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住友ゴム、2019年12月期決算説明会。売上高0.1%減の8933億1000万円、純利益66.7%減の120億7200万円

為替変動と海外工場などの減損損失を計上した影響により

2020年2月13日 開催

住友ゴム工業株式会社 代表取締役社長 山本悟氏

 住友ゴム工業は2月13日、2019年12月期(2019年1月1日~12月31日)の決算内容について解説する決算説明会を開催した。

 第128期となる2019年通年の連結業績(IFRS)は、売上収益が前年同期比0.1%減の8933億1000万円、事業利益が同11.2%減の538億7800万円、営業利益が同42.1%減の330億6500万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同66.7%減の120億7200万円となった。

2019年12月期(2019年1月1日~12月31日)の連結業績(IFRS)

 この連結業績について、住友ゴム工業 代表取締役社長 山本悟氏が説明を実施。世界経済は米国で着実に景気が回復し、欧州でもゆるやかに景気回復の動きが持続しているものの、中国の景気減速、米中の通商問題の動向による景気の下振れリスクが高まり、不安定な状況で推移したと分析している。日本経済については雇用環境が着実に改善され、個人消費が持ち直しているが、海外の経済動向による不確実性から設備投資や輸出が弱含みとなり、景気の回復は穏やかな状態になっているとした。

 このような情勢の中で、住友ゴム工業は低燃費タイヤ、ハイパフォーマンスタイヤといった高付加価値商品の拡販を推進し、欧米での販売力強化、ダンロップブランドの価値向上の取り組みなどを実施。さらに新市場・新分野に対して積極的に挑戦し、グループを挙げて事業の成長と収益力の向上を目指す取り組みを続けたという。

 しかし、上記のように2019年通年では、売上収益はほぼ前年同期並みとなったが、事業利益が11.2%減の538億7800万円で減収・減益という内容。売上収益については為替が円高となった減少要因を販売増でカバーしたが、事業利益については円高による減少要因に加え、固定費や経費などの増加もあり減益となった。

 また、タイヤ事業の北米、南アフリカ工場で生産性の改善が遅れたほか、産業品他事業で医療用精密ゴム事業を行なうスイスの工場で販売計画に遅れが生じたことなどを受け、それぞれの事業計画について見直しを実施。この結果、のれん・固定資産で182億円の減損損失を計上することになり、営業利益が42.1%減の330億6500万円、税金費用を計上した後の親会社の所有者に帰属する当期利益が66.7%減の120億7200万円と大幅な減益となっている。

暖冬によるスタッドレスタイヤ販売減が売上収益に影響

 セグメント別では、タイヤ事業の売上収益は前年同期比0.1%減の7675億5100万円、事業利益は同9.8%減の461億8300万円。

 国内新車用タイヤでは納入車種が拡大し、低燃費タイヤを中心とする高付加価値商品の拡販によって販売数も増え、売上収益が前期を上まわっている。国内市販用タイヤはダンロップブランドの低燃費タイヤを中心とした高付加価値商品の販売を拡大し、消費税率の引き上げによる駆け込み需要も追い風となったが、暖冬の影響でスタッドレスタイヤの販売が伸びず売上収益が落ち込んでいる。

 海外新車用タイヤは、欧州、北米に加えて新興国での納入が拡大。売上収益が前年同期を上まわっている。海外市販用タイヤは、アジア・大洋州地域で中国の景気減速の影響を受けたが、欧州・アフリカ地域では欧州を中心にファルケンブランドの販売が順調に拡大。米州地域では、北米でもファルケンブランドの4WD・SUV用タイヤ「WILDPEAK(ワイルドピーク)」が好調に推移して販売を伸ばし、売上収益を高めている。

 全体としてタイヤ事業の売上収益はほぼ前年同期並みで推移したが、為替の影響、固定費や経費などの増加などにより、事業利益は減益となっている。

セグメント別の連結業績
事業利益増減要因イメージ

 次期となる2020年12月期(2020年1月1日~12月31日)については、米中の通商問題の動向と中国の経済成長率の減速、英国のEU離脱によるグローバルな影響、中東地域での地政学的リスクの顕在化などにより、世界的に景気の不確実性がさらに高まっていくと想定。

 日本経済はゆるやかな景気回復が続くと期待されるものの、消費税率の引き上げ後の景気に対する影響、消費マインドの改善に資する財政不安の解消、賃上げ動向の不透明感などの課題があり、予断を許さない状況が続くと予想している。

 これにより、2020年度は売上収益が前年同期比1.9%増の9100億円、事業利益が同2.1%増の550億円、営業利益が同63.3%増の540億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同194.1%増の355億円で増収増益の業績予想としている。

2020年12月期の連結業績予想。2019年12月期分に182億円の減損損失が計上されている影響で営業利益と当期利益が派手な見た目になっているが、実質では2018年12月期実績周辺の数字となっている
2020年12月期のセグメント別連結業績予想
2020年12月期の事業利益増減要因イメージ
海外工場の生産能力を引き続き増強。グローバルでのタイヤ生産量を3%増の6万8750t/年に向上させる計画だが、新型肺炎の影響がいつ収束するのか予測できず、引き続きの注視が必要だとした

