日下部保雄の悠悠閑閑

氷上ドライブの季節

DCCSウィンターラリーの小沼でのSS。シャレードでゼッケン1でした。何回も使っている写真ですが気に入っているので再掲載

 恒例の女神湖ドライビングパークは今年は1月17日を予定しており楽しみだ。

 最初に氷上の魅力を知ったのは赤城の小沼で行なわれたDCCSウィンターラリーのSSだと思う。氷上SSはDCCSのボス寺尾さんとスバルの小関さんの話の中で決まったアイデアだと思うが、毎年の赤城詣ではいよいよラリーシーズンの開幕を告げるイベントだった。

 当時はFR車全盛でタイヤもスパイク付きだった。スパイクの本数規制はあったが、形状は緩くてピラミッド型やワインカップ型など年によってさまざまなスパイクが使われていた。今考えるとむしろスパイクを保持するノウハウがわれわれには乏しく、よく抜けてしまった。スパイクが機能するほど抜けてしまうのだから皮肉なものだ。

 それでも氷上は凸凹はあるもののフラットで走りやすく、適度のグリップは最高に気持ちよかった。不利なのは後輪に荷重が乗らないFR車で、いくらスパイク付きといってもデリケートなアクセルワークは必須。一方、まだ少数派だったFFは大きな前輪荷重でスパイク効果が大きく、前で引っ張る意味がよく分かった。

 そんな中、日本で初めてのメーカーにこだわらないプロラリーチーム、PADを率いる元トヨタの山口義則さんは使用車両のTE27のリアを柔らかいバネに変え、トランクには重量物を満載した極端な後ろ下がりの姿勢で氷上に現れたことがあった。

 今考えれば当たり前だが後輪に駆動力がかかり、速い加速に圧倒された。フェイントを使ってリアを振り出しながら走るパワーのあるFRカーならではの豪快な走りを目の前で見せられた。

 そのウィンターラリーもなくなって久しい。小沼も規制が厳しく氷上ドライブができなくなり、今は関東では八千穂レイクと女神湖しか見当たらない。女神湖と八千穂レイクはほぼ同じ高度で、凍結するタイミングもほぼ同じだ。湖としては女神湖が広く、試乗イベントなどが行なわれているが、八千穂レイクもスバルの新井さんが走り回っていると聞く。

 もう20年以上開催している氷上ドラビングパークは女神湖で始まり、女神湖の規定で氷を傷めないようにスタッドレスタイヤに限定している。スパイクタイヤの走り方とは違うが学ぶべきことは大きい。

 氷上の魅力はドライ路面では超高速で起きる出来事が20~30km/hで経験できることだと思う。定常円旋回で姿勢を維持したり、初速度によって全く違う制動距離を体感できたりするのも氷上ならではだ。

 走るだけでも楽しいが、コースに応じてインストラクターが横乗りや運転するなどで自分の運転のチェックができるようにしている。

2015年のiceGuard winter Driving Park
2018年のiceGuard winter Driving Park。いずれも快晴で冬の澄んだ青空が目に染みます

 個人的な興味で氷上のもう1つの魅力は高度になる4WD技術の体験がある。リジット4WDはもっとも駆動力が高く、最初に曲げるテクニックさえ覚えれば非常に面白い。ヨーコントロールによる左右駆動力配分で曲がりやすくなっても、旋回が維持できるかと言えば難しい。メカニズムが高度になるほど基本となるドライビングテクニックは大切だと思う。

 最大の難関は天候。言うまでもなく凍結は自然現象で気温が上がれば凍結しなくなるし、凍っても大雪が降れば雪の下で氷が保温されて緩むこともある。こればかりは女神様に祈るばかりなのです。

2022年の女神湖。レイアウトはほぼ一緒ですが、何度走っても飽きません
日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/2020-2021年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。