まるも亜希子の「寄り道日和」

水素で走る新型「MIRAI」に乗ってみました

新型MIRAIで水素ステーションに行ってみました。わが家もお世話になっている東京ガスが営業しており、天然ガスの充填機も併設しています。営業時間が短いこともあるのか、現在は1日に水素を入れにくる車両は6~7台程度とのこと。もうそんなにいるの? と思ったものの、まだまだ他の民間企業が参入するような状況ではないですね。これからどうなっていくのか、注目です

 水素で走るエコカーというだけでなく、クルマ本来の魅力にこだわった存在価値を追求したという、2代目「MIRAI」。コロナ禍でなかなか試乗する機会がなかったのですが、ようやく4日間ほど一緒に過ごすことができました。

 初対面でまず感じたのは、4ドアクーペと呼ぶにふさわしい流麗さと、どこか気品があって堂々とした存在感を併せ持つエクステリア。全高が1470mmとなかなかに低く、乗り込むときに何度も頭をぶつけてしまいましたが(笑)、座ってしまえば前席も後席もゆったりとしたスペースで、なにより上質なインテリアに心がとろけます。

 ボディサイズも全長が5m弱、全幅が1.8m強と大きめなんですが、視界がスッキリとして広いことと、見たい場所をすぐさま映像で確認でき、障害物を検知して「右前です」などとイラストと共に教えてくれるサポート機能が充実しているので、わが家の周辺の狭い道でもなんとか、一発で路地を曲がり、無事に車庫入れまで完了しました。

 気持ちがいいのは、やっぱり幹線道路や高速道路を悠々と走れることです。高い静粛性とボディ剛性の高さを実感する一体感。乗り心地は後席でも抜群で、首都高ではいつも通っている区間に入って「ここ、舗装をやり直したのかな?」と疑問に感じるくらい、快適性の差がありました。そして往復100kmほどのドライブをしていると、帰り道の渋滞で突然、画面にコーヒーカップのマークとメッセージが表示され、音声でも「この先に大井パーキングエリアがあります。休憩しませんか?」とのお誘いが。画面を見ると、「はい」か「いいえ」で答えを促していたので、「いいえ」と答えると、「失礼しました。最新のニュースがあります。読み上げますか?」とのご提案。そこで今度は「はい」と答えると、経済からスポーツ、エンタメのニュースなどを1つ1つ、短文で読み上げて伝えてくれます。5つくらい聞いて終わりにしましたが、まだまだネタを持っているようなご様子でした(笑)。

 それにしても、帰り道だし渋滞だし、ちょっと疲れと退屈を感じ始めたな~というところに、タイミングを見計ったかのようなこのサービス。感心しちゃいましたね。おかげで頭がリフレッシュして、その後の運転も問題なく続行することができました。以前、新型「センチュリー」で岡山から700km以上を運転して帰ってきた時も同じようなサービスに救われましたが、トヨタはこうしたコネクテッド機能が進んでいるなぁと再確認できました。

運転中、ちょっと疲れたな、退屈だなと感じるタイミングに、音声と画面表示で出てくるのがこの「いたわり案内」というもの。ルート上にパーキングがあると「ちょっと休憩しませんか?」と誘ってくれて、最新のニュースを1つずつ「続けて読み上げますか?」と聞きながら、やはり音声と画面表示で教えてくれます。このほか、トヨタ車に増えているT-Connectでは、もしもの時のヘルプネットをはじめ、オペレーターサービスでいろんな情報やリクエストに応えてくれるのもすごく便利ですね

 さらに、高速道路で120km/hまでのハンズオフが可能となったアドバンスドドライブ。これもガッツリと体験することができました。

 首都高のC1などカーブが多く混み合った区間ではなかなか作動しないのですが、湾岸線など直線が多く周囲のクルマもばらけているような区間だと、スイッチを入れたと同時にハンズオフ可能なサインが出て、すぐに手も足も離して走れるのです。

