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テスラ、新型「モデル Y」についても言及されたトークイベント

モデル 3納車開始、テスラ 東京ベイ スーパーチャージャー開設記念

2019年10月2日 開催

左から、トークショーに登場したアユダンテ株式会社 代表取締役 安川洋氏、應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授 夏野剛氏、テスラモーターズジャパン マーケティングマネージャー 前田謙一郎氏

 テスラモーターズジャパンは10月2日、「モデル 3」の納車開始、そして東京都江東区のA PIT AUTOBACS SHINONOME駐車場内にテスラ 東京ベイ スーパーチャージャーステーションをオープンさせたことを記念し、初期からテスラオーナーである夏野剛氏(慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授)と安川洋氏(アユダンテ株式会社代表取締役)を招いてトークショーを開催した。

「モデル Y」はもう少し先?

 トークショーに先立ち、テスラモーターズジャパン マーケティングマネージャーの前田謙一郎氏より現在のテスラやモデルラインアップについて説明がなされた。現在テスラでは、0-100km/hを2.6秒で加速するスポーツセダンで、航続距離も610kmある「モデル S」、ユーティリティ性を高めたSUVの「モデル X」はSUVらしからぬ0-100km/h加速2.9秒を記録。そして今回納車が開始されたモデル 3も、0-100km/h加速は3.4秒で、「インテリアは非常にシンプルなデザインを採用し、ミニマムなクルマです。サイズも全幅は1850mmと日本の立体駐車場にも問題なく入るでしょう」と説明。

テスラ「モデル 3」

 また、アメリカでは、2019年に新しく発表された「モデル Y」というミディアムSUVを展開。同時に電動トラックの「セミ」や次のニューロードスターの発表も行なわれている。モデル Yに関しては「アメリカのサイトでは予約受注が始まっており、2020年から生産が開始される予定です。日本に関しての導入は未定」としながらも、準備は進めている様子だ。

 また、テスラは全てのモデルで常時ネットに接続されており、ワイヤレスでのアップデートもそこで行なわれている。日本ではまだだが、先日バージョン10になり、車内でNetflixを使って動画を見られたり、Spotifyで音楽を聴くことができたりするようになった。また、ゲームやカラオケもできるという。前田氏は、「これはふざけているわけではなく、電気自動車には充電が必要です。その充電中の30分~40分の間を過ごすのにロジカルな機能として採用されました」とコメントした。

テスラのモデルラインアップ

“新し感”があるのがテスラ

 さて、トークショーでは、司会進行の前出の前田氏のもと、実際にテスラを使っての印象や充電状況などについて語られた。

前田氏(右)が司会進行を務め、夏野氏と安川氏がトークショーを実施

 夏野氏は、「2014年にイーロン・マスクが来日した時に、試乗をしたら会わせてもらえるという話を聞き、試乗しに行ったのです。そうしたらすごく気に入ってしまって。“一応”僕の一存では買えないので翌日に奥さんと子供たちを連れて行ったら、みんな気に入って注文しました」と当時を振り返る。さらに「途中で『P100D』が出たので買い換えました」とかなり気に入っている様子だ。

 夏野氏が関わるIT分野を踏まえてテスラの特徴について尋ねられると、「正直最近のクルマはそれほど“いけてない”と思っていました。その理由は形も決まったものになってきていますし、やり尽くされた感があって……。テスラの前はずっと大手ドイツメーカーのセダンとクーペスタイルを融合したクルマに乗っていました。僕はスタイル重視なのです。しかし、あまり“新し感”がないなと思っていた時にテスラに出会いました。

 最初は電気自動車だしゲテモノかなと思っていたのですが、試乗した時の印象はその“新し感”があったのです。これはiPhoneが最初に出てきた時の感覚と同じで、こういうのが欲しかった! とまさにそういう感じで即買いしました。何しろ新しい、まったく新しいものが出てきたな、こういうのが欲しかったのです」と述べる。

