日下部保雄の悠悠閑閑
東京オートサロン
2024年1月15日 00:00
例年の賀詞交歓会、やはりわれわれの場合は東京オートサロン(TAS)で、事前申請しておいたプレスパスを発行してもらい、9時のオープンとともに幕張メッセの広い会場へ。まずはGRから回ることにした。すぐにトヨタやGR、レクサスの広報やエンジニアさんに会い、世間話をしているうちブースの前は黒山の人だかり。モリゾウさんがプレゼンターということもありメディアの数も多く、もはやモニターでしか舞台は見えなくなってしまった。
モリゾウさんのスピーチは相変わらず冴えており、論旨明快で分かりやすい。雇用を守りCO2を削減するために何が必要かを説き、トヨタは全方位戦略を取る、つまりBEVもハイブリッドもPHEVもFCEVも水素燃焼もすべて取り組むことをプレゼンした。
中でもニュースはエンジン開発部を立ち上げて内燃機関を強化するということだった。世界中のエンジン技術者が聞いたら万歳しそうなコメントだった。多くのメーカーがエンジン開発を中止している中でのエンジン開発部だ。
地域によって内燃機はまだまだ必要なことは明白。そして世界に16億台もある自内燃機関の自動車が一気にBEVになるわけもなく、それを取り残してしまうのは大きな問題が起こる。水素の燃焼技術や合成燃料に対応する最適な内燃機関を開発する必要があり、モータースポーツからのフィードバックも応用するためにも量産エンジンの強化は必要だ。
一方でレクサスのBEV化を進め、走れば走るほど空気がきれいになる燃料電池車(FCEV)をMIRAIに続きクラウンにも搭載、驚異的な燃費を誇るお家芸のハイブリッドとPHEVと、体力がなければできない仕事量だがそれを行なう決断力もすごい。
マイチェンで素晴らしく運動性能が高くなったGRヤリスもお披露目となりクルマファンの集まるオートサロンらしいGRブースだった。
この後、人の波はさらに増え、もはやプレスカンファレンスに間に合いそうもなくフラフラと会場を俯瞰することになった。ローダウンするだけでなくアイデアを積み込んだカスタムカーはTASならでの光景だが、今年は内容が充実していたように感じた。
各メーカーの展示はオフロードイメージの車両が多くなっていたのが印象的だ。オフロードと4WDがお家芸の三菱自動車は2月発売のトライトンはもちろん、都市型PHEVだったアウトランダーもオフロード仕様で盛り上がっていた。日産もエクストレイルの車高を上げ、車体もモディファイしたオフロードコンセプトを出展していた。なかなかカッコいい。
日本に再上陸したヒョンデも小スペースながら興味をひかれる展示があった。大のクルマ好き、日本のクルマ文化好きのYoon氏率いるNチームが手掛けたアイオニック5 Nをお披露目したことだ。Nはテストを続けたニュルブルクリンクのNと開発拠点のあるナムヨンのNの頭文字を取ったパフォーマンスモデルで、既報のように速いだけでなく開発チームのクルマ好きが伝わってくる面白いハッチバックだった。BEVをベースとしてその特徴を活かした「面白いクルマ」が作られる時代になったことを感じた。さらにエアロパーツなどアイオニック5 Nをモデファイするキットも発表され、上半期の販売を待つばかりとなった。
BEVは日本ではインフラが追い付いていないのが現状で、特に冬が厳しい北の地域ではなかなか進まない。実は自分自身、パワートレーンは何でもよいと思っているが、現時点で重量、完成度、利便性は内燃機が優れている。しかしBEVをはじめとする各種パワートレーンはそれぞれ利点があり面白い。これからも何にでも対応できる感受性を持っていたいと思っている。そんなことを感じたGRとヒョンデのプレスカンファレンスでした。