ニュース
東京オリンピックに合わせた自動運転実証実験公開も言及された「2020年 自動車工業団体新春賀詞交歓会」
2020年1月8日 00:00
- 2020年1月7日 開催
日本自動車工業会、日本自動車部品工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会の自動車工業4団体は1月7日、2020年の「自動車工業団体新春賀詞交歓会」を都内で開催した。
自工会 会長の豊田章男氏は、同日に米国 ネバダ州ラスベガスで行なわれている「CES 2020」で登壇したため欠席し、自工会からは副会長 神子柴寿昭氏が参加して主催4団体代表のあいさつを行なった。また、来賓として出席した牧原秀樹経済産業副大臣、青木一彦国土交通副大臣が新年のあいさつを述べた。
各登壇者のコメント(抜粋)を以下に記す。
日本自動車工業会 副会長 神子柴寿昭氏
「昨年、この場で豊田会長から、日本の基幹産業としてわれわれの『ものづくりの力』をなんとしても守り続けたい。そのためにも、クルマやバイクにもっと多くのお客さまに乗っていただきたいといったお話がありましたが、その思いを実現すべく取り組んだのが昨年の東京モーターショーでありました。『若者のクルマ離れ』と言われて久しく、回を追うごとに来場者の減少に歯止めがかからない現状をなんとしても打破すべく、『OPEN FUTURE』を合い言葉に、業界の垣根を越えたオールジャパン、オールインダストリーで取り組んだ結果、おかげさまで130万人を超えるお客さまにご来場いただくことができました。とりわけ、若年層や女性の来場が著しく増えたことは、大変心強いことであり、次回につなげるべく、しっかりと準備を進めてまいりたいと考えております」。
「一方で昨年は、たび重なる自然災害に見舞われるなか、災害時に自動車産業がどのように役に立つことができるのかを深く考えさせられた1年でもありました。電動車が持つモビリティ本来の用途に加え、災害時には非常用電源としての給電機能の活用が注目されましたが、同時にその使い方を皆さまに分かりやすくお伝えし、いざという時に迷わず使っていただくための普及啓発の必要性を強く実感いたしました。経産省、国交省におかれましては、全国の自治体やお客さまへの啓発活動を推進いただいておりますが、私たちも一緒になって取り組んでまいります」。
「また、昨年は高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違いによる事故が社会問題化した年でもありました。年末に閣議決定された補正予算案に、高齢者の安全運転サポート車の購入を補助する『サポカー補助金』が盛り込まれました。高齢者の事故対策に政府として迅速に支援策を講じていただいたことにあらためて御礼申し上げます。今回の制度を、ドライバー1人ひとりの安全運転に対する意識改革につなげる機会と捉え、一時的な販売補助として活用するに止まらず、さらなる安全運転支援技術の開発・普及に取り組んでまいりたいと思います」。
「今年はいよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。世界中の人々が東京に集まるこの機会を日本の技術力を世界にアピールする大きなチャンスと捉え、自動運転の実証実験を公開いたします。昨年、関係省庁のご尽力により、自動運転車の実用化に向けた法改正が行なわれ、自動車メーカーがよりいっそう開発を加速できる環境が整いました。交通事故ゼロ社会の実現は自動車産業共通の願いであり、目標です」。
「昨今は『CASE』や『MaaS』といった言葉が頻繁に語られるようになり、その中で自動運転が象徴的に取り上げられておりますが、これはあくまでも交通事故ゼロを目指す中での手段の1つだと考えております。交通事故ゼロ社会の実現に向けては、自動運転に限らず『どこが先に技術を出すか」といった早さを競うのではなく、究極の安全・安心を目指して業界全体で思いを1つにして、社会のお役に立てるよう取り組んでいくことが重要だと考えています。今年のオリ・パラをその実現に向けたマイルストーンとして、飛躍の位置付けにしたいと思います。クルマが社会の一部として、1人ひとりの暮らしをより豊かに、より安全・安心で環境にも優しく、なおかつ楽しさも忘れない。そんなモビリティ社会の実現に向けて、この2020年は自動車産業が『ONE TEAM』となり、取り組みを加速させていく1年にしていきたいと考えております」。
