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【SUPER GTインタビュー】GT500で1勝以上、GT300でチャンピオンを目指すダンロップ

GT500に新加入の松浦選手がチームに新たな風を吹き込む

ダンロップとしてGT500クラスで1チーム、GT300クラスで4チームにタイヤ供給する。住友ゴム工業株式会社 モータースポーツ部長 谷川氏(右)、同 モータースポーツ部 今北氏(左)

 SUPER GTは、現在世界中で行なわれているトップカテゴリーの4輪レースのなかで、複数のタイヤメーカーがタイヤを供給し、コンペティション形式で争うシリーズ戦。GT300では毎年熾烈なチャンピオンタイヤ争いを戦い、GT500においてもNSX-GTにタイヤ供給を行なっているのがダンロップ(住友ゴム工業)だ。

 迎えた5月3日の第2戦富士での予選を終えたところで、ダンロップタイヤをSUPER GTに供給するダンロップに今後どのような展望を持っているか、同社モータースポーツ部の谷川氏と今北氏に話を伺った。

SUPER GT 2017年シリーズ ダンロップタイヤ装着車

GT500クラス

64号車「Epson Modulo NSX-GT」(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮)

Epson Modulo NSX-GT(64号車)
GT300クラス

10号車「GAINER TANAX triple a GT-R」(富田竜一郎/吉田広樹)
11号車「GAINER TANAX AMG GT3」(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)
21号車「Hitotsuyama Audi R8 LMS」(リチャード・ライアン/柳田真孝)
61号車「SUBARU BRZ R&D SPORT」(井口卓人/山内英輝)

GAINER TANAX AMG GT3(11号車)

満足できなかった2016年。それを受けた今年のタイヤ開発は?

住友ゴム工業株式会社 モータースポーツ部長 谷川氏

――最初に2016年シーズンを振り返って、いかがでしたか?

谷川氏:まずGT500の方は、2016年は満足できるシーズンではなかったと思います。2015年の後半、予選では上位にいけるようになって、それを受けて2016年は決勝レースで結果を残せるようにと進めてきたつもりではあったんですが、グリップと決勝での耐久性を含めた性能安定性の改善が思ったように進まなかった。結果は15位ということで、満足できるシーズンではありませんでした。

 GT300の方は、残念ながらチャンピオンにはなれませんでしたが、アウディとスバルが1勝ずつ、最終的には21号車のアウディがチャンピオンシップ3位と、それなりに成果が出たのではないかと思います。

――GT500はNSX-GTがハイブリッドからコンベンショナルなシステムに変わりました。そこも影響はありますか?

谷川氏:そのあたりの影響もありますが、それは大きな理由ではなくて、我々自身にも課題があったかなと。我々としてはクルマに差があるのは仕方ないので、同じクルマのなかでいかに上位に行けるか、というところでやっていますが、それにしても満足のいく結果にできなかった、というのが正直なところです。

住友ゴム工業株式会社 今北氏

――2017年のタイヤ開発の方向性はどのようなものでしょうか?

今北氏:GT500は、ある程度低荷重域でもグリップを出せるように、というような考えでいました。元々グリップがちょっと足りていないところがあったので、グリップを向上させる取り組み自体はあまり変わらないです。低荷重は意識していますが、例えば今回の富士は去年と一緒のダウンフォースなので、構造は大きくは変えていません。

 GT300は、だいたいどの車種も主にリアのトラクションが足りていないとのコメントが多かったので、そこに注目しています。大きく方向性を変えることはせずに、全車に同じような仕様を使っていただいて、温度レンジの違いで複数のタイヤを用意して、そのなかで合ったものを使ってもらう、というような対応にしています。

――第1戦の岡山を終えて、今シーズンの状況はいかがですか。また、第2戦はどのようなタイヤを持ち込んたのでしょうか。

谷川氏:第1戦はいろいろなことがあって、クルマも含めてパッケージ全体としては残念な結果に終わってしまいました。でも、それなりに課題も見えてきて、我々としてもまだやらなければいけないことが当然出てきました。そのあたりに焦点を絞って、新加入のドライバーである松浦さんのご意見も聞きながら、挽回できるよう進めています。

 この第2戦、GT300もGT500も1番大きく違うのは温度ですよね。富士の温度域に合わせたタイヤに変えています。

松浦選手が加わった影響とは

2017年シーズンに64号車「Epson Modulo NSX-GT」をドライブする松浦孝亮選手

――その新たに加わった松浦選手ですが、タイヤ開発において何かよい影響はありますか?

谷川氏:ありますね。タイヤのよくないところがはっきりし出したかなと思います。2016年まで3年間、ドライバー、クルマ、エンジニアを含めて同じ体制でやっているので、ある意味普通じゃないことも「そんなもんかな」と思っていたところがあったのです。

 しかし、松浦選手が来られていろいろ話をすると、その辺はやっぱり直さなければならないところなんだなと改めて分かりました。そういう意味ではいい刺激があって、よくなってきていると思います。

――GT500は1台、GT300は4台と少数精鋭と言えると思います。多数のチームに提供しているライバルとは違った戦略も取れるのではないでしょうか。

谷川氏:GT500で1台というのは、やはり開発の上ではしんどいところもあります。走行機会も限られていますから、データ面では1台だと厳しい。何台に供給できるのか、というところも含めて実力なので、仕方ないところではありますが。

 チームに対しては、ある程度タイヤの選び方などのリコメンドもするんですけども、細かい話ができるのがクルマの数が少ないことのメリットとも言えるかなと思います。

――今後のレースで注目してほしいところなどありましたら。

今北氏:最近は(タイヤかすを拾ってタイヤ性能が落ちる)ピックアップの問題や、決勝中のラップタイムの安定性、といった話がよく出ます。ピックアップの問題はずっと引きずっていまして、いかにそこを対応できるか。

 また、予選でタイムが出なくても、決勝で安定しているクルマが前に来るので、そのあたりを各社どのような戦略でくるのか。予選で前に行きたいけれど、そうすると決勝が不安だ、という葛藤はどこのチームもあると思いますので。

 ちなみにGT300は、GT500ほどピックアップの問題が大きく影響していません。問題はあるにはあるのですが、台数が多いのでQ1で落ちてしまうと決勝レースが苦しくなってしまうので、ある程度予選中心の作戦になりますね。

――最後に、今シーズンの目標を教えてください。

谷川氏:目標としては、GT300は色々な車種があってBoP(車種ごとの性能調整)もありますので、タイヤだけの実力ではないことになっちゃうんですけど、チャンピオンを獲りたいと思いますね。

今北氏:GT500は1勝以上。まずは1勝して、それに満足せず常に上位争いできるようにして勝ちたいですね。GT300は車種ごとのなかでは1番上にいってほしいし、それができる可能性のあるチームばかりだと思うので、そこは期待しています。