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【SUPER GT第5戦 富士】坂東代表の定例会見。DTMとの「ジョイントイベント」は2019年10月にドイツ、11月以降に日本で開催

DTMからは12台が日本に、日本からは15台すべてがドイツに

2018年8月5日 開催

CLASS 1の技術規則書を公開する株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GTの第5戦となる「2018 AUTOBACS SUPER GT Round 5 FUJI GT 500mile RACE」が8月4日~5日の2日間、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された。決勝レースが行なわれた8月5日には、SUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏による定例記者会見が行なわれた。

 この中で坂東代表は、先日発表された2019年のSUPER GTのカレンダーの狙いや決まった経緯、さらにはドイツのDTMのプロモーターであるITRと共同で規定した「CLASS 1」という共通レギュレーションの狙いなどについて説明した。

DTMとのジョイントイベントは、10月にドイツ、日本ではツインリンクもてぎの最終戦後に開催

――それでは代表から冒頭の挨拶の後、質疑応答に移りたい。

坂東代表:久しぶりの富士500マイルレースで、暑い中での500マイルレースとして復活したことを嬉しく思っている。SUPER GTとしては富士での500マイル(約800km)は初めての試みだが、今までにないイベントということで、お客さまの方も前年対比150%と前売りも好調だった。この夏休みの雰囲気の中でいろいろと大変だが、関係各所と連携して成功させたい。

――来期のカレンダーが発表されたが、その変更点、5月と9月のイベントについて、また、10月にインターバルを入れた狙いについて教えてほしい。

坂東代表:基本的には今年と同じような形だが、それを決めるに至った工程と内容を説明したい。まず、3月に開幕戦ができるのかどうかということを検討した。その中で2月にあるセパンテストが、MotoGPのテストが入るので遅れることになった。5月に行なった鈴鹿では1分45秒を切るぐらいクルマが速くなってきている中で、冷えている状態の路面温度でやるにはテストの時間をきっちりとる必要がある。岡山でもテストをすることを考えると3月は難しいとなって、4月の開幕戦という形になった。

 ただ、これも未来永劫なのかということではなく、2020年のシーズンは3月にやることも引き続き検討していく。ただし、3月末は決算期であるので、3月末よりも1週前あたりを考えていきたい。

 5月の富士は例年通りで、集客を考えると動かすのは難しい。鈴鹿の5月は、6月に入るとニュルブルクリンク24時間レース、ル・マン24時間レースのテストデーなどが入ってくる。その前にレースをやりたいということで、ACO/WEC、SROとは今後も協力体制を組みながら、世界ともスケジュールを調整していきたい。そこを立てると6月は難しくなってきている。タイには船便で車両や機材を送る必要があり、前後1か月かかっている。そこをもう少し工夫するなどしても1週間つめられるかどうか……。安全を考えると6月末のタイというスケジュールもなかなか動かしにくい。8月になるとオリンピックの2輪のところが入ってくる。そして再来年に向けては東京オリンピックにも備えを考えないといけないので、そこを考慮した。

来期のカレンダーについて説明する坂東体表

 10月になると、国内でF1、WEC、MotoGPがあり、2019年はWRCが開催される可能性もある。現在そこをITRと詰めている状況だが、この時期に飛行機でドイツに行って「ジョイントイベント」(筆者注:従来は交流戦と呼ばれていたDTMとのイベントは、今後はジョイントイベントと呼ばれるとGTAから正式にアナウンスがあった)をやろうと計画している。また、オートポリスに関しては熊本でラグビーの世界選手権があることも考慮してこの日程にした。そして、ドイツから帰ってきてツインリンクもてぎの最終戦が終わった後、日本にDTMを呼んでレースをする予定にしている。

 チームクルー(のスケジュール)が過密になる問題に関しては、1月、2月、12月を考慮して考えると、稼働率がどのくらいになるのかを考慮しないといけない。タイヤテストや公式テストなどの日程を含めて考えないといけない。サーキットに入る時間、出る時間に関しても決めていき、それ以上は残業になったり、夜遅くまで作業したのなら朝は入れないなどの働き方改革をモータースポーツ業界もしていかないといけない。

 そのあたりは今後、タイヤメーカー、マニファクチャラーともよく話し合っていき、誰かがチームの負担を軽減していかないといけない。実際、今週の金曜日にもタイヤメーカーと話し合いをしたり、弊社の取締役会などでマニファクチャラーとよく話し合っており、稼働日数を削減することを模索している状況だ。

