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【SUPER GTインタビュー】ダンロップの活動について住友ゴム工業 モータースポーツ部 谷川氏と今北氏に聞く

鈴鹿1000kmレースで64号車が優勝した要因は、路面温度の違いにアジャストできたこと

64号車 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮組)に装着されるダンロップタイヤ

 2017年のSUPER GTのレースで最も心揺り動かされたシーンと言えば、SUPER GTとしては最後の鈴鹿1000kmレースでの優勝ドライバー会見であることに異論の余地はないと思われる。2017年の8月に行なわれた鈴鹿1000kmレースでは、ダンロップタイヤを履いたナカジマレーシング(NAKAJIMA RACING)の64号車 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮組)が、実に10年ぶりに優勝し、ドライバーの松浦孝亮選手が記者会見で涙を見せたことは多くの関係者の感動を呼んだ(別記事参照)。

 その64号車の足下を支え続けてきたのが、ダンロップおよびファルケンのブランドでタイヤを製造・販売している住友ゴム工業。そのダンロップのSUPER GTの活動について、住友ゴム工業 モータースポーツ部長 谷川氏、同 モータースポーツ部 今北氏に話を伺ってきた。

住友ゴム工業株式会社 モータースポーツ部長 谷川氏(左)、同 モータースポーツ部 今北氏(右)

2018年SUPER GT ダンロップタイヤ装着車両

64号車 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮組)
GT500クラス

64号車 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮組)

GT300クラス

11号車 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)
21号車 Hitotsuyama Audi R8 LMS(リチャード・ライアン/富田竜一郎/篠原拓朗組)
61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)

11号車 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)

 2018年のダンロップのSUPER GT参戦体制は、GT500クラスに関しては2017年と同様に64号車 Epson Modulo NSX-GTの1台体制。2017年以来、NSX-GTのミッドシップハンデの見直し、そしてホンダの開発が進んだことなどを受けてNSX-GTは急速にパフォーマンスを上げており、優勝戦線にも絡んで来ている。ホンダ勢5台の中の1台となる64号車 Epson Modulo NSX-GTにとっては、ダンロップタイヤをNSX-GTに合わせ込むことが重要になる。

 GT300クラスに関しては2017年までの4台体制から1台減って、3台となる(2017年まではGAINERチームの2台両方に供給していたが、2018年から1台になったため)。しかし、11号車、21号車、61号車のどの車両も優勝を望める強豪チームであり、2015年にGAINERチームとともに獲得したGT300クラスのチャンピオンの奪還を目指す年となる。

鈴鹿1000kmレースで勝てた要因は、長いレースの後半にアジャストすることができたから

――2017年シーズンのSUPER GTを振り返ってどうでしたでしょうか?

谷川氏:やはりSUPER GTとしては最後の鈴鹿1000kmレースで10年ぶりに優勝できたことが何よりも印象深い年でした。レースで勝つためには、タイヤではグリップとか安定性とかはもちろん必要ですが、鈴鹿1000kmは長いレースですので、タイヤだけでなく、チームのメンテナンス、ピット作業、ドライバーも含め全てミスせず機能することが大事なのですが、全員でそれができたレースでした。

――あのレースで勝てた要因はなんだったのでしょうか?

今北氏:よく見ていくと、通常の300kmレースで終わっていたら優勝は厳しかったと思います。鍵になったのは後半のスティントで、気温も含めてうちのタイヤに合っていたということです。元々うちのタイヤは特性としてああいうコースに合っていて、路面温度の違いに上手くアジャストすることができた、それが要因だと考えています。そしてもう1つは、あのレースでは松浦孝亮選手が非常に頑張ってくれました。彼が(予選の)Q2で4位に入ってくれたことが実は大きかった。仮に10番手のスタートだったらああいう展開はなかっただろうと考えられますので。

谷川氏:鈴鹿のレースは、我々が2017年から課題としてやってきたことがかなり解決できたレースでした。菅生から投入したものですが、他の条件も揃った鈴鹿で結果が出た、ということになります。

――2018年シーズンへ向けての開発の方向性は?

谷川氏:2017年の結果を振り返って分析し、それに基づいて2018年の課題を設定しています。確かに2017年は鈴鹿では調子がよかったのは事実ですが、寒い時期に他のコースで行なわれたレースはいま一歩でした。そこを集中的に開発を進めています。

GT300クラスはどのチームも勝つことができるだけの能力を持っている

第2戦富士を走行する64号車 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮組)

――2018年シーズンの開幕戦となった岡山の結果はどう評価されていますか?

