのアウトレット。波みたい

 コンパクトと言ってもCセグメントで、それなりにサイズ感はあるが憎めないデザインで日本の道にも違和感なく溶け込めそうだ。

 ガソリン車から乗り換えると静かで滑らかな加速はBEVらしい。またBEVでイメージされる爆発的な加速力は抑えられており、穏やかで違和感はない。最大トルクは180Nmとおとなしいが十分だ。

 一方、ロングレンジはバッテリ容量が大きく、310Nmの大トルクでアクセルを踏み込むとトルクステアを感じるほど。懐かしいな、このハンドルを抑え込む感覚。

 BYDはもともとバッテリメーカー。BYDのBEVに搭載されるバッテリは、リン酸鉄リチウムイオンをブレード状に配置した安定性の高さが特徴でブレードバッテリと呼ばれる。また電気の出し入れのノウハウも高く、充電は言うに及ばず使える量も攻めて実走行距離も長い。

 ドライブフィールはロールも小さく、安定性もわるくない。路面に吸い付くような味わいは薄いが、日常の足としては、突き上げをうまくいなしてくれる足まわりとBEVらしい静かな車内、それに進化した遮音性で、ストレスなく乗れるところがドルフィンの持ち味だ。

 ADAS系の熟成やディスプレイの見せ方など、もう少し頑張ってほしいところもあるものの日本市場でも大きなチャンスがある。価格発表は9月20日。助成金も含めるとかなり期待が持てそうな予感。

ダッシュセンターにはダイヤルスイッチがそろっている。右端はシフトスイッチ。表面は指が引っ掛かるようなっていた方が使いやすい

 BYDと対極にあるメルセデスもEQE SUVの発表に上野社長だけでなく本国のグループ会長、オラ・ケレニウス氏が来日し、メルセデスの事業戦略を自らプレゼンした。

メルセデス・ベンツグループの会長、オレ・ケレニウス氏の熱のこもったプレゼン。メルセデスは本気です

 ケレニウス氏曰く、日本はほかの国と同様、BEVの黎明期で今後発展が期待できること、インフラ整備においても急速充電器の充実など日本のBEVユーザーの利便性を高めていくと明言。気が付けばEQシリーズですでに7車種ものラインアップがあり、今後ますます充実させていくという。いずれもメルセデスらしいBEVとしているのが素晴らしい。

 これから2030年に向けてBEVは好むと好まざるにかかわらずいろいろなメーカーが車種を増やしていく。その中でもPHEVやHV、そして内燃機と日本には多くを選択肢がある。

 ところで恒例の伊東でこの夏最後の花火を見ることができた。遊覧船ではイルカには会えなかったけど心に残る夏休みになりました。

伊東の松川。夏の日差しに清流が光ってました。伊東の街もシャッターを閉めているところが多くなった
遊覧船で40分ほどの船旅。イルカは来なかったけどカモメとトンビが餌をもらいたそうにこちらを見ています。カモメはトンビが来るとどこかへ行ってしまいます
伊東の花火。按針祭ほど華やかじゃないけど、20分の花火、家族みんなで楽しみました。無精してホテルの部屋からの見物
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。