試乗インプレッション
テスラ「モデル 3」のシングルモーターとデュアルモーターを乗り比べ
0-100km/h加速3.4秒!!「この価格でこれほど速いクルマはほかに心当たりがない」
2019年7月12日 05:00
鳴門にスーパーチャージャーステーションが開設
7月4日、徳島県鳴門市の神戸淡路鳴門自動車道 鳴門北インターチェンジからクルマで3分ほどの場所にあるリゾートホテル モアナコースト内に、テスラ独自規格の急速充電施設であるスーパーチャージャーステーションがオープンした。北は盛岡から南は福岡まであるスーパーチャージャーステーションは、これにて全国で21番目となり、これによりテスラ車での四国へのアクセスが飛躍的に便利になる。
テスラの場合、スーパーチャージャー以外にもテスラ専用のデスティネーションチャージングがあり、もちろんCHAdeMO(チャデモ)や普通充電器も使うことができるわけだが、件のスーパーチャージャーは圧倒的に充電スピードが速いのがポイントだ。その能力は実に30分で270km分。出力が大きいので短時間の充電で長距離の走行が可能である上、テスラ専用なので充電するための特別な機器は必要ない。
充電するにはワンタップでポートを開いてコネクターを接続するだけという手軽さ。実際に使ってみても、チャデモに比べてコネクターがはるかに小さく軽いので、煩わしい思いをすることなく充電できるのもありがたい。実にスグレモノだとつくづく思う。さらに全国7500基以上あるチャデモ充電器や、全国1万4900基以上ある普通充電器でも充電できるように変換アダプターも準備されているので、状況に応じて使えば、もはやテスラで長距離の旅行をするにも不自由を感じることはほぼないだろう。
そして、鳴門スーパーチャージャーステーションのオープン前日、同地を拠点に、現在受注受付中の「モデル 3」を試乗することができた。これまで「モデル S」や「モデル X」にはたびたび触れる機会があったが、モデル 3に乗るのは筆者も初めてだ。
驚くほどシンプルなインテリア
いざ実車と対面すると、実際はそれほど小さくないのだが、モデル Sやモデル Xを見慣れた筆者にとっては、モデル 3はかなりコンパクトに見えた。また、テスラというと高価なイメージがあるところ、モデル 3の車両価格は511万円からと、日産自動車「リーフ」やBMW「i3」と比べても大差はない。そうと思うと一気に現実味をおびて感じられる人も大勢いることだろう。
クルマに乗り込めば、シンプルさを極めたインテリアにも驚かされる。メーター類やスイッチ類も何もなく、あるのは中央に設置された横長の15インチタッチスクリーンのみ。ここに走行に必要な情報などすべてが表示される。さらにタッチパネルになっていて、空調やシート、ドアミラーなどの調整もこちらで行ない、必要に応じてステアリングホイールのスポークに配された丸い回転式のスイッチも使う。ハザードランプは頭上にスイッチがある。
ところで、既存モデルではレバー類などにメルセデス・ベンツの部品が使われていたが、モデル 3はそうではなくなったことに気づいた。加えて、既存モデルはインテリアトリム類に高級な素材が用いられていたものの、立て付けやチリの合わせがよろしくない部分も見受けられたところ、量産体制が確立されてかその印象も払拭された。
15インチディスプレイに映し出せる情報は多岐にわたる。エネルギーに関する諸々はもちろん、カメラが捉えた後方の状況を大きく映し出したり、車両周辺の交通状況や、80cm以下であれば障害物までの距離を正確に表したりと、さまざまなことができる。画質も非常にきれいだ。
エアコンの送風口がないと思ったら、ダッシュボードを横一文字に配された薄い溝がそれだというから驚いた。風をどこからどんなふうに出したいかなどもディスプレイ上で細かく調整できる。これも画期的だ。
モデル Sと相似の印象を受けるが、モデル Sのようにハッチバックではなく独立したトランクを持つのもモデル 3の特徴だ。シートの座り心地も申し分なく、このフォルムから想像するよりも室内空間が広いことにも驚いた。センタートンネルの張り出しがないので、前後席とも足下が広々としている。ただし、今回の試乗車の真っ白なシートは日本には入ってこないらしいのがちょっと残念ではある……。
座面が低めなリアシートは成人にとってはヒール段差が足りない気もするが、そのぶん頭上は筆者が座っても空間が確保されている上、独特のピラーの位置と広大なサンルーフにより、他車でかつて体験したことのないような未知なる開放感を味わうことができることにも注目だ。
デュアルモーターは0-100km/h加速3.4秒の実力
日本に導入されるのは、デュアルモーター4WDの「パフォーマンス」(655万2000円)とシングルモーター2WDの「スタンダードレンジ プラス」(511万円)という2モデルとなるが、今回の試乗会ではスタンダードレンジ プラスの用意がなく、代わりに同じ2WDの「ロングレンジ」に試乗した。なお、今回の試乗車はいずれも正式な日本導入モデルとは一部仕様が異なることをご了承いただきたい。
限られた時間で一般道のみドライブしたためオートパイロットを試すことはできなかったのだが、走りの実力のほどをうかがうには十分なインパクトがあった。航続距離が長いうえにデュアルモーターで動力性能の高いパフォーマンスの加速はやはり刺激的だ。0-100km/h加速3.4秒はハンパではない。標準モードでも十分なところ、SPORTモードを選ぶとより瞬発力が増して、圧倒的な加速感を味わわせてくれる。思えば、この価格でこれほど速いクルマというのも、ほかに心当たりがない。
それに比べると、シングルモーターのロングレンジの加速はいくぶん穏やかで、クルマのキャラクターに合わせてSPORTモードも設定されていない。それでもEV(電気自動車)らしいレスポンスに優れ、トルクフルな走りは十分に持ち合わせているので、テスラに乗る醍醐味は十分に味わうことができる。
そして、いつもながらテスラ車にはハンドリングのよさも感心しきりなのだが、モデル 3も期待どおり。重心が低くマスが中央に集中している上、クルマが小さくて軽い分モデル Sと比べても反応感度が高い。安定性も高く、操舵に対する応答遅れもなく、前述の加速性能と合わせて本当に気持ちよく俊敏に走れる。
フロントにもモーターを搭載した4WDのパフォーマンスでも十分機敏だが、リアモーターのみの2WD ロングレンジは走り出した瞬間からフロントの軽さを直感する。ワインディングをちょっと攻めてみても、操縦安定性に優れる4WDに対して、2WDのほうが回頭性は鋭く、走りのスポーティさでは上まわる。絶対的な速さはモーター次第だが、よりドライバーにとってエキサイティングな走りを楽ませてくれる素質があるのは2WDと言えそうだ。
そんなわけで今回はチョイ乗りだったが、第一印象は上々だった。すでに充電網も十分に整って、臆することなく遠乗りできるようになったことだし、モデル 3とはいずれあらためてじっくり向き合ってみたいと強く思った次第である。