 ただし、購入に際しては「前金はそこに置いてあるコンピューターで勝手にやってくれ、しかもPayPalで払わされたのは衝撃的でした(笑)。自分でオペレーションして、自分でアカウントを作ってPayPalで50万円払いました。こういう時代かと思ったものです」と別の面での驚きもあったことを明かした。

アップデートで古くならない

 多くのクルマは購入した瞬間、あるいはデビューした瞬間から古くなっていくものだ。しかし、テスラの場合はアップデートなどがあり、常に古くなるとは限らない。夏野氏は、「これは面白いですね。アップデートはしょっちゅうあるので、何がついたかあまり見ていないのですが、ある時クルマを停めている時だけカメラのマークが出るようになりました。『なんだこれは? どう見てもカメラだなぁ』と思ってマニュアルをオンラインで見てみたら、セントリーモードといって自宅や勤務地以外の所に止めている時は、車載カメラが監視カメラに切り替わり、ビデオレコーディングしているのです。まさに“こういうのが欲しかった”という機能が後から実装されてくるのはとてもよいですね。びっくりしました」と語る。ただし、「このくらいはメールぐらい書いとけよと思うのですけどね。でもメールも来ないし勝手にアップデートされますから。でもメールぐらいあってもいいでしょう。せっかくの機能なのにもったいないですよね。気付くまでに2週間くらいかかりました」と述べ、前田氏がたじたじになる一幕も。

これまでに行なわれたオンラインアップデート

利用できる充電施設数が最も多いテスラ

 一方、安川氏もテスラオーナーであり、かつ、EVsmartという、電気自動車(EV)またはプラグインハイブリッド自動車(PHEV)ユーザー向けの、普通・急速充電器検索サイトも運営している。「これは無料のアプリで、口コミを単純に集めるものではなく、参考にしながらも、われわれスタッフが直接電話をし、そこに充電設備が存在し、かつ利用が何時から何時までできるのか、どういう条件で利用できるのかを掲載しているものです」と紹介。また、「ガソリンスタンドと充電スタンドはかなり違うもの。例えば、ガソリンスタンドは大きな看板が立っていますので誰でも見つけられますが、充電ステーションは極端な話、コンセント1つのところもあります。これをクルマに乗っていて見つけるというのはほぼ不可能に近い。そこで、その施設はビルの裏側にあるのか、看板は立っているのか、立体駐車場であれば例えば地下3階のC3の辺りにあるとか、そういう具体的なレベルの情報が無いとたどり着けません。そういったところまで気をつけて情報提供しています」と実際に利用者の立場に立って掲載していることを強調。

安川氏

 その充電施設とテスラとの関係について安川氏は、「日本は面積比率ではおそらく世界一の密度で電気自動車の充電設備がある国です。日本では充電規格は大きく分けると2種類。1つはCHAdeMOという急速充電規格。もう1つは普通充電規格です。どちらもグローバルスタンダード、全世界的に有名な規格ですが、これに加えてテスラはスーパーチャージャーとディスティネーションチャージャーというテスラ専用の設備も合わせて使えるという面白いポジションを築いています。簡単に言うと、テスラが使える充電スタンドの数が日本国内で最も多いということですね。つまり、東京はオープンしたばかりの東雲のスーパーチャージャーがありますので24時間いつでも充電できますし、それ以外に旅行とかに出ても、途中にも必ず充電器があるという環境を構築しています。これは自動車メーカーで唯一のやり方といってもいいでしょう」と評価する。

 その充電に関して夏野氏は、「2年前に家を建てたのでその時には充電器をつけましたが、その前の3年間はマンションで、機械式駐車場でしたから充電設備がない時にテスラを買いました。オフィスがあるビルには充電器がありましたし、行く先々のビルにほとんど充電器はありますので、1回も不安に感じたことはなかったですね。遠出は軽井沢とかしか行きませんし、そういったところにも普通に充電器はありますので、充電で困ったことは一度もありません」とのことだった。

