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インテル 鈴木国正社長、データ・セントリックの時代に向けた戦略を解説。5Gや自動運転車にも注目

インテル株式会社 代表取締役社長 鈴木国正氏

 インテルは12月11日、同社の最新の取り組みを紹介する報道向けセミナーを都内で開催した。最初に登壇したインテル代表取締役社長 鈴木国正氏は、2019年の活動の振り返りと今後の展望について説明した。

 インテルは2019年の戦略的アプローチとして、世界最高クラスの技術革新の継続や、Industry 4.0やSociety 5.0の推進とともに、5Gや自動運転車、AI、ゲーミングなど、スマートかつコネクテッドなデータ中心の世界を前進させることなども掲げている。

2019年の戦略的アプローチ

 この方針に沿って取り組んだ2019年の活動としては、まずデータ・セントリック(データ中心)時代のイノベーション基盤として、データの高速な移動や保存、処理を可能にする幅広い製品を提供し、データからビジネス価値を創出する支援を行ってきた。直近の四半期のグローバルの売上では、およそ半分をデータ・セントリックビジネスの領域が占めており、PCセントリックからデータ・セントリックへの流れが加速している。

 また、2020年は“5G元年”になると言われる中で、インテルも5Gは重要視しており、その例として協業中の楽天が提供するクラウドネイティブな5Gシステムアーキテクチャが世界レベルで反響を呼んでいることを挙げた。今やネットワークがクラウド化し、コンピューティングがネットワークへとシフトするのが大きなトレンドとなっている。世界中でネットワークにおけるトランスフォーメーションが起こりつつあり、それこそがインテルが推進する方向性であると考えている。

データからビジネス価値を創出するためのイノベーション基盤を提供
5Gの展開において楽天と協業

 さらに、大量のデータを処理して、そこから知見や付加価値を得るためにはAI技術の活用が不可欠であると考えている。インテルの製品もエッジからクラウドまであらゆる領域でAIを展開しており、今後、ヘテロジニアスなコンピューティング環境となっていく中で、CPU、GPU、FPGA、ASICなどすべてを商品群として持っているインテルとしては、開発環境もしっかりと整えていく方針だという。

全方位にAIを展開

 インテルは日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するため、さまざまなパートナー企業との共創にも取り組んでいる。たとえば日本通運との協業では、インテルCLP(Connected Logistics Platform)をベースにした「Honeywell Connected Freight」ソリューションにより、IoTを活用して物流の変革に取り組んでいる。

 このほか、第10世代インテルCoreプロセッサーの投入やPCゲーミング/eスポーツへの支援、東京2020オリンピック競技大会に向けた技術貢献などの取り組みも紹介した。

さまざまなパートナーと協業

蓄積したデータをビジネス価値に転換してデータ・デバイドを解消

データ・セントリックとPCセントリックの市場機会

 2020年に向けての日本市場における取り組みのうち、データ・セントリックの領域は大きく分けて「データセンター」「ネットワーク」「IoT」の3分野があり、IoTの分野にはADASやMaaSといった自動車関連のビジネスも含まれている。データ・セントリックへのトランスフォーメーションが今後進んでいく中で、新たな課題となるのが、データを活用できる企業と、そうではない企業との格差を意味する「データ・デバイド」だ。

データ・セントリック時代にはデータ・デバイドが課題に

 2025年の世界の接続機器数は、コンピュータやモバイルデバイスのほか、自動車なども含めて1500億台となる見込みで、データ量も175ZB(ゼタバイト)と膨大な量となる。そのような状況の中で、日本企業のうち、データの利活用からビジネス成果を十分に得ている企業は3%と少なく、今後は蓄積したデータを迅速に処理し、ビジネス価値にいかに転換するかが新たな競争軸となる。

 そのような中で、インテルには、「データ活用に成功する企業を少しでも増やしたい」という思いがある。ビジネス環境や技術的環境の変化、社会的課題などによって、さまざまな組織でデータ・セントリック・トランスフォーメーション(DcX)が進み、日本の新たな成長活力となる。

 今後は異業種のデータを掛け合わせたり、業界が共同でデータ活用のプラットフォームを構築したりと、データを活用するための工夫も必要となってくる。鈴木氏は最後に、「インテルとしても、どの企業とどの企業をマッチメイキングすると何が起きるのか、といったことを考えながら、データ活用の世界に少しでも貢献できればと思っています」と締めくくった。

異業種のデータを組み合わせることで新たな価値を創出

ディープラーニングアクセラレータ「Nervana NNP」を年内に生産開始

インテル株式会社 執行役員常務 土岐英秋氏

 次に、執行役員常務 技術本部 本部長 土岐英秋氏による最新技術動向の紹介が行なわれた。インテルはエッジからクラウドまでを幅広くカバーするため、CPU、GPU、FPGA、ASICなどの製品を提供しており、異なるアーキテクチャを組み合わせながら効率よく開発するための統合開発者フレームワーク「oneAPI」の提供を開始している。

統合開発者フレームワーク「oneAPI」

 また、同社が提供する製品のうち、自動運転車の開発などにも利用できるASICの「Nervana NNP(Neural Network Processors)」を2019年中に生産開始する。Nervana NNPは、ディープラーニング(深層学習)を効率的に処理するためのAIアクセラレータで、インファレンス(推論)向けの「NNP-I」とトレーニング(学習)向けの「NNP-T」が用意されている。ニューラルネットワークのノードの数が今後増えていくことが予想されているため、いずれもメモリ空間が大きく取れるように設計されている。

 インファレンス向けの「NNP-I」は、手のひらサイズで50兆回/秒の計算が可能で、提供開始時においては、市販アクセラレータとして最高のパフォーマンス/ワットを達成する見込みだという。一方、トレーニング向けの「NNP-T」については、業界でも最高水準の精度を実現しており、効率よく学習を行なえる。ASICはCPUやGPUに比べて省電力で高性能を実現可能で、限られた電力で高いパフォーマンスを求められる場合においてはASICが必要になるという。

インファレンス向けのNNP-I
トレーニング向けのNNP-T

 このほか、インテルXeアーキテクチャをベースとしたGPUの新製品「PONTE VECCHIO」の紹介も行なわれた。同GPUは、インテル初のエクサスケールGPUで、HPCとAIのアクセラレーション向けに最適化している。今回のセミナーではこのほか、前述したoneAPIの詳細や、PONTE VECCHIOを搭載したスパコン「Aurora」などの紹介も行なわれた。