まるも亜希子の「寄り道日和」

冬ならではの思い出作り

山を登っていく道の途中で、うっかりすると見逃してしまいそうな立て札に気づき、発見した「白川氷柱群」の絶景。写真だとなかなかその美しさが伝えにくいですが、思わずため息が漏れてしまう光景でした。「小坂温泉けやきの湯」付近では、2022年2月下旬頃まで夜間にライトアップされるそうです。駐車場に停めて、徒歩で近くまで見に行く人も多いようですが、防寒・滑り止め対策(スノーブーツ等)をしっかりしてほしいと呼びかけています

 冬にしか見られない絶景と言えば、10年ほど前の真冬にカナダで開催された海外試乗会へ出かけ、凍結したナイアガラの滝をヘリコプターから見たのが衝撃的だったのを思い出します。ここ最近は娘が小さかったこともあり、そうこうしているうちにコロナ禍へと突入してしまい、なかなかそうした絶景を見に行く機会に恵まれず……。だったのですが今回、ホンダの現在から未来のAWD技術を体感させてくれる雪上試乗会が開催され、長野県の木曽福島へ。そこで思いがけず貴重な絶景と対面してしまいました。

 東京駅からまず新幹線で名古屋へ移動し、特急「しなの」に乗り換えて1時間30分ほどで木曽福島駅へ到着。無人改札の昔ながらの駅舎には、木曽郡上松町の出身で先ごろ大関へ昇進を果たした、御嶽海関を祝うのぼりが風にはためいていました。写真を撮り忘れましたが、御嶽海関の顔がデザインされたかわいいクッキーやサブレも売っており、相撲好きの叔母へのお土産にゲット。御嶽海関が相撲を始めたきっかけは、小学校1年生の時に木曽町で開かれた相撲大会に出場し、自分より小さな相手に負けたことだったそうですね。それから高校生まで、ずっと木曽で相撲一筋の生活を送っていた御嶽海関も幾度となく通ったであろう改札を出ると、まるで映画のセットのようなお店が並んでいてほっこりしました。

特急「しなの」で降りた木曽福島駅は、昔の日本映画のセットかと思うような、日本人の郷愁を誘う雰囲気でした。御嶽海クッキー&サブレのほかには目立ったお土産も見つからず、今どき珍しいほど素朴。夏に浴衣を着て歩いたら映えそうです

 そしてそこから、試乗会場となる御岳スノーランドまでは約30分ほどのドライブ。最初の10分くらいは、イオンがあったり民家もたくさんあって、ちょっと近代的な街並みを抜けて行くのですが、木曽川を渡って木曽ダムをかすめ、だんだんと山道を登っていくあたりから景色は一変。走りながら、いくつもの発電所が点在する王滝川、西野川の豊かな水量と、切り立った峡谷のコントラストに目を奪われます。もちろんこのあたりからは路面が完全に白くなり、日陰なんかは凍結しているところも。ドライブするには完全な冬道装備が欠かせないですね。

 この景色だけでも「来てよかった~」と思ったのですが、突如として見えてきたのが、「白川氷柱群」という小さな立て札でした。しばしクルマを停めて眺めてみると、切り立った岩壁の一部がまるで氷のカーテン、いやアナ雪の氷の宮殿のようにびっしりと、美しい柱となっているではないですか。その年の寒さにもよりますが、幅は約250m、高さは50mにも及ぶ年もあるとのこと。この日は晴天だったので、太陽の光を浴びて青白く輝く光景といったら、もはや神々しいほど幻想的でした。

 この白川氷柱群は12月くらいから姿を見せ始めて、1月末~2月が最も大きく成長して見応えがあるということで、ちょうどいいタイミング。この木曽周辺で何カ所か見られる場所があり、夜間にライトアップをしているところもあるんだとか。いつかまた、ゆっくりとライトアップをした氷柱群を見に来たいなと思いました。

 さて、肝心の雪上試乗会の方でも、実はなかなか普段は見られない絶景(?)とも言える、貴重なモノを目撃。それが、雪の中をキャンキャンと暴れ回る、S660の姿です(笑)。ジムカーナコースのようなところを、クルクルと走るS660はまるでリアルチョロQのよう。冬でも雪でも、走る楽しさっていろんなモノがあるんだなと、つくづく実感したのでした。

 長い長いと思っていた冬も、あと少し。安全に留意しつつ、冬ならではの思い出を作りたいですね。

冬にしか見られないもう一つの絶景(?)、雪の中を走り回るS660(笑)。ご存じの通りMRなので、ほかのAWD車とはまったく動きがちがい、まさにクルクルとコマのようにコースを回っているのが楽しげでした
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Zなど。 現在は新型のスバル・レヴォーグとメルセデス・ベンツVクラス。