経済産業副大臣 牧原秀樹氏
「令和初の新年を迎え、いよいよ7月には東京オリンピック・パラリンピックが開会する年になりました。今大会の聖火リレーは福島からスタートをいたします。生業の再建、水素ロボット、ドローンなど、新たな産業の創成を通じ、未曾有の大災害からの復興はこれから本格化します。会場では福島生まれの再エネ由来水素が燃料電池自動車などで活用されます。復興への歩みを進める福島の姿を世界に発信してまいります」。
「日本から世界に対する発信は東京オリンピック・パラリンピックだけではありません。自動車産業におきましては、昨年の東京モーターショーが大成功を収め、世界の自動車産業から注目されました。『OPEN FUTURE』をテーマに、クルマ好きの人も、そうではない人もみんなが楽しめるモーターショーを目指された結果、神子柴副会長からのお話でもありましたように130万人もの人が来場され、前回よりも約50万人増だったと聞いております。世界のモーターショーの来場者集が軒並み減少傾向にある中、今回の東京モーターショーの盛況ぶりは世界に対する素晴らしい発信となりました」。
「自動車産業はまさに日本経済の屋台骨です。出荷額、設備投資額、研究開発費がそれぞれ全製造業の2割を占め、関連雇用者として546万人を支えるなど、サプライチェーンが長く、関連産業のすそ野も広く、皆さまのご努力が日本と地域の雇用を支えていると言っても過言ではありません。一方で、自動車産業を取り巻く経営環境は厳しさが増していると認識しております。米中の貿易摩擦やブレクジットなどといったグローバルな不透明感の高まりに加え、自動車業界では電動化や自動運転など『CASE』と呼ばれる100年に1度の大変革が到来しております」。
「こうした中、経済産業省としても、日本にとっての戦略産業であり、社会の課題解決のリーダーでもある自動車産業の皆さまとしっかり議論を行ない、通商問題や税制、CASE対応などの戦略課題にも責任を持って取り組んでまいりたいと考えております。CASEの電動化対応では、電動車の普及促進による環境負荷の低減に加え、昨年の台風などによる停電の際には避難所で携帯電話などの充電に、電動車の機動性、静音性などの観点から災害時における有用性があらためて認識されました」。
「今後、経済産業行政は多くのチャレンジを乗り越えていかなければなりません。十干十二支で新たな芽吹きと繁栄の始まりという意味を持つ『庚子』にあたる本年は、そのチャレンジに乗り出すにふさわしい年となります。全身全霊で経済の好循環の維持・発展に努めさせていただきます」。
国土交通副大臣 青木一彦氏
「名実ともに日本の産業の屋台骨となっている自動車産業は、自動運転技術の進化、クルマの電動化、MaaSやCASEといったモビリティのサービス化といったいくつもの変化の波を迎え、まさに大変革期にあります。航空、鉄道、道路、都市政策といった分野を幅広く所管する国土交通省では、自動車交通の枠を越え、これらの変化や課題に対し、皆さんと手を携えて適切に対応してまいります」。
「高齢運転者の事故防止対策としましては、乗用車などに対して世界で最も早く自動ブレーキの義務付けを開始するための法令を近く公布いたします。また、急発進を防止する装置の認定制度を創設するほか、これから車両や装置の導入支援補助を行なうこととしております。さらに、皆さんの期待を背負い、安全や環境分野での国際基準作りを主導しており、とくに自動運転については国連の会議において議長として基準作りのリーダーを務めてまいります。これらの活動を通じ、引き続き世界の自動車先進国として安全・環境性能に優れるクルマの普及促進に務めてまいります」。