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三菱電機、独自光学系のLEDヘッドライト超小型高機能モジュール説明会
20mmの小型照射レンズでデザイン性を高め、配光制御など機能も充実
2018年6月7日 18:16
- 2018年6月7日 開催
三菱電機は6月7日、独自に開発した光学系を使ったLEDヘッドライト用モジュールの開発を発表した。従来のものよりも効率を高めた独自の光学系を採用。20mmの小型照射レンズで従来よりも明るい光を発し、デザインへの対応を高め、高機能な配光制御も可能とした。2021年の量産を目指すという。
2020年には50%を超えるLED化率が見込まれるヘッドライト市場
三菱電機本社で行なわれた開発説明会では、先端技術総合研究所長の水落隆司氏が「ヘッドライトは三菱電機にとって初めての取り組み」として、ヘッドライト市場参入の意図を説明した。すでにヘッドライト用LED点灯装置といったLEDを点灯させる電子回路ユニットは製品化しているが、ヘッドライトそのものへの取り組みは初めてとのこと。
水落氏は「すでに1兆円を超える規模。現在は20%強のLED化率が、2020年には50%を超えると見込まれている」「単に前方を照らすだけでなく、ADBと呼ばれる高機能なライティグの搭載が見込まれることも、高い成長率を示す大きな要因」とし、高機能なモジュールを開発してヘッドライト市場へ参入する理由を説明した。
開発したLEDヘッドライト用モジュールの特徴は、20mmという小型照射レンズで従来以上の明るさを確保したことによるデザイン性の向上と省エネ、シンプルな光学系により、高度な配光制御機能を実現したことの2つ。
LEDヘッドライト用モジュールは、6月13日から中国 上海で行なわれる「CES Asia」に展示するという。
光学モジュールの反射面が不要となり、投射レンズの高さを20mmに小型化
具体的な技術は先端技術総合研究所 オプトメカニズム技術部長の小島邦子氏が解説した。今回開発した独自のダイレクトプロジェクション方式では光学モジュールの反射面が不要となり、投射レンズの高さを20mmに小型化できたことが特徴という。
従来方式では部品が多く、位置関係が重要で構成が複雑。投射レンズを小さくするとLED光源からの光のうち利用できない光があり効率がわるくなる。そのため、投射レンズの高さは40mm~60mmになっていたという。
ダイレクトプロジェクション方式では反射面が不要となり、集光レンズと投射レンズのみで構成。配光分布形成、カットオフライン形成、配光投射機能を投射レンズに統合するシンプルな構成で小型化を実現するという。
効率面では、一般的なプロジェクター方式に比べて光利用効率が1.8倍に向上し、投射レンズが小型化できるとのこと。ダイレクトプロジェクション方式では高さ20mmの投射レンズでも、従来方式で一般的な40mm~60mmの投射レンズと同等以上の明るさを確保したとしている。
小型化の一方で、配光の高機能化も実現する。スポットビーム照射は従来、LED光源と投射レンズを同時に回転させなければ照射方向が変わらなかったが、2枚の小型レンズを光軸まわりに回転させることで水平方向に照射方向を変えることが可能になり、モジュールの小型化を実現した。
また、異なる色温度のLEDを配置することで色温度可変のヘッドライトも実現する。運転者の色に対する視覚特性に合わせて配光の色温度を調整可能とした。
さらに、LEDの点灯制御では常にハイビーム走行を実現するADB(Adaptive Driving Beam)配光では、対向車への照射を止めることで対向車への幻惑を防止するという。
小島氏は最後にまとめとして、今回の開発について「これまで光を使った情報機器を長年やってきたが、これまでとは違う新しい視点で開発した」とし、「今後もこのような開発を継続し、当社のヘッドライト用LED点灯装置や、車載情報機器などと組み合わせた、ヘッドライトにおける高機能部品の事業拡大を進めたいと思っている」とした。
なお、実際に参入する際は、どのような形で自動車メーカーに納めるかなどはこれから検討する。コスト面においても「シンプルな構成で、競争力のあるところを目指したいと思ってる」として広く普及を狙っている製品であると明らかにした。