インプレッション

BMW「X3」(2017年フルモデルチェンジ/ポルトガル試乗会)

新型X3がデビュー

 スポーツ・アクティビティ・ビークル、すなわち“SAV”なる独自の表現で、自らが生み出すモデルのダイナミズムがライバルよりも秀でていることを暗にアピールするBMW発のSUV。

 車名の最初に「X」の文字が与えられたそのシリーズ内にあって、2000年登場の初代「X5」に遅れること3年でその弟分として初めてラインアップに加えられた「X3」が、2度目のフルモデルチェンジを受けた。

 この9月に開催されたフランクフルトモーターショーで初披露された新型X3は、翌月には日本でも早々に受注をスタート。2017年末とされたその上陸に先駆け、ポルトガルはリスボン近郊で開催された国際試乗会で、早速その仕上がりをチェックした。

 従来型に対して全長とホイールベースはやや延長されたものの、全幅はわずか10mmの拡大。そうしたサイズ感とともに、エクステリアのデザインも見てのとおりに明確なキープコンセプト。率直なところ、それゆえ斬新さには欠ける印象が否めない一方で、初代、そして2代目とこれまで築き上げてきた“X3なりの立ち位置”を、改めて強くアピールしていくには好都合な戦略でもあるはずだ。

 前述のように、大きくは変えられなかったサイズは、兄貴分であるX5との明確な差別化を見据えてのものであるはず。その上で、このところ増加の一途を辿るライバル各車との競争力も念頭に決定されたのが、「新しいX3の大きさ」であるに違いない。

第3世代となる新型X3は、日本では10月19日に受注を開始し、直列4気筒2.0リッターターボエンジン搭載車、直列4気筒2.0リッターディーゼルターボエンジン搭載車の2モデルを展開。写真は本国で展開される直列6気筒3.0リッターディーゼルエンジンに8速ATを組み合わせる「X3 xDrive30d」。エクステリアでは大型化したキドニーグリルをはじめ、存在感のある六角形のヘッドライト、スポーティさを強調するエア・インレットなどを採用した。アプローチアングルは25.7度、デパーチャーアングルは22.6度、ランプブレークオーバーアングルは19.4度とアナウンスされている
直列6気筒3.0リッターディーゼルエンジンの最高出力は195kW(265PS)/4000rpm、最大トルクは620Nm/2000-2500rpm。0-100km/h加速は5.8秒、最高速は240km/h
優雅さが感じられる新型X3のインテリア。エクステリアと同様、六角形のモチーフなどが用いられた
ラゲッジルーム容量は550Lで、後席を倒すことで最大1600Lまで拡張可能

 かくして、従来型と見比べても“コンサバ”な印象が強いスタイリングに対して、インテリアはより刷新の度合いが大きいのが新しいX3でもある。ディスプレイが中央部分にビルトインされていた従来型のダッシュボードに対して、より大型化した画面をダッシュ中央部に立て掛けた新型のレイアウトは、明らかによりモダンなテイスト。

 インターネットとのコネクションを含め、「これでもか」とばかりに多彩なインフォテイメントのコンテンツが用意されるのは、今やプレミアム・ブランド発の作品では常識化しつつあるものだ。

 その操作のすべてを画面上のタッチには頼らず、空調やオーディオ用には専用のハードスイッチを残しながら基本はコンソール上のダイヤル式コントローラーを用いて行なう方式としたのは、「操作時に画面を注視する必要がない」という安全上からも、高く評価したくなる部分。

 後席使用時の550Lから、40:20:40の分割可倒式シートバックをアレンジした際には最大で1600Lまで拡大可能なラゲッジスペースを含め、キャビンは大人4人が長時間を移動するのに十二分な空間だ。

ガソリン仕様の直列6気筒3.0リッターエンジンに8速ATを組み合わせる「X3 M40i」
ファイトニック・ブルーカラーが目をひくM40iのエクステリアでは、ブルーに塗装されたブレーキキャリパーや20インチ鋳造アロイホイールなど専用装備が与えられる
直列6気筒3.0リッターエンジンの最高出力は265kW(360PS)/5500-6500rpm、最大トルクは500Nm/1520-4800rpmを発生。0-100km/h加速は4.8秒、最高速は250km/h
M40iのインテリアではスポーツステアリング、スポーツシート、アルミニウム・ロンビクル・インテリア・トリムなどを標準装備

