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HERE、2050年を見据えてオープン・ロケーション・プラットフォーム企業を目指すオーバービークCEOの記者説明会

日本版OLP導入の狙いなどについて説明

2019年5月15日 開催

HERE Technologies 最高経営責任者(CEO)のエザード・オーバービーク氏

 HERE Technologiesは5月15日、同社最高経営責任者(CEO)のエザード・オーバービーク氏が来日して記者会見を開催。日本市場へのHERE OLP(Open Location Platform)導入を明らかにするとともに、今後の同社の戦略について説明した。

 今回、日本導入が発表されたHERE OLPは、カーナビをはじめとする車載業界にとどまらず、さまざまな業界のソフトウェア開発者が世界規模で位置情報データとサービスを検索、構築、共有するための共通データソース。2019年の第2四半期末までに日本向けにローカライズされたHERE OLP完全機能版を提供するとしている。

位置情報テクノロジーのプラットフォーム企業を目指すHERE

 オーバービーク氏の記者会見では、現在のHERE Technologiesについての説明があり「弊社は世界でも最大の位置情報データベースを有するようになりました。ここ1年間で、2Dから3D、スタティックからリアルタイムデータへ、マップもSDからHDへ移行を続け、さらには屋外だけでなく屋内のデータも含めるようにいたしました」と紹介した。

 また、同社が取り組んでいる位置情報に関するテクノロジーが社会にもたらす影響について「特に変化が著しいのはモビリティの世界ではないでしょうか、最近ではLyftやUberの上場もありましたが、彼らこそモビリティの世界において新しいパラダイムを開きつつある分野です。これらの分野では位置情報テクノロジーは非常に重要で、モビリティサービスのレベルが向上できるのです」と話した。

位置情報テクノロジーの活用が期待できる領域

 オーバービーク氏は「(位置情報テクノロジーは)モビリティばかりが恩恵を受けるわけではありません。公共部門、公益部門におけるスマートシティの建設、今後20~30年のあいだに都市空間において人とマシーン、自動運転車であり、ドローンであれ、ロボットであれ、人と共存する、そういった時代にこそ位置情報テクノロジーが必要になってくるのではないでしょうか。30年後の未来を思い描くに当たり、ベストなデータベースを備えていたいと思います。位置情報テクノロジーは、いかなる業界においても何らかのユースケースがあり、そこにこそ大きなオポチュニティが存在すると思われます」と、位置情報テクノロジーの重要性を説いた。

30年後の2050年の社会をイメージしたスライド

 会場のスクリーンには、30年後の2050年の社会をイメージしたスライドが示され、自動運転をはじめとするモビリティ領域のほかにも、ロジスティクス、エネルギー、農業など、位置情報テクノロジーの重要性は高まっていくことが強調された。

 今回、日本市場に導入することを発表したHERE OLPは、HEREが開発者向けカスタムツール、位置情報データ、分析などを提供。さまざまな企業が自社データを活用して、新たな製品やサービスを生み出すことを可能にするプラットフォームとなる。

 HERE OLPの機能により、具体的には自動車業界においては障害や事故、路面状況を含む実際の道路状況に関するリアルタイム情報にアクセスすることで交通の安全性を向上させることや、輸送・物流業界においては、リアルタイムの交通情報や追跡サービスを活用して、フリート資産の再ルーティングや経路計画の最適化に活用できるという。

 一方、同じコードベースのHERE OLPを通じて地域外での展開も可能になり、国内外のパートナーが、それぞれの国の市場に特化したサービスを構築、展開することもできる。

日本市場へ導入されるHERE OLP(Open Location Platform)のコンセプトを示すスライド
日本市場へ導入されるHERE OLP(Open Location Platform)のコンセプトを示すスライド

 HERE OLPについてオーバービーク氏は「自動運転の世界がやってまいりますと、1社で全てを達成する事ができる世界ではなくなります。パートナー中心のエコシステムを構築しなければなりません。扱うデータもリアルタイムでダイナミックなデータとなります。いかにデータを取り込み、データに変化があった場合にそのデータを検出できるかがカギになります。さらに、クラウドばかりでなくエッジにおけるコンピューティングを重視しなければなりません。例えば可視化という技術ではとてつもなく膨大な処理量が必要となり、それを全てクラウドで行なうのは無理があります。また、マーケットプレイスなどをどのように作っていくのか、さらに最も重要なセキュリティをどう担保するのか、そういったものを全て考慮しながらOLPの構築にあたってまいりました」と、その設計思想を説明した。

HDマップへの取り組みを示すスライド

 オーバービーク氏は会見の締めくくりに、自動運転に関わるHDマップへの取り組みについても紹介。「HDマップの世界でもナンバー1であり、格納しているマップのkm数も世界最大となっています。それに加えて特定の地域に関してHDマップを自動生成する機能を持っています。多くの自動車メーカーで実証実験をしていますが、この機能により現在のレベル3、レベル4から、最終的にはレベル5まで牽引していけるのではないかと考えています。さらにわが社は自動車メーカーの2社と商用契約を結ぶ唯一のメーカーとなります」と、自動運転領域におけるその存在感を示した。

世界のトップ企業の多くがプラットフォーマー

HERE Technologies APAC担当シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのスタニミラ・コルヴァ氏

 この記者会見では、APAC担当シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのスタニミラ・コルヴァ氏、製品管理担当バイスプレジデントのジョナサン・エイボン氏が登壇した。

 アジア・パシフィック地域を担当するコルヴァ氏からは、世界のトップ企業を見るとFacebookをはじめとするプラットフォーム企業であることを示して、HERE Technologiesにおいても位置情報テクノロジーを活用して、プラットフォーム主導のビジネスモデルを展開していくすことが示された。

コルヴァ氏が示したスライド

 日本市場においては、交通手段の個人所有離れや訪日外国人観光客の増加などインバウンド市場の活性化といったメガトレンドがあり、そこにチャンスがあるとして、日本市場においてもパートナーシップを拡大していくことを強調した。

開発者向けSDKとマーケットプレイスを持つ「HERE OLP」

HERE Technologies 製品管理担当バイスプレジデントのジョナサン・エイボン氏

 HERE OLPについて説明したエイボン氏は、HERE OLPの特徴について、開発者向けのSDKを用意するとともに、データやサービスの売買のためのマーケットプレイスを持っていることを説明。位置情報のテクノロジーを誰もが活用できるオープン・ロケーション・プラットフォームであることを強調した。

 同社ではHERE OLPにより、これまでのドライバーを安全に目的地に導くといったカーナビを中心とした位置情報の活用にとどまらず、都市のインフラや物流など企業の資産最適化まで、位置情報を通して世界を理解することで、パートナー企業が位置情報のテクノロジー活用して新たなビジネスにつなげていくプラットフォームに育てていく考えだ。

会場で展示されたデモンストレーション