今北氏:開幕戦は順位こそあまりよくなかったのは事実ですが、予選ではGT500クラスの差が小さい中で13位でした。残念なことに予選の順位があまりよくなくて序盤が苦しくなってしまいましたが、安定するようになってからはトップグループともあまり変わらないようなタイムで走ることができたので、そこは改善していることは確認できて、開発の方向として間違ってなかったと思っています。ただ、国内では寒い時しかテストできていなくて、テストでも十分な距離は稼げていないので、これから暖かいレースに向かうのに対して課題があるのも事実です。

――2018年の課題はどこでしょうか?

谷川氏:(2017年の)鈴鹿のレースではよかったというお話をしましたが、それ以外のサーキットが課題です。

今北氏:鈴鹿のサーキットには特性が合っててよかったというのは我々の中でも見えている。鈴鹿以外のサーキットではどうして合ってないのだということが、2017年に見えてきた部分があったので、そこを改善することが2018年の課題となっています。例えば、寒い時期に行なわれるツインリンクもてぎのレースなどがこれに該当しますが、この間の岡山のレースを見る限り、結果には表れていませんがそこそこ頑張れるのではないかということになっています。

――2018年シーズンのダンロップのSUPER GT以外のモータースポーツ活動について教えてください

谷川氏:SUPER GTと併催されている若手育成のカテゴリーであるFIA-F4、そしてJAF-F4にダンロップとしてワンメイク供給を行なっています。例えば、FIA-F4では長いレースを2レース、1セットのタイヤで走っていただくこと、また選手が運転能力を磨いたり、車両セッティングを覚えたりするためにも、安定した性能が長く持続するタイヤを提供させていただくことを心がけております。
 そのほかにダンロップブランドではカート、ラリー、ダートラ、ジムカーナなどのほか、86/BRZレースに参戦しているチームにもタイヤを供給しています。また、オペレーションは現地法人が行なっていますが、オーストラリアのスーパーカー・チャンピオンシップ(かつてのV8スーパーカーシリーズ)にもタイヤを提供しています。また、ファルケンブランドでは(この富士レースの翌週末にドイツで行なわれる)ニュルブルクリンク24時間レースに参加するファルケンモータースポーツチームとスバルチームにもタイヤを供給しています。

――GT300クラスについてはいかがでしょうか?

谷川氏:結果だけを見ると、車両トラブルやBOPなどさまざまな要因がありますが、3台ともにちゃんとしたいいチームで、上位を走ってもらえるチームです。2018年シーズンも順調に滑り出したのかなとは思っています。

今北氏:3年ぐらい前に比べると、競合他社のレベルも上がってきています。我々もちゃんと進化させないと競争に勝てないレベルになってきているので、GT300クラスのタイヤをきちんと進化させていく、そういう年にしていきたいです。2018年はクルマに特化した開発をきちんと行ない、グリップを上げる方向の正常進化を考えています。

左から今北氏、谷川氏

――最後に2018年シーズンの目標をお願いします。

谷川氏:2018年もGT500クラスでまず1勝を目指したいです。2017年に勝った時には10年ぶりと言われてしまったので、安定して勝てるようにしたいです。GT300クラスに関しては、どこのチームも勝つチャンスがあると思いますし、チャンピオンの可能性があると思うので、2015年に獲得したシリーズチャンピオンの奪還を目指したいです。


64号車 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮組)

 このインタビューの後に行なわれた富士500kmレースでは、残念ながら64号車 Epson Modulo NSX-GTはリタイアに終わってしまい、結果を残すことができなかった。次のレースはダンロップ陣営が得意だと感じている「SUZUKA GT 300km Fan Festival」となるだけに期待したいところだ。

11号車 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)

 GT300クラスの方は順調に結果を残しており、11号車 GAINER TANAX GT-Rが開幕戦で5位、富士500kmでは3位に入り現在ポイントランキング4位につけている。富士500kmレースでは61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTがレース中盤まで2位を走っており、エンジントラブルさえなければ上位に食い込むことができただけに、こちらも今後のレースに期待だ。

21号車 Hitotsuyama Audi R8 LMS(リチャード・ライアン/富田竜一郎/篠原拓朗組)
61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)