試乗インプレッション

世界で最もパワフルな直列6気筒ユニットを搭載する新型「X3 M」「X4 M」は、完全なるスポーツモデルだった

M3やM4の次期モデルを差し置いての搭載はスポーツモデルとしての自信の表れ

世界で最もパワフルな直列6気筒ユニット搭載

 フランスで過去最高の気温が記録され、メキシコでは大量の“ひょう”が降り積もる――つい最近も聞かれた、こうした異常気象のニュース。こうした類の話題とも紐付けをされて、地球温暖化を脅威に感じる人々の数は世界で増す一方だ。

 かくして、温暖化ガスの発生に直結する「モノを燃やす」という行為そのものが“悪”と見なされる雰囲気も日に日に強まる中、それに呼応をするように厳しさを増す一方なのが、自動車の燃費規制。

 その対策の切り札として電動化が注目され、しかしそうしたニュースばかりが伝えられることには、もはやちょっとばかりの食傷気味――どうやらこのあたりが、昨今の自動車業界を取り巻く状況と言えそうだ。

 そうした中にあって「モデルチェンジの目的は、とにかくパフォーマンスのアップにあった!」と、何とも潔いフレーズと共に発表をされたのが、BMW高性能モデルの企画・開発を担当するBMW M社謹製の「S58」型と呼ばれる新型エンジン。ツインターボ付きの3.0リッター直列6気筒という基本デザインは、現在の「M2」や「M4」シリーズが搭載する「S55」型ユニットと同様。だが、開発陣によればこれは「完全に新開発された、Mモデル用の新世代パワーユニット」であるという。

「世界で最もパワフルな直列6気筒ユニット」とも謳われるこの新しい心臓が、実は1気筒当たり500ccという排気量にこだわった最新のBMW“モジュラー・エンジン”をベースとしたものであることは、前述のエンジン型式名称や91mmというボアピッチの値などからも明らかである。

 一方で、恐らくはこの先に登場する次期「M3」や「M4」、そして「スープラ」に搭載される可能性すらも考えるこうした生粋のスポーツ・エンジンが、まずは“Xモデル”からデビューを果たすということに「今」という時代を感じさせられるというのも、この新しい心臓に対して抱く率直な印象でもある。

今回試乗したX3 MとX4 MはBMW Mが新開発した直列6気筒DOHC 3.0リッターツインターボエンジンを搭載し、最高出力353kW(480PS)/6250rpm、最大トルク600Nm/2600-5600rpmを発生。X3 M コンペティション/X4 M コンペティションでは最高出力375kW(510PS)/6250rpm、最大トルク600Nm/2600-5950rpmを発生する

 そんな新しいMのエンジンが真っ先に搭載されることになったのは、ボディ骨格やランニング・コンポーネンツを共有するX3/X4という2つのモデル。先日「X7」がローンチされたことで、今や“1”から“7”までが隙間なく揃うことになったのが、“X”の記号で始まる車名が与えられたBMWのSUVシリーズだ。

 もっとも、すべてのモデルがライバルに対してよりアクティブでダイナミックなキャラクターの持ち主であることを標榜するこのブランドの作品が、いわゆるSUVに対して“SAV”もしくは“SAC”なる固有の記号を用いたプロモーションを行なっているのはご存じの通り。X3とX4ではSport Activity Vehicleの略であるSAVに相当するのが前者、Sport Activity Coupeの略であるSACに相当するのが後者とされている。

 ちなみにX3にはM40d、X4にはM40iと、これまでも特にスポーティさを売り物とするグレードが存在してはいたものの、それらはいずれもサーキット走行まで念頭に開発された純粋なMモデルに比べると、走りのパフォーマンスは1ランク抑えられた、いわゆる「Mパフォーマンス」にカテゴライズされる。実は、これまでのX3/X4には、ピュアなMモデルであるX5 M/X6 Mの弟分に相当するモデルは存在していなかったのだ。

 それゆえ、「新開発エンジンを搭載」というトピックと共に注目されるのが、X3/X4というより多くのユーザーが見込めるミドルクラスへの純粋なMモデルの設定。当然、その走りの実力にも否応なく興味が集まることになる。

ミドル・クラスSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)の「X3 M」(写真はX3 M コンペティション)のボディサイズは4730×1895×1675mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2865mm。日本での価格はX3 Mが1268万円、X3 M コンペティションが1368万円
エクステリアでは、キドニーグリルにMモデルを象徴するダブルバーを採用したほか、エクステリアミラーに空力性能を向上させるダブルリッジデザインのMミラー、さらにサイドシルにはMロゴを装備。刺激的なサウンドを響かせる4本の直径100mmのブラック仕様テール・パイプを備えたMスポーツ・エキゾースト・システムはコンペティションモデルに採用
X3 M コンペティションのインテリア

 専用の強心臓が与えられ、名実共に「X3とX4のホッテスト・モデル」というキャラクターが明確になったX3 MとX4 M。そんな両車には、排気系やソフトウェアに手が加えられたことで30PS増しの出力を発生するエンジンを搭載し、よりスポーティで充実した装備を標準とする「コンペティション」の仕様も用意された。

 アメリカはニューヨークにも近いニュージャージー州を基点とした国際試乗会に用意されていたのはコンペティション。X3 Mは一般道、X4 Mは一般道と1周5kmを超える本格的なサーキットコースがテストドライブの舞台として設定されていた。

