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フィリップス、医療×Maasを実現する「ヘルスケアモビリティ」公開。12月から運用開始

MONET Technologies、長野県伊那市と協業

2019年11月26日 開催

ヘルスケアモビリティ1号車の前に立つ、左から株式会社フィリップス・ジャパン 代表取締役社長 堤浩幸氏、MONET Technologies株式会社 代表取締役社長兼CEO 宮川潤一氏、長野県伊那市市長 白鳥孝氏

 フィリップス・ジャパンは11月26日、トヨタとソフトバンクの共同出資会社であるMONET Technologies、長野県伊那市と協業してヘルスケアモビリティを完成させ、報道陣に公開した。トヨタ自動車の「ハイエース」ウェルキャブ仕様をベースに一般医療機器を搭載し、看護師が患者のもとに出向き、医師が遠隔でオンライン診療を行なう。

 今回の発表は「フィリップス・ジャパン 2020事業戦略発表会」の中で行なわれたもので、フィリップス・ジャパン 代表取締役社長の堤浩幸氏のほか、MONET Technologiesの代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏、長野県伊那市市長の白鳥孝氏が登壇してヘルスケアモビリティについて語った。

伊那市でヘルスケアモビリティのテスト運用

 日本各地の自治体では、医療従事者の不足や人口の減少と分散などの課題があるが、今回協業した伊那市は東京23区よりも広い面積を持ち、交通手段が少ない一方で外出困難な患者の増加という問題に直面している。

 伊那市のヘルスケアモビリティは1台からスタートするが、看護師が患者宅を訪問し、クルマには心電図モニター、血糖値測定器、血圧測定器、パルスオキシメータ、AEDなどを搭載。医療従事者間の情報供給クラウドで患者情報を医療従事者で共有し、医師とはテレビ電話による問診などのオンライン医療を行なう。

 患者は主に慢性疾患の患者を対象に、オンライン診療を行なう医師が従来から担当していた患者を対象に開始する。ヘルスケアモビリティで対応する患者の人数などはテスト運用を通じて決めていく方針で、地元開業医の連携強化のほか、地域の中核となる病院との連携を通じて事業モデルを確立していくという。

 また、2021年3月末までの実証事業期間において、ヘルスケアモビリティの有効性を証明していく。実証事業期間終了後の2021年4月以降はオンライン医療の高度化、ヘルスケアデータの利活用による地域全体のシステムへの発展など、さらに発展させていく。

 ヘルスケアモビリティの車両についても、まずは標準幅・ロングボディのハイエースを使用するが、増備の際は訪問経路の道幅や搭載する医療機器などによって車種を変えていくこともあるとしている。

ヘルケアモビリティ。ベースは標準幅・ロングボディのハイエースのウエルキャブ仕様
ブルーをベースにしたボディカラー
伊那市と2社のロゴが入る
車内へは左側のスライドドアから乗車する
ステップがある
まずは一般医療機器を搭載する
看護師が立ち会い、医師とは遠隔でやりとりする
診察のベッドは折りたたみ式
ウエルキャブ仕様なので車椅子もリフトで車内に入ることができる
参画した企業など

まさにデジタルトランスフォーメーション

株式会社フィリップス・ジャパン 代表取締役社長 堤浩幸氏

 発表会ではフィリップス・ジャパン 代表取締役社長の堤浩幸氏が、フィリップスのヘルスケアモビリティ構想について説明した。「自宅と病院をどうやってつなげるか、新しいソリューションを考えていこう」とし、そこがベースとなると説明した。

フィリップスのヘルスケアモビリティ構想
フィリップスのヘルスケアモビリティが目指す姿
ヘルスケアモビリティの利用目的

 展開は市場創造、事業確立・拡大、ヘルスケアモビリティ起点の「まちづくり」の3段階で発展させていき、「健康な生活、予防、診断、治療において市民にプラスになることを具体化していく」とした。

ヘルスケアモビリティ起点の「まちづくり」
医療×Maasを実現
相互の役割

 ヘルケアモビリティの第1号車をアンベールすると、堤氏は「医師とオンラインでつながって、連携しながらやっていく。まさしくデジタルトランスフォーメーション」と評価。「まずは世界初でスタートし、すばらしいことで、大きな一歩」と喜んだ。

長野県伊那市 市長の白鳥孝氏

 伊那市では地域医療に課題が多く、自動運転バスやAIタクシーの自動配車サービスの実験をしている。伊那市長の白鳥孝氏は、「新しい時代の医療のあり方を模索させてもらった。10km先20km先に行かなくても健康管理ができたり、Maasというのは地方にとって非常に画期的というか解明的な取り組み」と評価し、期待を寄せた。

MONET Technologies 代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏

 MONET Technologies 代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏は、MONET Technologiesができてからの1年を振り返り、「400くらいの自治体と話をしているが、医療で困っているところがこんなに多いのかと感じた1年」とした。

 ヘルケアモビリティについては「このクルマはまず第一歩。ヘルスケアという領域を超えてない仕様になっているが、本当は移動型クリニック、移動型調剤薬局をやり遂げたい」と希望を述べた。

 また、ソフトバンクの会社ということで移動体通信の第5世代「5G」の活用についてもコメント。「5Gになってくると、より大きなデータ量が運べる通信に変わり、詳細なやりとりが可能になり、ちょっと先になるが東京の医師との連携も可能になる。遠隔で操作しながら患者さんと向き合っていくのは5Gの世界では十分可能」と語った。

フィリップスの事業を紹介

 「フィリップス・ジャパン 2020事業戦略発表会」では、ヘルスケアモビリティだけでなくフィリップス全体の事業についても説明が行なわれた。

 フィリップスは「2030年までに30億の人々の生活を向上させる」をビジョンに掲げているが、「Philips 6.0」としてヘルスケアテクノロジーでリーダーを目指すことや、住民の健康寿命の延伸などのため自治体などと連携するヘルスコンソーシアムを構築すること、医用画像・医療ITソリューションを拡大するとした。

ヘルステクノロジーリーダーを目指す
ヘルスコンソーシアム
医用画像・医療ITソリューションを拡大
新規製品の導入
2020年戦略
事業ドメインの積極拡大

 2020年の戦略はNo.1ヘルステックカンパニーに向け、シームレス・インターオペラビリティの実現する基盤であるヘルスケア統合システムのビジネスの展開や、それを基盤として事業ドメインを積極的に拡大し、新規市場への参入や事業の多角化も同時に実行するとした。

 そのほか、フィリップスの事業はモバイル育児アプリなどでマザー&チャイルドケア事業を推進するほか、スポーツヘルス事業にも積極的に展開するとした。

実現したいヘルスケアの世界
マザー&チャイルドケア事業
スポーツヘルス事業
発表会場ではフィリップスの製品が展示された