インプレッション

BMW「X3」(車両型式:LDA-TX20/公道試乗)

見た目以上に中身が進化した“プレミアムミドルクラスSUV”

インテリアのクオリティUPを直感

 自らを「SAV(=Sport Activity vehicle)」と呼ぶBMWのSUVラインアップの中堅モデルである「X3」は、世のプレミアムミドルクラスSUVを代表する1台として、かねてから世界各国で高い人気を博している。都市部で見かけない日がないほど日本での売れ行きも好調だ。そのX3が満を持してモデルチェンジを実施した。このセグメントの開拓者でもあり、いち早く参入したX3ゆえ、今回のニューモデルにてすでに3世代目となる。

 とはいえ、実車を目の前にしてもあまり“変わった”感はない。このところBMWはモデルチェンジにおいてキープコンセプトを念頭においているようだが、X3もまた従来型の面影を色濃く残している。ただし、より大きくなったキドニーグリルや、ボディサイドのキャラクターラインが変わっていることは一目瞭然だ。さらに、フロントのタイヤハウス後方にエアブリーザーが設けられていたり、前後ともランプ類がより先進的な意匠となったことも分かる。

 フロントバンパーは「Standard」と「xLine」を含め、いずれも従来型より開口部が大きくなっているが、試乗した「M Sport」は見てのとおりよりアグレッシブな意匠となる。なお、ボディサイズは全長がやや長くなって4.7mを超えたほかは、全幅、全高ともほぼ変わりはなく、ホイールベースは55mm拡大された。

10月19日に受注を開始した新型プレミアムミドルクラスSAV「X3」。今回試乗したのはスポーティなデザインを採用する「X3 xDrive20d M Sport」で、ボディサイズは4720×1890×1675mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2865mm
エクステリアでは大型化したキドニーグリルとともに、六角形のヘッドライト、ワイドでスポーティな印象を強調するエアインレットを採用。先進のエアロダイナミクス技術により、Cd値0.29を実現しているのもトピックの1つ。足下は19インチアルミホイールに横浜ゴム「ADVAN Sport V105」(245/50 R19)を組み合わせる。M Sport仕様では「M エアロダイナミクス・パッケージ」(フロントエプロン、サイドスカート、リアスカート)、専用のテールパイプトリム(クローム仕上げ)などが与えられる

 一方でインテリアの雰囲気はずいぶん変わって、大幅にクオリティ感が引き上げられていることを直感する。シートやトリムなど各部の素材感を高め、クローム加飾を大幅に増やすなどして仕立てられた上質な空間は、上級機種のX5に対しても遜色ないほどだ。また、従来のビルトインから独立タイプとなったワイド画面ディスプレイは、タッチパネル化によりさらに使いやすくなった。

 ホイールベースの55mm延長により、室内空間は数値以上に広くなった印象を受ける。後席の居住性も余裕があり、たっぷりとしたサイズのリアシートがリクライニングできるようになったことも歓迎だ。前席に対してそれほど座面が高められていないようだが、大開口の電動パノラマサンルーフにより開放感は満点だ。

 荷室の寸法も従来型をほぼ踏襲しており、リアシートを前倒ししたときの奥行きは若干増えている。荷室の両サイドにはレールが設けられており、スペアタイヤレスによりフロア下に容量の大きなアンダーボックスもあるのも重宝しそうだ。

インテリアではクローム加飾を効果的に採用するとともに、リアのドアパネルやセンターコンソールなどに「X」や「X3」のエンボス加工を施して個性を主張。装備面では音声認識やタッチスクリーンが搭載された最新の「iDriveナビゲーション・システム」や、総合テレマティクスサービス「BMWコネクテッド・ドライブ」が標準装備される
パフォーマンスを最適化する「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」では、スタンダートな設定の「コンフォート」、燃料消費量低減に貢献する「ECO PRO」、ダイナミックな走行が楽しめる「スポーツ」の3モードを設定。それぞれでメーターの表示が異なる
リアシートは40:20:40分割可倒式で、ラゲッジスペース容量は後席を折りたたむことで最大1600Lまで拡大できる