――DTM ノリスリンクでITRのゲルハルト・ベルガー会長とCLASS 1の規定成立について発表を行なったが、それらの様子や現地での反応を教えてほしい。

坂東代表:CLASS 1の基本ベースができ上がって、CLASS 1規定を使って、2020年以降ヨーロッパとアジアでやっていこうと合意した。共通パーツに関しては、日欧のサプライヤーを1つか2つ選択し、欧州はITR、アジアはGTAが知的財産権を半永久的に所有する。そしてこのCLASS 1規定は2030年までと決めており、この形のレースが2030年まで行なわれるという可能性がある。これによってチームはスポンサーに対して中長期的に提案することが可能になり、経営方針も中長期的に考えることができる、それはタイヤメーカーやマニファクチャラーも同様だ。中長期的にすべてのものができるように、CLASS 1をジョイントイベントから始めていきたい。

 2020年から始まるCLASS 1規定と比較すると、現状の車両とは空力やエンジンなどに差があるので、2019年においてはBOP(Balance of Performance、性能調整)を行なう形でレースをして、2020年以降はCLASS 1でレースができるようにしていく。2020年以降は2~3戦、2025年以降はイベントを増やそうという話をしている。例えば欧州で2戦、アジアで2戦、北米で2戦などの形でジョイントイベントをやっていきたい。ワールドチャンピオンレースとは言わないが、各大陸でレースができるようにITRと話し合ってやっている。

 これにより、参加しているマニファクチャラーの可能性は大きくなっている。共通パーツに関しては日本ではGTAが、欧州ではITRが知的財産権を所有する形になる。これで新しいマニファクチャラーの参加もこれまでよりやりやすくなる。この間行なった会議の中では、欧州におけるDTM、アジアにおけるSUPER GTの位置付けをちゃんとしていこうという話をした。SUPER GTのシリーズ戦を3月~10月に完了し、11月~2月にジョイントイベントを行なう可能性を作っていこうと。まずは日独で1戦ずつに加えて、アジアで1戦を追加するなどすると魅力的になる。

 そうした動きに呼応するように、中国でChina SUPER GTをGT500はCLASS 1で、GT300はFIA-GT3でやりたいというお話をいただいている。1つの参考だが、トヨタ、日産、ホンダ、アウディ、BMWはそれらの国に対してエンジンを、トヨタならTRD、日産ならニスモ、ホンダなら無限が供給して、共通パーツを利用して車両を作りシリーズをやるという考え方もある。プロモーターがしっかりしている状況なら十分に可能性があると思う。このほかにも、タイではGT300をベースにしたシリーズを検討しており、各国の販社が営業活動の一環として考えられる状況をしっかりと作っていきたい。

DTMとのCLASS 1規定について説明する坂東代表

――ドイツメディアの反応はどうだったのか?

坂東代表:メディアは40名参加していただいた。欧州ではCLASS 1の規定が注目を集めており、今後メルセデス・ベンツが抜けたITRが掲げるビジョンが現実になって定まってきて、ITRの復活というのもプラス方向になってきている。今後のことを考えると、2030年までという長期の方針と知的財産権の処理がはっきりしたので、そこを評価していただいている状況だ。

――各国ではFIAーGT4に注目が集まっているが、GTAはGT4についてどう考えているか?

坂東代表:何も考えていない。GT4のカテゴリーがあるけど、SUPER GTではGT3がメインであって、そのほかにもポルシェとF4をやっているので、そのほかのカテゴリーに対して、考える余裕はない。今持っているものを中長期にやっていく。今後余力があれば考えていくことがあるだろうが。今の余力では、GT4やTCRなどに関しては、意見を求められれば答えるけど、GT4がどういう形で世界中に広がるのか分からない。SUPER GTでは日本のチームのプロ化を目指しているので。(GT4やTCRに関しては)他のプロモーターの方に頑張っていただきたい。

ドイツでのジョイントイベントはGT500の15台全車が参加

今回のチケット前売りは2017年比で1.5倍に

――今回のイベントで前売りが1.5倍になったそうだが、今後のサーキットでのさまざまなイベントなどの取り組みなどに関して教えてほしい。

坂東代表:「SUZUKA 10H」が35台のエントリーという状況から始まる。GT300の車両を参加できるようにしており、アジア圏向けの戦略としての部分を、これを始まりとしてSROとも密接にやりとりしながらやっていきたい。現在、GTアジアとかいろいろなところでGT3をやっているが、SUZUKA 10Hにはこれを淘汰するような形のレースになってほしい。SUPER GTに関しては夏休み中でのロングレースとして今回の富士500マイルを開催している。従来のSUPER GTの鈴鹿1000kmレースと夏の富士のレースのお客さまが重なっているのが、今回のイベントだと考えている。

 SUPER GTのコンテンツを面白いと感じてくれているお客さまに対して、オーガナイザーの努力で、室屋さんのデモフライトが行なえたりしている。デモフライトが終わってお客さまがみんな帰っちゃったらどうしようかと思ったが(笑)。いろいろな形でお客さまが楽しんでくれるのはよいことで、夏休みの過ごし方の1つとして、最後まで楽しんでいただけるイベントを作っていきたい。今後もそうした、他の種類のコンテンツをお持ちの方とジョイントできるようにしていきたい。

――日本へのインバウンドの観光客が増えている。そうしたインバウンドの訪日客へのアプローチは?