 実は現在はアメリカ工場製で、「2018年には中国と南アフリカ工場でも生産を開始する予定」というモデルだが、各部の仕上がりはいかにもプレミアム・ブランドの作品に相応しい上質さ。ヨーロッパ産ではないという不満を抱かされる部分は微塵もなかったことも付け加えておきたい。

快適性が極めて高い6気筒ディーゼル

 日本で当初からの導入が発表されたのは、ともに2.0リッターのターボ付き4気筒直噴エンジンを搭載する、ガソリン仕様の「20i」とディーゼル仕様の「20d」という2モデル。一方、国際試乗会で用意されていたのは「M40i」と「30d」という、いずれも3.0リッター6気筒のエンジンを搭載したガソリンとディーゼル仕様のトップパフォーマーだった。

 基本は特設されたオフロードコースでのチェック用に用意され、残念ながらオンロード上はごくわずかな距離と時間を試せたに過ぎなかった30dだが、そんな一瞬の味見で得られた印象はなかなかだった。バネ下の動きが予想以上に軽やかで、サスペンションの動きもスムーズ。さらには静粛性にも長けていて、快適性は極めて高い。

 直列6気筒エンジンが生み出す緻密なパワーフィーリングもちろん魅力の1つ。耳を澄ませばディーゼルユニット特有の音質も認められはするが、そのボリュームも「囁き程度」と表現できるものだ。

 もはやディーゼルに対するコンプレックスはなくなりつつあるだけに、将来的にはこれはぜひとも日本のラインアップにも加えてほしい1台。そして導入予定の20dも、これに準じたテイストの持ち主であることを期待したい。

ハイパフォーマンスモデル「M40i」にも試乗

 一方、Xシリーズでは初めてとなる“Mパフォーマンスモデル”と紹介されるM40iは、街乗りシーンからワインディング路、そして高速道路に至るまで、いかにもBMWのハイパフォーマンスモデルらしい走りのダイナミズムがまずは印象に残る1台だった。

 スムーズでパワフルなエンジンはもとより、滑らかなスタートと変速を実現させつつ、アクセル操作に対しては機敏でダイレクトな反応を行なう8速ステップATとのマッチングのよさとも相まって、その動力性能はやはりこのモデルの最大の見どころの1つ。

 リアシートに腰を下ろした際には耳に付く排気音が気になったものの、ドライバーズシートに移動するとそのボリュームはより小さく感じられ、むしろサウンドとして心地よく受け取れたりしたところも「やっぱり、ドライバーこそが優遇されるBMW車なんだな」と、いたく納得ができたりもした。

 同様に、リアシートでは常にゆすられ感が強かったその乗り味も、フロントシートへと移動するとフラット感が向上。とはいえ、さすがにそのセッティングはやや硬め。テスト車が標準よりも1インチ増しとなる21インチのランフラットタイヤをオプション装着していたこともあり、ドライブモードを変更して電子制御式のダンパーがより高い減衰力を基本にするよう選択すると、ハンドリングのダイレクト感は高いものの、日常シーンでは「ちょっと辛いかな」と思える乗り味となったのも事実だった。

 こうして、見た目の新鮮さはやや薄味でも、中身はしっかりと進化していることが実感できる新型X3。このモデルと同様に、“CLAR”と呼ばれる新世代のFRベースモデル用骨格が流用されるはずの次期3シリーズの仕上がりにも、いよいよ大きな期待が持てるというものである。

河村康彦

自動車専門誌編集部員を“中退”後、1985年からフリーランス活動をスタート。面白そうな自動車ネタを追っ掛けて東奔西走の日々は、ブログにて(気が向いたときに)随時公開中。現在の愛車は2013年8月末納車の981型ケイマンSに、2002年式のオリジナル型が“旧車増税”に至ったのを機に入れ替えを決断した、2009年式中古スマート……。

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