先入観を取り除くことが重要

 最近ではメルセデス・ベンツが新規の内燃機関の開発を止めるという発表などもあり、今後はEVがどんどん伸びていくと予想され、日本でもピュアEVのラインアップも増えてきた。今後、日本市場でEVを広めていくにはどういったことが必要かと問われ、夏野氏は「先入観をいかにきちんと外していくかでしょう」と即答。「電気の方が不安だと思うような高齢の方もいらっしゃるでしょう。しかし高齢ですからそもそもそれほど(距離は)乗らないでしょうとか、そういった啓蒙も必要だと思います。僕は思うのですが、今時、内燃機関のクルマに乗っているのは20世紀人です。この21世紀、すーっと静かに快適で乗ることができるEVがあるのに、エンジンがついているクルマに乗っていること自身が前世紀の遺物を使っているんだという概念になっていくと思います。それをいち早く先取りすることが大事だなと思っています」と自説を解く。

夏野氏

 また安川氏も、「会社の社員にもモデル 3に乗ってもらっているのですが、若い人は、ガソリン車は少し面倒くさいと思っている部分があるようです。電気自動車は乗り出したときに、90%充電が完了していても、空っぽで返してもらって構いません。会社の駐車場で充電してしまえばいいのですから。つまりガソリンを入れるという心配がいらないのですね。しかもテスラでしたらより多くのところにある充電施設が使えますから、若い人たちのクルマ離れとは言われているものの、楽しみの拡張として、それはカーシェアなのかもしれませんが、電気自動車の楽しみというのを実感してもらえるのではないかなと思います」と述べる。そのEVの楽しみとは、「UX(ユーザーエクスペリエンス)などになると思います」と安川氏。

日本の自動車業界はテスラに学べ

 UXに関して夏野氏は、「ガソリン車か電気自動車かという問題ではないように思います。ガソリン車だって今やほとんどは電装部品でできていますから、何でテスラのUI(ユーザーインターフェイス)ができないんだろうと疑問に思っているのです。本当に日本の自動車業界はテスラに学ぶべき。本当にインパネ1つがオールドファッション。こんなすごい時代にいるにも関わらず、手元のスマホのカーナビの方が解像度が高いというのはどういうことなんだ! なんでいまだに不器用な音声認識で、しかも文字の形が綺麗じゃないフォントで、しかもなぜか方角と残り距離の表示が右ハンドルなのに右側に表示されず左側にあって視線の移動が長い。設計そのものが20世紀です。これを未だに作っているということを恥じてないのかと思いますね。一方のテスラは、きちんと今のIT業界の最先端の技術で作ったらこうなるだろうなというUXになっています。これはすぐにでも真似られるのになぜ真似ないのかなと本当に疑問です」と今の新型車に苦言を呈した。

 また安川氏も、「充電という面では、国産のCHAdeMOなどではどうやるの? から始まります。テスラの充電器では誰も説明せずとも、なんとなくここを押すのかなとか、ランプがグリーンに変わったから大丈夫だとか直感で操作ができます。iPhoneもそういう使い方をしますよね。つまり説明しなくても使い方が分かるので、マニュアルがいらないのです。クルマの機能もマニュアルを見なくても、全部の機能がタッチパネルを触っただけでだいたい理解できるのです」

「充電のハンドル1つとっても先端などを非常に綺麗に加工してあります。USBケーブルのタイプCなどは少し出っ張りがあって、挿す時に引っ掛かりがあります。しかしAppleのLightningコネクターなどはすっと挿せますよね。何が違うかというと加工です。自動車業界でそこまでやっているのは実はテスラだけ。テスラは本当に引っかからないですっと挿せますし、抜く時もすっと抜ける。位置やケーブルの引き回しなどもきちんと調整されています。課金についてもテスラの場合はケーブルを刺すだけで自動的に課金されますし、抜けば課金が止まる。そのあたりのところは非常によくできていると言わざるを得ないですね。テスラは自動車メーカーで唯一自社で充電設備を設置しているということもあるのでしょう」と語った。

 最後に夏野氏から「家の周りはテスラばかりになりました。テスラ同士ですれ違うとちょっと手を振ってみたり(笑)。ちょうど5年くらい前のカリフォルニアの状態に広尾周辺はなってきていると思います。もっともっと普及したらいいなと思いますね」とまとめた。