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日産、排出ガス測定のデータ書き換えや試験環境逸脱などについての記者会見
生産台数が少ない「GT-R」は全数測定で検証を継続
2018年7月10日 10:22
- 2018年7月9日 開催
日産自動車は7月9日、2017年9月に表面化した完成検査の不正に関連する一連の自主点検の中で、新たに日産自動車九州以外の国内車両製造工場で排出ガスや燃費を測定する試験でデータ書き換えなど不適切な行為があったことが判明。同日に確認した事実や現在までの調査結果を国土交通省に対して報告し、神奈川県横浜市にあるグローバル本社で記者会見を行なった。
会見には「今回の完成検査の問題について対策と実行の責任者となっている」という日産自動車 CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー) 山内康裕氏、日本生産事業を担当している日産自動車 常務執行役員 本田聖二氏、品質保証を担当している日産自動車 常務執行役員 中井良和氏の3人が登壇。冒頭で山内氏から同日発表した内容の概要について説明され、「完成検査問題の再発防止に向けた取り組みを進めている中でこうした事案が発見されてことに対し、お客さまをはじめ、関係者の皆さまに深くお詫びを申し上げます」とコメントし、あらためて謝罪した。
なお、発表内容の概要は関連記事「日産、完成検査時に新たな不適切行為。九州工場を除く全工場の1171台で排出ガス測定のデータ書き換えや試験環境逸脱など」を参照していただきたい。
また、山内氏は「本事案は、完成検査問題に対する再発防止策を実施する中で発見されました。こうした事案が確認されたこと自体については大変残念としか言いようがありません。ただ、これは弊社がこれまで実施してきた『網羅的な法令遵守』に関する自主点検が機能している結果でもあると受け止めております。また、同時に現状の課題の根深さ、われわれの取り組みの進捗がまだ道半ばであることを痛感しております。時間は少しかかるかもしれませんが、社長の西川を筆頭に経営の重要課題としてとらえ、コンプライアンス意識の徹底が急務であることをあらためて認識し、これまでに着手した本事案に関する調査を徹底的に実施すると共に、これまで実施してきた再発防止策についても従業員1人ひとりにコンプライアンス意識を根付かせるための見直しを進め、全社一丸となって、真摯かつ愚直に取り組んでまいる所存です」と総括した。
詳細については本田氏が解説を担当し、この中で本田氏は、日産では完成検査問題の再発防止策の一環として、法規や法令の遵守に向けた取り組み、完成検査におけるIoT化の推進といった再発防止策の具体的な実行を職務とする「日本生産事業本部」を4月に立ち上げ。この日本生産事業本部で法規、法令遵守に関する仕組み、体制、プロセスの総点検を実施してきたが、この活動で他社で発生した事例を元に、排気の抜き取り検査に関する調査を行なったところ、新たな不正を把握することになったという。
また、排出ガスが保安基準に適合するかについての再検証では、栃木工場で生産されている「GT-R」が除外となっているが、GT-Rについては元々の生産台数が少なく、推定に必要となるログデータの「N数(抜き取り数)」が再検証できるだけないことから、現在生産されている車両について全数測定を実施して検証を継続しているという。
「再検査でクルマの走行距離が増えることに不安や抵抗感があったのではないか」と山内CCO
質疑応答では西川社長や山内氏、さらにゴーン会長など経営陣の責任の取り方について質問され、山内氏は「今回、実際に機械に残っているログデータを見ると工場やクルマによって違ってはいるのですが、データで確認される限りでは1年前や3年前など比較的長い期間こういった行為が行なわれてきたと認識せざるを得ない状況にあります。そのうえで、われわれ経営陣がまず成すべきこととしては、『なぜこのようなことが起きているのか』を的確に把握して原因を徹底的に究明し、こうしたことが2度と起きない仕組みを作り上げることが、今経営にあたっている私どもの責任であると考えております」と回答した。
また、これまでの完成検査の不正に関する調査から引き続き、原因究明の調査は「西村あさひ法律事務所」に依頼して進められると発表されているが、この調査で必要とする期間について山内氏は「すでに一部のヒアリングなどを開始しておりますが、最低1月ぐらいはかかるのではないかと考えております」と述べた。
データの書き換えについて、排出ガスや燃費値といった成分値で36.9%という高い数字が出ている点について、認識と原因について質問され、山内氏は「数値について、比率としては高いと私も認識しております。原因や動機について調査をしているところで、ここで断定的なことを言うのは差し控えたいとは思いますが、推定をするに、日産の社内基準が諸元値や保安基準などに対してかなり厳しい基準値を設定しております。これを守るため、工場ではクルマである(基準の範囲外の)データが出た場合、例えば検査をやり直したりといった厳しいアクションをするよう規定しております」。
「ですので、1つとしては保安基準や諸元値には入っているデータなので、これを書き替えることが法律に抵触するようなことにならないのではないかと検査員が思ったのではないか。それから、社内で決めている厳しいアクション基準に該当するデータが出た場合、1日~1日半かかるような再検査をする必要が出るのではないか。また、ヒアリングでは、燃費であれば(抜き取り検査した)クルマの走行距離が増えてしまい、お客さまに対して走行距離が多いクルマをお出しすることの不安や抵抗感があったのではないかと推測しておりますが、それだけなのか、それ以外にもあるのかについて今後の調査を待たざるを得ないと考えております」と回答している。
日産自動車九州ではデータ書き換えなどが起きていないなど工場間でばらつきがあることについて山内氏は「今回、日産自動車九州ではこういった事態が起きていないことは、これも特定はできませんが理由を考えてみますと、九州工場の監督者というのが排気に関する抜き取り検査の完成検査員の出身で、検査における詳しい知識や技能を持っている人間が常にそばにいたことが1つの理由として挙げられるのではないかと思っております。残念ながら九州工場以外の工場では、こういった知識や技能を持った監督者が配置されておりませんでした。ですので、検査員の不適切な行為について『ちょっとおかしいのではないか?』といった勘が働かなかったのではないかと推測しております」とコメントした。
このほか、今回判明したデータ書き換えなどについて、2017年9月に完成検査の不正が表面化し、国交省からの指導などがたびたび行なわれるようになってからもオートワークス京都以外の4工場については不正が最近まで続いていたことについて、山内氏は「私どもは完成検査の問題が発覚して以降、他社さんの例がどうこうということではなく、ことあるごとに法令遵守については、例えば社内のイントラネットでいろいろな役員がメッセージを発信するであるとか、私や生産担当の役員が工場に行くたびにメッセージを発信する、社長の西川自らも工場にたびたび訪問してそのたびにメッセージを発信するといったことを繰り返しやってきたつもりであります。ただ、このたびこのような事例が起きたということですので、ここについてさらに対策を深めていかなければならないと考えております」と回答。山内氏はこれ以外の質問でも、現場とのコミュニケーションを密にして実態を把握する必要があると述べた。