減損損失として計上した182億円の内訳と改善策などを説明

2019年12月期の決算に計上された減損損失の内訳

 このほかに今回の決算説明会では、営業利益と当期利益を大きく引き下げる要因となった減損損失についての解説も行なわれた。

 合計で182億円にもなる今回の減損損失は、「北米タイヤ事業」がのれん50億円、固定資産40億円で計90億円、「南アフリカ工場」が固定資産73億円、「スイス工場」がのれん12億円、「その他」が固定資産7億円という内訳。

 北米タイヤ事業では、2015年10月に米グッドイヤーとアライアンスを解消したことによって取得したニューヨーク州 トナワンダにあるタイヤ生産工場を、米州地域のタイヤ生産拠点として活用してきた。

 乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、2輪車用タイヤなどの生産を手がけ、乗用車用タイヤでは1日あたり6500本の生産能力を持っているが、生産面で課題があり、計画したような収益化が進まず減損損失になったという。

 米国工場はもともとグッドイヤーからの受託生産として、少品種多量生産の体制を取っていたが、住友ゴム工業ではこの工場で多品種少量生産に移行させることを計画。また、生産難易度の高いSUV用タイヤの生産も行なうことにしていたが、生産移行と従業員のスキルがマッチせず、古くなっていた設備を入れ替える必要も出てきたが、移行や切替が進まず生産性が悪化しているという。

 今後の改善策として、生産面では従業員のスキルアップと設備入れ替えを実施して生産性を高め、コストの改善も推し進める。販売面ではSUV用タイヤなどの高付加価値商品の増販に努め、販売価格の見直しによる収益性の改善、現地ニーズに合った新商品の開発と新車向けタイヤの納入拡大などを図っていくという。

米国 ニューヨーク州 トナワンダにある米国工場のアウトライン
グッドイヤーからの受託生産体勢からの移行が進まず生産性が悪化。生産面と販売面で課題を洗い出し、収益を向上させていく計画

 南アフリカ工場は2013年12月に買収で手に入れた工場で、南アフリカのクワズール・ナタール州 レディスミス市で生産を実施。アフリカ地域の生産拠点として一帯にタイヤを供給している。

 乗用車用タイヤに加え、2018年7月からはトラック・バス用タイヤの生産もスタート。乗用車用タイヤでは1日あたり1万1400本、トラック・バス用タイヤでは1日あたり750本の生産能力を持っているが、こちらでは生産面と販売面の両方で課題が発生しているという。

 買収による取得以降、順調に販売を伸ばしていったが、2018年に発生した通貨高の影響で南アフリカに国外から安価なタイヤが多数流入。南アフリカの国内市況も悪化したことで販売価格が下落し、販売計画を達成できなくなったことに加え、工場の稼働率も低下して生産コスト増を招いたという。生産面ではグローバル品質タイヤに生産をシフトしたが、これが生産性の悪化につながった。

 今後の改善策として、生産面では生産設備の更新や従業員のスキルアップを図って生産性を改善。グローバル品質タイヤの生産安定化を目指していく。販売面では高付加価値商品の拡販、新商品の市場投入、新車装着タイヤの納入拡大などを実施して収益性を着実に向上させていくとした。

南アフリカ クワズール・ナタール州 レディスミス市にある南アフリカ工場のアウトライン
2018年に南アフリカで発生した通貨高で廉価輸入品の流入、市況の悪化などで販売計画の未達が発生。グローバル品質タイヤ、高付加価値商品などの増販で収益を高めていく

 医療用精密ゴム部品の事業拡大を目的として2015年1月に買収したスイス工場。ここまで順調に販売を伸ばしてきたが、顧客となる納品先企業の新商品の発売が遅れたことで販売面に影響が発生。減損損失することになった。

 医療用精密ゴム部品事業の本部を2020年から欧州に移管し、営業体制を強化して挽回を図り、合わせて高付加価値商品の販売拡大も推し進める。また、2017年8月に設立し、 2019年から稼働を始めているスロベニア工場についても確実な生産立ち上げを実施。汎用品ビジネスを拡大させて収益性向上を目指していくという。

 説明の締めくくりに山本社長は、株主や多くのステークホルダーに迷惑をかけたことについて謝罪。自社の置かれている厳しい状況を真摯に受け止め、経営責任を明確化させるため、自身や各取締役などの役員報酬を2月~4月の3か月間減額することを明らかにした。

 今後は減損損失となった各拠点での巻き返しに加え、全拠点を含めたグループ一体となって経営基盤の強化に努めていくと意気込みを語っている。

スイス アールガウ州にあるスイス工場のアウトライン。2017年8月にはスロベニア工場も新設されている
納品先企業の新商品の発売計画が遅れたことの影響で減損損失となった。スロベニア工場では汎用品ビジネスの拡大も図っていく
会長、社長、副社長は月額報酬の30%、専務は月額報酬の20%、常務は月額報酬の10%を役員報酬から減額して経営責任を明確化