坂東代表:日本のタイ大使館と国土交通省などとお話をしている。官民一体となって海外のお客さまを招く取り組みをしていく必要がある。タイからのお客さまが日本に来て、スポーツ関連で見たいのはサッカー、バレーボール、その次にモータースポーツという統計もある。このあたりはSUPER GTがブリーラムで6年やってきたのがいい影響をしていると考えている。8月末にタイの観光省が東京に来て、タイへのアウトバウンドのアピールを行なうので、GTAもそこに参加する予定だ。

 日本では2020年に東京オリンピックがあるので、モータースポーツ業界としてはそこに招致活動だったり、興味を持ってもらっている。招致に関する取り組みは行なっており、今回のレースに国土交通省の政務次官もお見えになっているので、少しでもお役に立てるよう知っていただく、そういう活動を続けていく。

――SUZUKA 10Hが今月末になるが、GTAの取り組みは?

坂東代表:せっかく盛り上げようと思ったら、34号車があんなこと(別記事)になってしまい……。34号車をどうするのかという話の中では、ホンダの関係者が「10日にこちらに到着するGT3があるのでなんとかする。大丈夫だ」と言っていた。道上龍選手もそれでなんとかなる状況だと思うのでひと安心している。SUZUKA 10Hでは知らないタイヤで走るので、インターコンチネンタルのレースであっても、GT300というひと括りの部分をSUZUKA 10Hで行なわれることを大事にしながら、来年以降も取り組んでいきたい。

――2019年のジョイントイベントで、日本の開催場所やタイヤメーカーはもう決まっているのか教えてほしい。

坂東代表:教えない(笑)。冗談はともかく、基本的にやれる場所に関しては富士か鈴鹿になるので、今後折衝、交渉をしていく。ITRのプロモーションの部隊がきて、富士と鈴鹿に一緒に行って、看板やチケットなど、サーキットとの折衝や交渉などを確認し合って、どこをどうやっていくか検討している。現在の日本のオーガナイザーとはまるきり違う考え方で、F1やWECでの考え方などをベースに+αとなる交渉になっていくと思う。タイヤは9月に入札する。金曜日にタイヤメーカーとミーティングしてテスト削減する話をしたが、9月に入札を行なうことも伝えた。SUPER GTは現行のタイヤメーカー、ITRはハンコックになるので、横浜ゴム、ダンロップ、ミシュラン、ブリヂストン、ハンコックが入札に参加することになるのだろうと昨日お伝えした。

――現在のGT500クラスには特認車両がBOPで参加している。その扱いは2020年のCLASS 1規定導入後はどうなるのか? 2020年以降にBOPがあり得るのか?

坂東代表:視野に入れている。おっしゃっているのはGT500のNSXのことだと思うが、ジョイントイベントはCLASS 1で行なわれるが、日本ではNSXはJAF-GT500として参加しており、CLASS 1には合致していない。そこをどうするかは今後も議論していく。2019年に関しては現行通りで、2020年や2021年にどうするかは話を続けていく。

――ジョイントイベントは、欧州ではどこで行なわれるのか? また何台来るのか?

坂東代表:GTAの希望としてはホッケンハイムでと考えている。集客の大きさを考えるとノリスリンクではないだろうと。ドイツから日本に来るのはアウディ+BMWで12台、こちらからドイツに行くのは15台全部だ。コストはGTAの事務局によろしくねと言っている(笑)。レクサス、日産、ホンダすべての車両、スペアパーツ。それを飛行機で運ぶことになるだろう。それに各チーム15名のチームメンバー。エコノミーというわけにはいかないだろうから、スーパーエコノミー?(笑)。それを合計して300名程度の渡航費・宿泊費はGTAで担保したいと考えている。マニファクチャラーに予算が取れるかは定かではないが、今後考えていきたい。

――では、最後に坂東代表から

坂東代表:この間行って調印してきたCLASS 1のルールブック(技術規則)ができたが、まだ日本には1冊しかないのでマニファクチャラーにも渡していないが、ここで公開したい。今後日本語に翻訳するなどして、日本のマニファクチャラーなどにも配布していく。今回もITRのベルガー氏に来ていただく話もあったのだが、これだけでわざわざお越しいただくのもなんだったので、ジョイントイベントの日にちが決まったところで調印式をやりたいと考えている。今回のCLASS 1規定は、モータースポーツが変わっていくよいきっかけになると考えており、メディアの皆さまにもその方向でご理解いただければ幸いだ。

CLASS 1技術規則を公開する坂東体表