 愛車の「レヴォーグ」だとハンズオフは50km/hまでなので、速度が70km/h、80km/hと高まるにつれて恐怖を感じるかなと思いきや、そこはぜんぜん大丈夫。常に周囲のクルマの状況を認知していることが、目の前のメーターに表示されてドライバーと共有できるし、設定した速度よりかなり遅いクルマが前を走っていると、「追い越しますか?」というメッセージが出て、「はい」を選ぶと自動的に追い越し車線に移動し、追い抜いていってくれます。この時は、まず追い越し車線側のサイドミラーをしっかりと目視することと、ハンドルに軽く手を添えていることが必要ですが、速度や隣の車線の状況と、ドライバーの顔をちゃんと見ているのだなとわかります。

 ただ、安全第一なので追い越し車線に1台でもクルマが見えると、かなり後ろに離れていても車線移動は開始しません。自分だったらウインカー出して車線変更するだろうな、という感覚よりも、ほぼ2倍くらいの空きスペースがないと作動しないので、そこはせっかちな人だともどかしく感じるかもしれません。ハンズオフ中はRのきついカーブだと、途中で「ハンドルを持ってください」といったメッセージが出てきて、アドバンスドドライブはオフになってしまいますが、それでも使っていると安心感があり、私は十分に便利で頼もしく感じたのでした。

 また、驚いたのはアドバンスドパークです。けっこう大きなボディサイズなので、混み合ったスーパーの駐車場などでは車庫入れするの面倒だな~と思うこともあったのですが、そんな時はシフトレバーの近くにあるスイッチを押し、画面に表示された駐車可能なスペースを確認して、開始ボタンを押すだけで、あとは手も足も離したまま、スイスイと切り返して駐車枠に入れてくれます。こちらは自分だともう一度切り返すようなギリギリのところまで攻める印象で、見事に真っすぐ、狭い駐車枠に停めてくれてブラボーでした。

 さて、最後にせっかくなので水素ステーションで水素を充填してみたのですが、うかがった練馬水素ステーションは営業時間が13時~18時と短く、火曜と水曜が定休日。おまけにスタッフの方に聞いたところ、水素が入荷できない日もあり、なくなり次第営業終了してしまう日もあるんだとか。こりゃなかなか、頻繁にクルマを使う人にとっては不便そうですよね。今回は、航続可能距離が480kmから残り100kmほどになったところで充填し、4.05kgの水素が入りました。お値段は1kgが1210円で、4900円。昨今はガソリン価格が急騰しているので、ちょっとはお得な気もしますが、普段だったら変わらないか、やや高いくらいの感覚かな? という印象でした。

 でも実は、私は15年ほど前にホンダのロゴをベースにした水素カーで撮影に出かけ、山中湖で水素欠をしたことがありまして(笑)。当時はいちばん近い水素ステーションが相模原だということで、そこまでレッカー車で運んでもらったものの、まだ水素を入れにくるお客なんてほとんどいない時代。スタッフさんが慌てて出てきて、今からシステムを起動するので30分くらいかかりますと言われ、システムが整ってから水素充填が完了するまで、さらに30分ほどかかった記憶があります。その時代からしたら、ぽっと行ってすぐに充填が開始でき、ものの5分もかからずに終わるなんて夢のよう。時代は着実に進んでいるんだなぁと実感した次第です。新型MIRAI、ちょっと大きいけど快適で先進的で、魅力的なクルマでした。

水素の充填口が左リアにあり、こんな風にガソリンスタンドと変わらない感じで充填がスタート。リッドの裏には車両の水素タンクが使用できる期限が記されていて、これを過ぎている車両には充填できないんだとか。この期限は定期的な検査を受けて延長できるそうで、こうした安全対策もアップデートされてるんですね
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Zなど。 現在は新型のスバル・レヴォーグとメルセデス・ベンツVクラス。