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ブリヂストンの競技用自転車を日本代表が採用。オリンピックを目指す
PROFORMAT(推進力最大化技術)採用のアンカー2020年モデルも発表
2019年9月25日 07:00
- 2019年9月24日 発表
ブリヂストンとブリヂストンサイクルは9月24日、両社が開発したトラック用自転車が自転車競技トラック日本代表に正式採用が決定したと発表した。東京2020オリンピックへの機材提供となり、日本代表が出場する2019~2020年シーズンの各種大会から使用し、オリンピックに向けてさらなる開発を続けるという。
また、併せて同社のスポーツ自転車ブランドである「ANCHOR(アンカー)」の2020年モデル新製品の発表が行なわれた。競技車と共通の「PROFORMAT」という推進力最大化解析技術によるフレーム開発をさらに進め、ペダルの入力に対してロスなく車体を前に進めることを極めたことが特徴となる。
ブリヂストンはサイクルスポーツを「普及」と「強化」
ブリヂストンサイクル 執行役員の川端真澄氏は、ブリヂストンのサイクルスポーツとの関わりは「普及」と「強化」の2つの面にあるとした。普及の面では、オリンピックで自転車競技の会場となる静岡県の小学生1500名にロードレース観戦の機会を提供。「間近に見る選手の走りに(子供たちが)憧れの眼差しを向けていたことが印象に残った」と語った。
また「強化」という面では、ブリヂストンは前回の東京オリンピックの際に社内に自転車競技チームを設立して以来、1998年にアンカーというブランドを立ち上げ、2017年にはチーム名を「TEAM BRIDGESTONE Cycling」として発展させてきた。川端氏は「1964年の発足から今日まで継続。オンリンピック選手を多数排出してきて、今後も選手へのサポートを含めた活動を続けていきたいと思っている」と述べた。
PROFORMATを大幅に進化させることに成功
続いて、技術を担当しているブリヂストンサイクル 常務執行役員の北野秀樹氏がPROFORMATという推進力最大化解析技術について紹介。「以前よりブリヂストン技術センターと連携して開発しているが、今回、PROFOERMATを大幅に進化させることに成功した」と説明し、競技車、市販車ともに推進力をアップさせたという。
北野氏によるとPROFORMATは「ペダリングによる入力に対して、いかにロスなく車体を前に進めるか。より速く走りたい人はより速く、より遠くに行きたい人はより遠くに、より快適に走りたい方にはより快適に」を実現させることができるとした。
さらに北野氏は「空力はもちろん、剛性、重量、接地に至るまで性能をとことん追求した」とし、「剛性や空力のシミュレーションを行ない、それを接地状態やペダリング時の挙動解析まで含め、人馬一体のパッケージで設計をした」とした。
また設計したものは、埼玉県上尾市にあるブリヂストンのカーボンラボで形にしているという。「カーボンラボにより、開発スピードを圧倒的に向上させることができ、短時間で、選手、お客さまのもとに機材を届けることが可能になった」とした。
PROFORMATでアンカーの2020年モデルがより進化
続いて、ブリヂストンサイクル マーケティング本部長の瀬戸慶太氏が、アンカーの2020年モデルについて紹介した。ブリヂストンはオリンピック・パラリンピックを通じてサイクルスポースの「普及」と「強化」を行なっているが、ANCORでは、2020年モデルから「レーシングライン」と「アクティブライン」という2つのラインで進めるという。
レーシングラインは世界最強で挑戦する競技用バイクのシリーズで、アクティブラインは新たな挑戦、新たな出会いを求める、いわばパートナーとなる自転車のシリーズとなる。
レーシングラインは、トップアスリートなどへのプロ用機材と市販モデルがあるが、ブランドデザインを統一化。機材としてのパフォーマンスも同じものを提供する。プロが試合で使うようなフラグシップとなる「RS9」は「RS9s」として新設計した。
瀬戸氏は「PROFORMATを活用し、より速く、レースの勝負どころで0.1秒でも前に行くよう、カーボンをPROFORMATで再解析。急激にスピードを上げるときの後輪のバタつきを抑え、前後輪の剛性のバランスを修正して、より戦闘力の高いレーシングバイクとして生まれ変わらせることができた」と説明した。RS9sは一般には9月下旬の発売だが、すでに大会ではブリヂストンの選手によって好成績を収めている。
一方のアクティブラインは、スポーツバイクの楽しみ方が多様化する中で、より気軽で自由に楽しめることを提唱したもの。フレームの設計についても瀬戸氏は「PROFORMATの活用の仕方を少し変え、より快適に、上質な走りになるよう、フレームの設計をチューニングしている」と説明した。
アクティブラインは、ハイエンドのカーボンモデルからクロモリ、入門用のアルミのモデルまでラインアップしているが、瀬戸氏は「アルミという素材は一般的に硬くなりがちなんですが、PROFORMATによってしなやかで快適な乗り心地を実現している」とし、アルミフレームの新製品では、ディスクブレーキ搭載の「RL6D」、エントリーモデルの完成車で7万円台から用意した「RL3」を紹介した。
推進力の違いを感じ、機材の進化を感じた新モデル
続いては、日本自転車競技連盟からトラック委員会委員長の中野浩一氏と、TEAM BRIDGESTONE Cycling所属の窪木一茂選手、橋本英也選手が参加したトークセッション。両選手から新しい機材についての感想やオリンピックにかける意気込みが語られた。
中野浩一氏は、まずオリンピックを戦う自転車がブリヂストン製になったことについて「東京でオリンピックがあると決まった時点で、日本の選手が日本の機材で世界で活躍する、そして、金メダルを取るというのが1番価値のあることだと思っていた」と語り、「ようやく世界で戦えるような選手の脚力と機材が近づいてきた」とした。
2人の選手からは新機材の感想を語られ、窪木選手は「1番は推進力の違いですが、重量でも大きな違いを感じた」とし、橋本選手は「(規定で)最低重量6.8kgなんですが、それに合わせて作られているようなバイク。ジオメトリーが中距離用にモデファイされ、ポジションの自由度もよくなっている」と感想を述べた。
オリンピックへ向けての意気込みを聞かれると中野氏は「前回の強化委員長をやっていたときは、『メダル取ります』なんて本気で言ってなかったですが、今となっては、本気で来年はメダルが取れるところまで来たと思っています」「みなさんに金メダルを取るところを見ていただきたいと思っていますので、応援よろしくお願いします」と語った。
窪木選手は「一生に1度の東京オリンピックだと思いますし、これだけ多くの関係者の方が支えてくれているので、来年、素晴らしいオリンピックにできる自信があります」と語り、橋本選手は「オリンピックを盛り上げる一翼となるよう、チームブリヂストンとしても頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします」と語った。