まるも亜希子の「寄り道日和」

十人十色のシートポジションから見るクルマ選び

長年の悩みというか課題だった、「十人十色のシートポジション」にズバッと合わせてくれる「シート位置自動調整」という機能が備わっている新型Cクラス。これがいろんなクルマに装備されるようになるといいなぁと思いました

「女性におすすめのクルマはなんですか?」この質問、今まで数えきれないほど受けてきたのですが、私が一番最初に言う答えは軽自動車の名前でもコンパクトカーの名前でもなく、「その人に最適な運転ポジションがきちんと取れるクルマです」ということ。

 するとほとんどの人が、意味が分からないという表情でポカンとするんです。「運転ポジションが取れないクルマなんてありますか?」と疑問に思う人もいれば、「運転ポジションってそんなに重要なんですか?」と聞いてくる人もいるんですが、特に男性は前者、女性は後者が多い印象です。

 でもCar Watch読者の皆さんはちゃんと知っているとおり(ですよね?)、ボディの大小、価格の高低にかかわらず、運転ポジションが自分に合わないクルマってありますよね~。そして、そういうクルマってなんかしっくりこないというか、いつまでも自分の体の一部になってくれない感じで、違和感ありませんか?

 それがピタリと運転ポジションが合うだけで、どこまで走っても気持ちがいいし、疲れにくいし、運転が楽しいと感じる。そういうクルマこそ、運命のクルマじゃないかなと思っているんです。女性だけでなく老若男女問わず、運転が苦手に感じている人にこそ、運転ポジションの重要性を知って、ちゃんと自分に合うクルマを選んでほしいといつも願っているのです。

 ただ、その「最適な運転ポジション」というものを体感してもらうのって、すごく難しい。一応、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)でドライビング講習会などを行なう際に、「こういう手順でシートやステアリングの位置を調整してくださいね」という基本的なレクチャーはあるのですが、例えば身長のわりに手足が長い人や、ちょっとぽっちゃり体形でおなかが出ている人、私のように異様に座高が高い人(笑)など、規格外の体形だと微妙に合わないなぁと感じることもあり、そこがひとりひとりに教える際の悩みどころでした。

 ところが、先日登場したメルセデス・ベンツの新型「Cクラス」にじっくり試乗する機会があり、いろいろとタッチパネルで機能をいじっていたところ、「シートキネティクス」という項目を発見。さらに「シート位置自動調整」というスイッチがあったので押してみると、驚きました。自分の身長を入力後、「位置調整を開始」をタッチするだけで、シート全体が自動で調整されて、最適な運転ポジションに合わせてくれたのです。

 私の場合は、いつも自分でボタン調整すると、どうしても隙間が空いてしまいがちだった腰の後ろあたりまで、ぴったりフィット。そして、足が短いためにいつもはステアリングが手前にくっつきすぎると感じていたところまで、ちょうどいいあんばいになったではないですか。これはすごいと感動してしまったのでした。

 まぁ、なにぶんまだ高額なクルマの装備なので、なかなかこれが一般的な機能となって普及するまでには、もう少し時間がかかりそうですが、将来的には座っただけで自動に最適な運転ポジションに合わせてくれるようになるかもしれないですね。国産車では、背筋がスッと自然に伸びるような運転ポジションにこだわりをもつマツダあたりが、早く採用してくれないかなと期待しちゃいます。

 今現在、手動および電動調整スイッチが使いやすく、いろいろな体形の人に最適な運転ポジションが取りやすいなと感じるクルマは、コンパクトカーではホンダ「フィット」。極細Aピラー採用による広大な視界とあいまって、気持ちのいい運転席を提供してくれますよね。

フィットの運転席は、広大なパノラマ視界とシート調整のしやすさで、リラックスした運転ポジションが取りやすいなと感じます。コンパクトクラスだと、長身の人は頭が天井についてしまったり、小柄な人は調整範囲が足りずにしっくりこない場合もあるので、ちゃんと確認したいところですよね

 そしてスポーツカーでは、トヨタ「GR86」/スバル「BRZ」。少し寝ている感覚のポジションが好きな人にも、しっかり上の方から周囲を見たい人にも、どちらにも合わせられるのがいいなと感じました。

スポーツカーで「ベストシートポジション賞」をあげたいくらいなのが、トヨタ「GR86」/スバル「BRZ」。圧迫感があまりなく、でも体はしっかりホールドしてくれるという絶妙さがいいなと感じます。これも、気持ちよく走るための基本ですよね

 そんなわけで、もし「運転ポジションってあんまり気にしたことないなぁ」という人がいたら、ぜひ一度しっかり合わせてみてほしいと思います。交差点などで安全確認がしやすくなったり、カーブを曲がるのが怖くなくなったり、疲れにくくなったりと、効果はいろいろ感じられると思います。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Zなど。 現在は新型のスバル・レヴォーグとメルセデス・ベンツVクラス。