NVIDIA「GPU Technology Conference 2018」

【GTC 2018】NVIDIA、VRのクルマを運転すると実車が動く新技術を公開。詳細は不明

「これはテレポーテーションだ」と、ジェンスン・フアン CEO

2018年3月26日~29日(現地時間)開催

San Jose McEnery Convention Center

基調講演の終盤で新技術のデモを行なったNVIDIA ジェンスン・フアン CEO

 自動運転やAI(人工知能)向けの半導体&ソリューションメーカーであるNVIDIAは、3月26日~29日(現地時間、以下同)の4日間にわたり、米国 カリフォルニア州サンノゼ市の「San Jose McEnery Convention Center」において同社製品に関する技術カンファレンス「GPU Technology Conference 2018」(以下、GTC 2018)を開催している。

 27日に行なわれたNVIDIA ジェンスン・フアン CEOの基調講演の終盤に示されたのが、VRのクルマを運転すると実車が動く新技術。最初に1つのシートが示され、そのまわりに同社のVR技術Holodeckで描かれたクルマ(レクサスか?、以下Holodeck車)を投影。Holodeckはデザインなどを検討するためのVR技術で、例えばクルマの場合、実際に車内にいるかのようにして、さまざまな確認が可能になる。

ワイヤフレームで描かれたクルマ、VR映像を投影したもの

 1つのスクリーンには、ワイヤフレームで描かれたクルマのVR投影画面が、そしてもう1つのスクリーンには自動運転車と同様のセンサーを持つフォード「フュージョン」の実写映像を投影。ジェンスン・フアン CEOがデモ担当者に指示をすると、Holodeck車のステアリングが回されたようで、Holodeck車のタイヤが左右に切れる。ここまでは何の不思議もないが、若干遅延を伴って実車のフュージョンのタイヤも左右に切れたのだ。

最初に1つのシートが表示された
シートを取り囲むようにHolodeckのワイヤフレーム映像
このような映像が流され、ステアリングが連動することを示した
3つのレイヤーでデモを行なった

 ここで基調講演に訪れた人は次に何が起こるか予測できたため、どよめきが起きる。ジェンスン・フアン CEOは、それをまっていたかのように解説。Holodeck車、実車、そしてVRゴーグルを装着したスタッフの3つのレイヤーが連動していることを説明した。

 ちなみにHolodeck車のまわりには、実車からのカメラ映像が投影されており、VRゴーグルを装着したスタッフは右を見れば窓越しの右の映像が、左を見れば左の窓越しの映像が見られるため、実車に座っているかのような風景を見ることができている。

 ジェンスン・フアン CEOの紹介の後、VRゴーグルを装着したスタッフが運転開始。無人の実車が動き始めるとともに、Holodeck車のまわりの風景も変化し、実際の風景に合わせて運転をできるようになっていた。後ほど確認したところ、実車とVRゴーグルを装着したスタッフとの通信にはWi-Fiを用いており、遅延などがあるためか走行速度はノロノロとしたもの。それでも、およそ50m走って駐車(米国なので前から)するなど、技術の可能性を見せていた。

Holodeck車と実車の連動デモ

 ジェンスン・フアン CEOは、この技術を人が入ることが難しい災害救助などに使えるのではないかと紹介。日本人的には、そのようなことを言われてしまうと、福島第一原発の廃炉作業が思い浮かんでしまうが、操作の遅延やフィードバックの遅延が限りなく小さくなれば、VRでありながら実車で争うレースゲームなどが成り立つ未来もあるだろう。世界中のどこの人とでもレースをすることができながら、実際にはサーキットで無人のクルマが争っているという未来は、「それが楽しいのか?」と言われれば難しいが、技術的可能性としては興味深いものだ。

 今回のデモでは、通信にWi-Fiを用いていることは後で確認できたが、実際にどのような信号がVRゴーグルを装着したスタッフと実車との間でやり取りされたかは明確にはされなかった。通信量やクルマのコントロールの容易さから考えるとCAN Busを流れているデータをワイヤレスで飛ばしたと思われるが、そういったことも含めて未来への夢が広がるNVIDIAの新技術だった。

編集部:谷川 潔