日下部保雄の悠悠閑閑

氷上ドライビング

2024iceGUARD7&PROSPEC Winter Driving Parkの参加メンバー。朝一で寒かったけど皆さんうれしそう

 昨年の暑い夏、それに遅い冬の訪れ。今年の女神湖はどうなることかと気をもんだが、年末から寒気がやってきて、解氷したり結氷したりしながら氷が成長して安全なコースを作ってもらえた。

 気温が下がって雪が降るとコースがレイアウトしやすくなるが、降り過ぎるとコース整備が追い付かず、逆に雪で氷を保温して水が出やすくなる。自然の力は強大だ。

 標高1500mある女神湖でも凍結する時期が遅くなり、温暖化の影響を如実に感じる。地球は暑くなっている。

 さて恒例となったiceGUARD7&PROSPEC Parkの当日は晴天で湖もしっかり凍結して絶好のコンディションになった。青空の下での氷上ドライビングは気分がいい。そしてノート オーラ 4WD+iceGUARD7の実力を試すことができた。この日のために購入したようなものだから感慨もひとしお。

今年は岸側は地熱で氷が薄く、桟橋からしか氷に乗れない

 今年の女神湖は氷の凹凸があり、ストレートではクルマが飛び跳ねる。ノート オーラのエンジン出力はそれほど大きくないので鋭い加速というほどではないが無駄なく速度が乗っていく感じだ。タイヤも氷を着実にとらえている。

 速度が乗ったところで待ち構えているのはRが徐々にきつくなる難しいコーナー。雪が乗った路面からブレーキポイントの氷が磨かれたところに4輪が乗ると、突如として摩擦係数が0.05ぐらいまで一気に下がるのでさすがにグリップを失う。それでも雪が残っている部分にタイヤを乗せるとグリップの回復は早い。タイヤ性能も4輪制御も、まして自分の腕も過信せず、冷静に氷上ドライブに挑むのはクールでダイナミック!

 特にiceGUARD7のよいところはアイスバーンと雪道とのグリップの境目で粘ってくれるところだ。グリップが高くコントロールしやすいのが多くのドライバーから信頼されるところだ。

 ノート オーラ 4WDではスタビリティコントロールをONにしておけば、丁寧に姿勢を安定させてくれる。加速でも旋回でもギュ、ギュという感じで制御が入る。邪魔な印象はないが、やはり素の4WDの実力を見たくてOFFにする。

 すると4輪が滑ってもリアモーターとフロントモーターの駆動力が絶妙にバランスし、スライド角がかなり大きくなってもフロントモーターで引っ張って加速しようとする。まるで直結4WDのような動きは滑りやすい路面ほど真価を発揮する。スライド量を見極めるのは多少の経験が必要になるが、おとなしそうなノート オーラ 4WDがスポーツ4WDに変身する瞬間がワクワクする。

 路面はコーナーの深いところほど磨かれているのでブラックアイスには緊張するが、爪先で走るような感覚でソロリと通過するのがコツ。、4WDの中でも軽量なノート オーラ 4WDの強みで身のこなしが軽い。

 円旋回ではセンターに置かれたパイロンを中心にノーズをひっかけるようにしてグルグルと何周でもしていられる。手の内に入り面白い。

4つある円旋回には均等に行けるようスタッフが指示する。イントラが待ち構えて同乗することもあります

 スタビリティコントロールをONにすると円旋回の輪がいびつに広がるものの何周も回れる。やはりノート オーラ 4WD+iceGUARD7は最高だった。

円旋回は中心に置かれたパイロンの回りをいかに小さく回るかでスライドコントロールの訓練に適する

 自分が楽しんでばかりではなく参加者の走行を見るとFRクラスもFFクラスも4WDクラスもそれぞれドライビングは巧みで技術の向上は感心するばかりだ。インストラクターからのアドバイスをすぐに自分のドライビングに置き換える技術も素晴らしい。経験者ほどポケットが多くなっている。

 初めて氷上を経験する参加者もスピンしていたのがインストラクターの同乗でミスをすぐに修正しており感度は高い。

 早朝からタップリと走るプログラムで、今回は横浜ゴムとカヤバラリーチームとの技術交流会も組み込んだが、着目点が異なって興味深いとの意見が聞かれた。KYBからはGRカローラを使った作動油違いによる上下収束違いを用意してもらった。特に摩擦に着目したオイルとその収束は興味深かった。ショックアブソーバーの氷上での性能違いは想像以上で接地力が高いばかりではなく乗り心地も激変した。

カヤバラリーチームのメカニックがショックアブソーバーを交換する。作動油の効果が絶大だった

 さて今年も無事に終了した。年に1度の女神湖の氷上ドライブは氷盤試験路とは違った変化に富んだ面白さがある。来年も楽しみだ。一方で夏のドライビングスクールも、といううれしい声もあり機会があれば久しぶりにチャレンジしてみたい。

ブレーキ、円旋回、ハンドリングと3つあるコースを自分で選んで氷上で腕を磨いて楽しむ
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。