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ミシュラン、“Mチップ”が詰まった新コンパウンドでアイスブレーキ性能を4.5%向上させた新スタッドレスタイヤ「MICHELIN X-ICE3+」発表会

摩耗時は現行型比で11.5%向上。アイス性能とロングライフを訴求

2017年8月1日 発売

オープンプライス

新スタッドレスタイヤ「MICHELIN X-ICE3+」と、日本ミシュランタイヤ株式会社 代表取締役社長 ポール・ペリニオ氏

 日本ミシュランタイヤは6月26日、“Mチップ”が詰まった新コンパウンド「表面再生ゴム」を採用した新スタッドレスタイヤ「MICHELIN X-ICE3+(ミシュラン エックスアイス スリープラス)」を発表した。サイズは15インチ~18インチの計15サイズ、価格はオープンプライスで8月1日より順次発売する。

 このX-ICE3+についての発表会が6月26日、都内において開催された。

X-ICE3+
X-ICE3+のトレッドパターン。X-ICE3と同じものを採用する
写真左から、左部、中央部、右部のトレッドパターン。回転方向指定のあるパターンで、いわゆる線対称のパターンとなる
X-ICE3+のプロファイル

 X-ICE3+は、ミシュランが現在販売している現行スタッドレスタイヤ「MICHELIN X-ICE3」のコンパウンド改良製品になる。X-ICE3で採用された「トリプル・エフェクト・ブロック」「マックスタッチ」「バリアブルアングルサイプ」などのパターン技術はそのままに、“Mチップ”が詰まった新コンパウンド「表面再生ゴム」を採用することで、新品時のアイスブレーキ性能を4.5%向上、摩耗時(1万km実車走行)のアイスブレーキ性能を11.5%向上させている。

 日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長 ポール・ペリニオ氏は日本語で挨拶を行ない、ミシュランのスタッドレスタイヤ開発の歴史を紹介。1982年に日本で初めてとなるスタッドレスタイヤを発売し、2017年が35周年になるという。ミシュランのスタッドレスタイヤは日本チームが開発しており、研究・開発センターは群馬県太田市に、テストについては北海道士別市で行なっている。顧客からの支持は高いといい、X-ICEが発売された2004年から2015年までJ.D.パワー「冬用タイヤ顧客満足度調査」において連続No.1を獲得していると紹介した。

 そのミシュランが2017年シーズンから投入する新スタッドレスタイヤがX-ICE3+になる。

ミシュランスタッドレスの歴史について語るポール・ペリニオ社長

 X-ICE3+の詳細は日本ミシュランタイヤ マーケティング部 ブランド戦略マネージャー 望月一郎氏が説明。望月氏は、ユーザーがスタッドレスタイヤに求める性能はアイスブレーキ性能で、それは新品時も、2年後も3年後も変わらないという。そこでX-ICE3+は“アイスで止まる安心感。永く効き続ける信頼感。”を実現する製品として作られており、新品時のアイスブレーキ性能はもちろん、摩耗時のアイスブレーキ性能を大幅に改善した。

日本ミシュランタイヤ株式会社 マーケティング部 ブランド戦略マネージャー 望月一郎氏

 新たな性能を実現するキーデバイスが、“Mチップ”が詰まった新コンパウンド「表面再生ゴム」になる。このコンパウンドは摩耗が進むと、タイヤ表面に出たMチップが溶けることによって無数の穴が出現。この穴が凍結路の表面に浮く水を吸い取ることでアイスブレーキ性能を向上させている。

 タイヤのゴム表面の穴が吸水するという仕組みは多くのスタッドレスタイヤで用いられている技術。ミシュランのX-ICE3+のポイントは、この穴がタイヤ表面に出てきた“Mチップ”が溶けることによって作られることで、表面に出ない状態では“Mチップ”が詰まったままのため穴が存在しないことになる。つまりゴムの剛性がしっかり保たれており、タイヤが減ることで新しい穴もできるため、ライフ性能もよく性能低下も小さくなる。

消費者ニーズ
製品名
新品時アイスブレーキ性能
摩耗時アイスブレーキ性能
X-ICE3/X-ICE3+共通技術
新コンパウンド
顕微鏡写真
“Mチップ”が密度高く入っている
サイズラインアップ

 発表後の質疑応答では、当然ながらこの“Mチップ”は何か?というところに質問が集まった。望月氏は、素材の詳細については言えないとしつつ、厚生労働省の安全基準でも届け出不要の物質になっている安全なものだという。

 また、ゴムと違う硬さの物質が入っていることで、これまでのX-ICE3とあまりに異なったタイヤとなる可能性もあるが、それについてはペリニオ社長が「そこが開発に一番苦労したポイント」と語り、新しいX-ICE3+は乗り心地などをX-ICE3同等に仕上げてあるとのことだ。

“Mチップ”のネーミングについては、同社の社名から来ているところもあるとのことだ。

 これまでミシュランのスタッドレスタイヤは、構造や低温特性のよいコンパウンドなど、同社らしいスタイルでタイヤを進化させてきた。ところが今回のX-ICE3+では、日本のスタッドレスタイヤのような無数の穴が開くというコンパウンドを採用。ミラーバーンが大きな問題となっており、アイスブレーキ性能を何よりも重視する日本市場にターゲットを絞ってきた感がある。販売地域についても確認したところ、日本と中国で、製造は中国になるという。

 サイズは15インチ~18インチの計15サイズと、初年度の投入サイズは少ないが、ほかのサイズについては現行製品であるX-ICE3と併売が行なわれ、数年をかけて置き換わっていくのだろう。

商用車用スタッドレスタイヤ「AGILIS X-ICE」

商用車用スタッドレスタイヤ「MICHELIN AGILIS X-ICE」
AGILIS X-ICEのトレッドパターン。X-ICEテクノロジーが使われているのが分かる

 ミシュランはX-ICE3+の発表会において、商用車用スタッドレスタイヤ「MICHELIN AGILIS X-ICE(ミシュラン アジリス エックスアイス)」も発表した。サイズは195/80 R15LT 107/105Rで、価格はオープンプライス。このサイズは、トヨタ自動車「ハイエース」、日産自動車「キャラバン」などをターゲットにしたものだという。

「トリプル・エフェクト・ブロック」「マックスタッチ」などX-ICEシリーズの技術を採用したほか、速度レンジ「R(170Km/h)」を実現しており、将来的な高速道路の最高速度引き上げ時に対応したタイヤとなる。