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「新城ラリー 2019」レポート。新城市の人口を超える観客

2019年3月15日~17日 開催

3月15日に新城文化会館でセレモニアルスタートが開催された

 3月15日~17日、愛知県新城市で「新城ラリー 2019」が開催された。例年秋に開催されていた新城ラリーは、ここでシリーズチャンピオンが決定するクラスも少なくない最終決戦の地であったが、2019年は全日本ラリー選手権の第2戦。春の開催となり、スペシャルステージ(SS:競技区間)も2日間で4か所のターマックステージをリピートするシンプルなものとなった。

 大会のメイン会場となるのは2018年と変わらず県営新城総合公園。参戦マシンのメンテナンスを行なうサービスパークのほか、競技やデモランが行なわれる特設コース、TOYOTA GAZOO Racing PARKをはじめとするさまざまな企業ブースや飲食ブースなどが用意され、例年通り初めてラリー観戦する人や親子連れでも楽しめる内容になっていた。

 なお、全日本戦の中で最も多くの来場者が訪れる新城ラリーだが、過去最高を記録した2018年からはわずかに減少するも、新城市の人口を超える4万9000人(新城市発表)のファンが今年も会場に足を運びラリーを楽しんだ。

セレモニアルスタート

 競技前日の3月15日には、市内にある新城文化会館にてセレモニアルスタートが開催され、翌日に戦いを控えたラリーカーが集まったファンの中を走行した。会場には市内の小学生も集まり、全国を転戦する選手とふれあう様子は街をあげてラリーを歓迎するムードに溢れるものであった。また、開会式前に毎年会館内で行なわれる地元奥三河のプロ和太鼓集団「志多ら」の演奏は、2019年からは選手や関係者だけでなく一般の来場者の観覧も可能となった。

セレモニアルスタートでは地元の小学生も集まりラリーカーを見送った
開会式前には地元奥三河のプロ和太鼓集団「志多ら」の演奏も行なわれた

地元の勝田範彦選手が新井選手、奴田原選手に競り勝ち優勝

総合優勝を獲得した勝田範彦/石田裕一組“ラックSTI 名古屋スバル DL WRX”(JN1)

 2日間に渡る戦いを制したのは、このラリーにはめっぽう強い地元勢、勝田範彦/石田裕一組の「ラックSTI 名古屋スバル DL WRX」。続く2位には奴田原文雄/佐藤忠宜組の「ADVAN-PIAA ランサー」。なお新城市はADVANブランドを持つ横浜ゴムの主要工場があり、こちらもホームタウンラリーと言える。この2台、スバル WRX STI vs. 三菱 ランサーエボリューション Xの争いは熾烈を極め、最終ステージまでもつれこむ争いとなったが、僅差で勝田範彦/石田裕一組が勝利した。2018年に初めて新城ラリーを制した2018年シリーズチャンピオン 新井敏弘/田中直哉組の「富士スバル AMS WRX STI」は、初戦の「Rally of Tsumagoi」で勝利してこの第2戦 新城に臨んだが、2台の地元勢に及ばず3位でラリーを終えた。

 また、JN2クラス(2500cc超で生産を中止して10年以内の2WDと2WDのFIA公認車両)にレクサス RC-Fやトヨタ 86のFIA公認R3車両が出場。オープンクラスには最新のホンダ シビック タイプR(FK8)やフォード エスコートなどの歴史的名車が参戦するなど、その車種の多様さも今回のラリーの見どころの1つとなった。

総合2位 奴田原文雄/佐藤忠宜組“ADVAN-PIAA ランサー”(JN1)
総合3位 新井敏弘/田中直哉組“富士スバル AMS WRX STI”(JN1)
JN2クラス1位(総合8位)眞貝知志/安藤裕一組“TGR Vits GRMN Rally”
JN3クラス1位(総合7位)山本悠太/山本磨美組“Sammy☆k-one☆ルボルスYH86”
JN4クラス1位(総合8位)高橋悟志/美野友紀組“ミツバ itzz DL マジカル冷機 スイフト”
JN5クラス1位(総合9位)天野智之/井上裕紀子組“豊田自動織機・DL・ヴィッツ”
JN6クラス1位(総合9位)大倉聡/豊田耕司組“アイシンAW Vitz CVT”
OP1クラス1位 大橋渡/緒方和良組“DL プレジャー インプレッサ”
OP2クラス1位 齋藤伸司/石田昌孝組“ON! ルマン☆インプレッサ”
車種バリエーションの豊富さも魅力だった新城ラリー

新城総合公園は今年もイベントなど見どころいっぱい

TOYOTA GAZOO Racing PARKに展示された新型「スープラ RZ」

 競技のほかにもさまざまな催しが行なわれ、日ごろはあまりモータスポーツに接する機会のない人でも、気軽に立ち寄って楽しめるのは、新城ラリーの大きな魅力の1つだ。今大会も芝生広場にはさまさまな企業ブースや飲食店が立ち並び、大人から子供まで楽しめるアトラクションが用意されていた。なかでも子供たちに人気の“はたらくクルマ”は消防自動車からパトカー、自衛隊のクルマまで、いずれも触れたり乗ったりできるもので、NEXCO中日本が展示した高所作業車では作業用のバスケットに乗車することもできた。

陸上自衛隊 豊川駐屯地、新城消防署、NEXCO中日本、愛知県警、JAFなどさまざまな機関の出展ブースは、毎回子供から大人まで幅広い層に人気だ
大会スポンサーのアイセロほか、さまざまな企業が多くのスタッフとともにこのラリーを支えた。また、今回からスバルはアイサイトの体験ブースを設けた
選手のトークショーや音楽ライブのほかに体験型のアトラクションも多く、大村愛知県知事もさまざまなブースで楽しんでいた
TOYOTA GAZOO Racingとスバルのコラボ企画“ROOKIE Cafe”
2019年は春開催ということで通常のグリーンのほか、桜をイメージしたピンクのタオルマフラーも用意された
誰でも気軽にマシンのメンテナンス風景が見学できるサービスパークは、ラリー観戦の大きな魅力の1つ。お気に入りの選手とのコミュニケーションももちろんOKだ

ユホ・ハンニネン選手がヤリスWRC、脇坂寿一氏が新型スープラでデモラン

ユホ・ハンニネン選手によるヤリスWRCのデモラン
脇坂寿一氏による新型スープラのデモラン

 会場内に設置されたSSでは、全日本ラリーを争うトップドライバーの迫力ある走りのほか、ユホ・ハンニネン選手によるヤリスWRCのデモランや脇阪寿一氏による新型スープラのデモランなども行なわれ、元WRCドライバー、元SUPER GTドライバーの迫力ある走りも楽しめた。

県営新城総合公園で行なわれたデモランの模様。脇坂寿一選手による新型スープラのデモランには大村愛知県知事が同乗した

閉会式

 閉会式では総合優勝した勝田範彦/石田裕一組の表彰が行なわれた。実は3月17日は勝田範彦選手の息子さん、勝田貴元選手の誕生日。勝田貴元選手は現在ヨーロッパでラリー活動を行なっているラリー選手で、3月1日~2日に開催されたフィンランドの国内ラリー選手権に出場し、ヤリスWRCで優勝したばかりだ。大会中は息子さんの誕生日のことなどすっかり忘れていたという父 勝田範彦選手も、表彰式ではこの日本の国内選手権での勝利は息子さんへの大きなプレゼントになったと語った。

 WRC ラリージャパン開催に向けた話題も多い新城ラリーだが、そんななか、欧州では日本人ドライバーのWRC出場へ向けてのチャレンジも着々と成果を挙げているようだ。