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三菱電機、世界初開発の「コンパクトなGAN」説明会。画像生成AIの演算量とメモリー量を10分の1に削減
ノートPCで高速に動作する画像生成のデモを披露
2019年1月31日 20:55
- 2019年1月31日 発表
三菱電機は1月31日、敵対的生成ネットワーク「GAN:Generative Adversarial Network」に使用される画像生成AIの演算量とメモリー量を10分の1に削減した世界初の「コンパクトなGAN」を開発したと発表。同日、コンパクトなGANに関する説明会が開催された。
同説明会には三菱電機 情報技術総合研究所 知能情報処理技術部長 田崎裕久氏、同社 知能情報処理技術部 映像分析技術グループマネージャー 杉本和夫氏が登壇、新技術の狙いや同社のIoTやAI技術の開発戦略について話した。
田崎氏からは三菱電機のIoTやAI技術の開発戦略について説明がされ、IoTにおいては、クラウドやサーバーといったITシステム領域から、工場、ビル、自動車、自動車分野を例にすると車両制御ECUのエッジ領域、ステアリング装置などの機器領域まで、さまざまな機器を保有している強みを生かして、機器・エッジ領域をスマート化していく戦略という。
また、AI技術については「Maisart (マイサート):Mitsubishi Electric's AI creates the State-of-the-ART in technology」といったAI技術ブランドを掲げて技術開発を進めていることを紹介。機器・エッジ領域をスマート化するAI技術として、ディープラーニングではアルゴリズムのコンパクト化、強化学習やビッグデータ分析の効率化など、演算量を削減して機器やエッジ領域へ搭載していく方針を示した。
今回開発したコンパクトなGANについて、田崎氏は「GANと呼ばれるAI技術は、今後いろんなところに使用されることが期待されています。そのGANをさらに活用性を高めるために演算量とメモリー量を10分の1に削減したのが大きな成果で、世界で初めてコンパクト化に実現しました」と、世界初の技術であることを強調した。
高速に動作する必要のある車載システムへの応用も
続いて登壇した、杉本和夫氏のプレゼンテーションでは今回開発した技術「コンパクトなGAN」に関する説明が行なわれた。GANとはGenerative Adversarial Networkの略で、画像を生成するAIと、その画像が本物かどうかを見分けるAIが競い合いながら学習していくことで高品質な画像生成を可能とする技術。
これまで画像認識向けAIの開発には膨大な枚数の画像が必要とされていたが、GANによる画像生成AIで大量の画像を自動生成してその画像を使って画像認識向けAIを学習させるといった活用が期待されていることが紹介された。
大量の画像を高速に生成するには大規模な計算機が必須であったが、今回開発したコンパクトなGANでは、画像生成AIを構成するニューラルネットワークの各層の重要度を評価、重要な層だけを残すことで、演算量とメモリー量を10分の1に削減、ノートPCや組み込み機器などでも高速な画像生成を実現させた。
会場では実際に汎用のノートPCを使用した画像認識向けAIのための学習用画像自動生成のデモが行なわれた。ノートPCを使用したデモでは、従来技術では約3秒/枚のスピードであったものが、新たに開発した技術では約0.3秒/枚の高速化を実現することを示した。
杉本氏は、この「コンパクトなGAN」の活用について、組込みシステム上で高速に動作する必要がある車載システムや監視システムへの応用、高速に検査することが求められる生産ラインにおいて、カメラによる外観検査の自動化などへの応用を検討しながら開発を続けるとしている。