まるも亜希子の「寄り道日和」
「モバイルパワーパックe:」で動く乗りものの未来を感じてきました
2021年11月4日 00:00
電気自動車のいちばんのネックは、充電に時間がかかること。私たちが、これまでと同じようにクルマを使いたいと考えると、結局はそこにたどり着くのかなと、水素の充填時間がひと昔前の10分の1程度にまで短くなったMIRAIに試乗した時に、ひしひしと感じたものでした。なので余計に、ホンダが発表した「モバイルパワーパックe:」という着脱式可搬バッテリのアイデアにはワクワクしちゃいましたね。
これは、街のいたるところに交換ステーションが設置してあり、バイクや小型のパーソナルカーが立ち寄って、カラになったバッテリと満充電のバッテリをキャッシュレスで交換。ものの1分程度ですぐにまた走り出せるという、素晴らしいシステム。すでに、フィリピンやインドネシア、インドでの実証実験が行なわれ、住民から好評で現在も稼働している地域があるといいます。2022年前半には、インドの人たちが足がわりにしている「リキシャ」向けに、このモバイルパワーパックe:を使ったバッテリシェアリングサービス事業がスタートするというから、これはもう夢でも理想でもなく、現実の話なのだと知ってさらに期待が高まりました。
日本では当初はリースのみとなるようですが、順次、企業などに販売を進めていく考えとのことで、まだ具体的な時期は未定。というのも、せっかくこうしたシステムが実現するならば、ホンダ製品だけでなくほかのメーカーとも相互に使えるようにした方が、より環境負荷を軽減するものになるということで、カワサキ、スズキ、ヤマハとも提携して、将来的に共通バッテリを使っていくことで合意したのだそう。そのためには規格統一などいろんな準備が必要で、まだ実現する時期などが読めないとのことでしたが、1メーカーだけで見切り発車するより、オールジャパンで取り組むべき課題だと認識して、未来の地球のために社会の仕組みを変えていこうというチャレンジ精神、いや、創業者・本田宗一郎さんから伝わるホンダならではの「やらまいか精神」が感じられて、グッときてしまいました。
実際に、モバイルパワーパックe:と交換ステーションの実物も見てきたんですが、持ち手が工夫してあり、10.3kgある重さを少しだけ軽く感じさせる効果があるんだとか。交換ステーションでは、カードをかざすと車両とそこに搭載されていたモバイルパワーパックe:のIDと情報がクラウドに送られて、いろんなデータが蓄積できるというのも面白いところ。実証実験ではそれによって、利用が集中する時間やバッテリの性能の変化などがわかり、課金方法によって集中をコントロールできたり、中古バッテリの性能を管理しやすくなるなど、そこからまた次のサービスが生まれるということでした。
私の素朴な疑問としては、モバイルパワーパックe:はあらかじめ走る距離に必要な数を積んでおくこともできるのかな? ということ。バイクで満充電のモバイルパワーパックe:を積むと、だいたい1回で50kmほど走れるそうなんですが、「今日は100kmくらい走るから、予備であと2個持っていこう」ということができれば、途中で交換ステーションに立ち寄らなくてもいいわけですよね。そう質問すると、それも可能とのこと。例えば、山間部などで作業をするコマツのマイクロパワーショベルなど、働くクルマの場合だと、1回2個のバッテリで2時間くらい作業ができるので、6時間作業をする予定なら交換用の4個をあらかじめ積んで現場に向かう、といったことが可能だということでした。これは便利ですね。
電気自動車が長い充電時間から解放されるならば、いちばんのネックが解決するどころか、新たな活用法も見えてくる。いろんなワクワクを感じさせてくれた、モバイルパワーパックe:でした。