静粛性の高さを実感

 日本でもかねてからX3の売れ筋がディーゼルとなっており、新型の導入にあたってもディーゼルが優先されることとなったが、最高出力190PS、最大トルク400Nmと、このクラスのディーゼルでは最高峰のスペックを誇る新しい2.0リッターの直列4気筒ディーゼルは、従来からの変更点として排出ガスの後処理に尿素水を用いたのが大きなポイントだ。

直列4気筒DOHC 2.0リッターディーゼルターボエンジンは最高出力140kW(190PS)/4000rpm、最大トルク400Nm/1750-2500rpmを発生。ディーゼルモデルのJC08モード燃費は17.0km/L

 ドライブすると、低回転域のレスポンスが良好で扱いやすく、レッドゾーンの5500rpmの少し手前までよどみなく回り、従来よりも吹け上がりがスムーズになったように感じられた。欲をいうともう少し力感がほしい気もしたが、音や振動などディーゼルのネガがほとんど気にならないところはさすがは新しいエンジンだけのことはある。クルマ自体の作り込みの進化もあってか、パワートレーン系の発する音のキャビンへの侵入や風切り音なども小さく抑えられていて、静粛性は極めてハイレベルだ。

 なお、日本向けには同じ2.0リッターのガソリン直列4気筒ターボもあり、いずれも8速ATが組み合わされる。駆動方式は4WDとなるが、海外にはある6気筒エンジンの日本導入は現在のところ未定のようだ。

横浜ゴム「ADVAN」がBMWの市販車に初採用

 外見の変化は小さいのだが、プラットフォームは世代交代し、BMWがこのクラス向けに新規開発したものの初出しとなる。これは、現行7シリーズや5シリーズでも非常によい印象を与えた素性のよいプラットフォームとの関係性も深いようだ。

 ドライブすると、ステアリング操作に対する応答性が高く、挙動変化が抑えられて従来型よりも走りの一体感が増している。4輪の接地性も高まり、路面をしっかり捉える感覚も伝わってくる。乗り心地には若干の硬さを感じるものの、おおむね快適に仕上がっている。もう少し煮詰められるとよいなと感じた部分もいくつか見受けられたのだが、アップデートの早いBMWゆえ、そう遠くないうちに改善されることだろうから、詳しくはそのときあらためて述べたい。

 そんな新型X3の走りにひと役買っているのが、横浜ゴムとしてBMWの市販車に初めて純正装着となった「ADVAN Sport V105」だ。幸運にもドライとウェットの両方で試すことができたのだが、ドライでの運動性能はもとより、ウェットグリップが高いことも印象的だった。開発担当に聞いたところまさしくそのとおり。BMWサイドから、ドライのハンドリング、転がり抵抗、ウェットグリップのすべてを、しかもランフラット構造を持ちながら両立させるという高い要求性能が設定され、それを実現するために相当な努力をしたという。苦労の甲斐あって、実際にも走りは申し分なく、高い接地性により小雨の中でもまったく不安なく走ることができた。

 さらにはテレマティクス関連や、部分自動運転を実現した先進安全運転支援システムなど諸々の機能面でも従来型から大幅にアップデートされているのは言うまでもない。見た目よりも中身が大幅に進化していることを、あらためて強調しておきたい。X3がここまでよくなると、もう兄貴分の「X5」でなくても十分に満足できるという人が続出するのではと思わずにいられなかったほどだ。

横浜ゴムとしてBMWの市販車に初めて純正装着されたランフラットタイヤ「ADVAN Sport V105」。タイヤのラベリングは転がり抵抗「B」、ウェットグリップ「a」となる。サイドウォールに刻印される「Z・P・S」の表示はゼロ・プレッシャー・システムの略、☆マークはBMWのために専用開発された承認タイヤであることを示す

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:中野英幸