 キドニーグリルやドアミラーなどがハイグロス・ブラックで仕上げられ、4本出しのテールパイプが採用されるなど、各部に“Mデザイン・エレメンツ”が用いられたエクステリアのデザインは、なるほどベースモデルを大きく凌ぐ走りのイメージを演出。一方で、特にX3 Mでグレー系のボディカラーを選択すると、一見ではとてもサーキット走行などとは無縁の、“羊の革を被ったSUV”といった雰囲気が強かったのも興味深いポイントだ。

ドニントン・グレーカラーのX3 M

 もっとも、足下に視線を落とせばそこに履くのは40%偏平で21インチと薄く大径のスポーツシューズ。フロントが255、リアが265幅と前後異サイズで、他のMモデル同様に敢えてランフラット構造のアイテムを選択していない点からも、見る人が見ればそれがただ者ではないことは明らかだ。

X4 Mのボディサイズは4760×1925×1620mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2865mm。写真はX4 M コンペティション
X4 M コンペティションのインテリア

すこぶる上質なフットワークテイスト

 まずはX3 Mでアメリカのカントリーロードを走り始めると、そこで最初に感じさせられたのは、ベースのX3とは別感覚のボディの強靭さと、予想と期待を大きく上まわるしなやかな乗り味だった。

 実はX3 M/X4 Mではハイパフォーマンスなエンジンを搭載するにあたり、バルクヘッドに近いフロントストラットまわりやリアアクスル周辺を中心に、ブレースの追加などによるボディの補強策を実施。これらに加え、専用チューニングが施されたサスペンションに電子制御式の可変ダンパーを標準装備することなども功を奏してか、まるで金属の塊から削り出したかのように剛性感が高く、瞬時に振動を減衰させてしまうボディや、しなやかでストローク感に富んだサスペンションの動きが、すこぶる上質なフットワークのテイストを味わわせてくれることになったのだ。

 加えて、そうした上質さを後押ししてくれたのが、こちらも予想をはるかに超えることになった静粛性の高さ。特に、前述のようにファットなシューズを履くにも関わらずロードノイズが思いのほか小さいことが、まずはスポーティさよりも高級さを演じてくれたというのが、走り始めての第一印象となったのである。

 ちなみに、こうした印象は後に乗り換えたX4 Mでも同様で、「X3 MとX4 Mの間に違いはほとんど認められない」と表現してもよい。

 ただし、前述のように今回サーキット走行にも供されたのはX4 Mのみ。重量スペックはまったく変わらない両モデルだが、タイヤグリップのすべてを使い切ってコーナリングするような場面になると、さすがに全高が55mm低く、リアのトレッドも30mm広いX4 Mの方が、ハンドリングや安定性の点で多少有利ということになっていたかもしれない。

X3 MとX4 Mは完全なるスポーツモデル

 そんなX4 Mでのサーキット走行で感動モノだったのは、予想した通りの類まれなるエンジンのパフォーマンスだった。

 510PSを6250rpm、600Nmを2600-5950rpmで発生するという、ターボ付きにしてなお高回転・高出力型であることが明確なエンジンのキャラクターを踏まえてチューニングされた、“Mステップトロニック”を謳う8速ステップATとの組み合わせで実現される0-100km/h加速は、わずかに4.1秒というデータ。

 しかし、そうした絶対的な加速力もさることながら、低回転域からトルキーで、なおかつ回転数が上がるほどに威勢のよさを強めていくという、いかにもスポーツエンジンらしいフィーリングが何とも魅力的なものだった。

 もちろん、直列6気筒ユニットならではの全域での回転の滑らかさや、回転の高まりに伴って周波数を高めていく澄んだサウンドも、スポーツ派ドライバーにはこの上ないプレゼント。パワフルにして滑らか、まさに官能的そのものの実力を知ってしまうと、718 ボクスターやケイマンに積まれるポルシェのフラット4ユニットの出来栄えすらが、何とも物足りなく思えてしまったほどだ。

 同時に、その自在なハンドリングの感覚も、サーキット走行に華を添える大きな要因であると感じられた。

 中でも、4WDシャシーの持ち主でありつつも、スポーツプラスの走行モードを選択することでスタビリティ・コントロールやトラクション・コントロールの介入度合が抑制された際のテールハッピーな挙動は、腕の立つドライバーにとっては大いに新鮮でかつ魅力的と映るに違いないダイナミックな感覚。さすがに「M5」のようなFRモードこそ用意しないものの、コーナー出口までドリフト状態を維持していくことを可能にしていたのは、後輪側に駆動力のバイアスをかけることを念頭に設計された、純粋なるMモデルならではという印象でもあったのだ。

 そんなX3 MとX4 Mは、もはやスポーティという形容では飽き足らず、完全なるスポーツモデル。M3やM4の次期モデルを差し置いて、まずは新しいMの心臓が搭載されることになったのは、そんなピュアなスポーツモデルとしての自信の表れでもあるに違いない。

【お詫びと訂正】記事初出時、パワーユニットの表記に一部誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

河村康彦

自動車専門誌編集部員を“中退”後、1985年からフリーランス活動をスタート。面白そうな自動車ネタを追っ掛けて東奔西走の日々は、ブログにて(気が向いたときに)随時公開中。現在の愛車は2013年8月末納車の981型ケイマンSに、2002年式のオリジナル型が“旧車増税”に至ったのを機に入れ替えを決断した、2009年式中古スマート……。

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