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「第1回 TGR e-Motorsports Fes」開催に、official MORIZO社長「面白いから、ホンダ、ニスモに声をかけよう!」「SUBARUも誘おう」
レースは2レースともに宮田莉朋選手が優勝
2020年4月30日 11:39
- 2020年4月29日 開催
TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ自動車)は4月29日14時~16時に、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)所属のレーシングドライバーによるオンラインイベント「第1回 TGR e-Motorsports Fes」を開催した。このイベントは、日本でもCOVID-19(いわゆる新型コロナウイルス)による緊急事態宣言が出されたことなどにより、各種レースが開催中止・延期などになっている状況を受けて、それでもファンにレースを楽しんでもらえるようにと企画されたものとなる。
レースには元F1ドライバーで現在はTGRのWEC参戦のドライバーでもある小林可夢偉選手、中嶋一貴選手の両ドライバー、2019年のSUPER GT GT500クラスのチャンピオンである大嶋和也選手と山下健太選手などTGRを代表するドライバーが参戦したほか、脇阪寿一氏が解説を担当するなどして大いに盛り上がった。
SUPER GTの車両を利用したレース1、スーパーフォーミュラの車両を利用したレース2という2回行なわれたレースでは、2020年シーズンからSUPER GT GT500クラスにステップアップしたばかりの宮田莉朋選手が優勝した。特にレース2では最終ラップの最終コーナーまで熱いバトルを繰り広げ、最終コーナーで大逆転された小林可夢偉選手が悔しがるという実戦さながらのレースが展開された。
外出禁止や外出自粛などにより新しいエンターテイメントとして注目を集めるバーチャル・レース
COVID-19の感染拡大を受けて欧米各国で緊急事態宣言が出され、外出禁止令が出されるなど混乱が続いている。多くの観客を1か所に集めることになるモータースポーツのイベントも影響を受けており、F1、WEC、WRCといった世界選手権も、2020年シーズンのレースは2月に行なわれたレース以降、レースが開催できない状況になっており、ドライバーたちも自宅待機を強いられている状況だ。
そうした中で、今注目を集めているのがゲームやシミュレーターソフトウェアなどを利用したバーチャル・レースだ。こうしたゲームを利用する競技は「eSports(イースポーツ)」と呼ばれて注目を集めており、特にモータースポーツとの親和性は非常に高い。というのも、元々道具を利用するスポーツであるモータースポーツは、ドライバーのシートやハンドルコントローラなど、実車を操作するのに近い環境を用意することが可能で、ドライバーも実車を操作するようにバーチャル・レースに参加できるからだ。
このため、従来からバーチャル・レースの上位ランカーを実際のレースにステップアップさせるなどの取り組みが行なわれており、現在の現役ドライバーの中では、日産自動車からSUPER GT GT500クラスに参戦しているヤン・マーデンボロー選手などはバーチャル・レース出身者として知られている。
当然、その逆も可能ということで、この状況の中でプロのレーシングドライバーがバーチャル・レースに参戦するという取り組みが行なわれている。その代表例は、佐藤琢磨選手が参戦するインディカー・シリーズで「INDYCAR iRacing Challenge」というバーチャル・レースのシリーズが行なわれており、シリーズにエントリーするほとんどのドライバーが参戦して熱い戦いを繰り広げている。すでに5戦までが終了し、今週末にインディアナポリス・モータースピードウェイを舞台として第6戦が行なわれる予定になっている。このほかに、F1では「Esports Virtual GP race」、フォーミュラEでは「Home Challenge」というシリーズを展開しており、フォーミュラEのサーキットを舞台として週末にレースを行なっている。
こうしたバーチャル・レースの特徴は、ドライバーが自宅から参戦できることで、外出制限が出ている国からでも人気のドライバーが参加できるところ。このため各レースともに非常に熱いレースが展開されており、INDYCAR iRacing Challengeに参戦している佐藤琢磨選手がインタビュー(別記事参照)で語っている通り、ドライバーにとってはトレーニングになるのと同時に、バーチャル・レースに勝つためにトレーニングをするなど真剣に取り組んでいることもあって、エンターテインメント性も高くなっている。
大嶋選手を中心とした有志の取り組みがTGR公式イベントに昇格。レース1の優勝は宮田選手
日本でもそうしたバーチャル・レースのスタートが期待されていたが、その先陣を切ったのがトヨタ自動車のレースブランドであるTGRだ。2019年シーズンまではレクサスのブランドでSUPER GTに参戦していたトヨタは、2020年シーズンから車両を「GR Supra GT500」に変更したこともあり、レースでのブランドもWECやWRCと同じようにTGRに変更されている。
そのTGRが主催して今回行なわれたバーチャル・レースのイベントが第1回 TGR e-Motorsports Fesで、その模様はYouTubeを通じて無料でライブ配信された。なお、現在もアーカイブ配信を行なっており、レースの模様を引き続き以下のYouTubeで楽しむことができる。
参戦したドライバーは、中嶋一貴選手、小林可夢偉選手、山下健太選手、大嶋和也選手、坪井翔選手、国本雄資選手、関口雄飛選手、サッシャ・フェネストラズ選手、平川亮選手、ニック・キャシディ選手、石浦宏明選手、中山雄一選手、宮田莉朋選手といった面々で、2020年シーズンにTGRからSUPER GTやスーパーフォーミュラに参戦するドライバーとなっている。中継を担当したのは勝又智也氏、そしてTGRアンバサダーを務める脇阪寿一氏。
元々は大嶋選手を中心に有志ドライバーで行なっていた企画がTGR公式イベントに昇格した形で、多くのドライバーは自宅やオフィスといった場所から参加し、解説の脇阪氏も自宅から参加するという、国や地方自治体などが訴える「STAY HOME」の取り組みに協力する形で行なわれた。なお、プラットフォームとして利用されたのはPlayStation 4の「グランツーリスモSPORT」で、いずれもレース中にタイヤ交換や給油などを行なうルールで実施された。
レースは2レースが行なわれ、レース1は車両としてSUPER GT GT500クラスのGR Supra GT500を利用し、富士スピードウェイを舞台にしたSUPER GTのレース、レース2は車両としてスーパーフォーミュラのSF19を利用し、鈴鹿サーキットを舞台にしたレースとなった。
富士スピードウェイを舞台に行なわれたレース1では、予選でポールポジションを獲得した宮田選手がポールトゥウインでSUPER GT初勝利(?)を挙げた。2位は山下選手で、宮田選手は1度は山下選手に逆転されたものの、レース後半にそれをひっくり返しての優勝だ。
なお、ライブ配信にはGTAの関係者とみられる「SUPER GTオフィシャルチャンネル」のアカウントからもコメントが寄せられ、レースを盛り上げた。特に1コーナーを飛び出した坪井翔選手にはペナルティが出され、「坪井選手ペナルティ 開幕戦岡山での土曜予選後夕飯おかず抜きです…」という非常に厳しい(?)ペナルティの裁定が下された。なお、SUPER GTオフィシャルによれば「ふりかけはOKです、大人のふりかけはNG」という、厳しいのか厳しくないのかよく分からない注釈付きだった。
また、「official MORIZO社長」という、トヨタ自動車の豊田章男社長と思われるアカウントも登場し「面白いから、ホンダ、ニスモに声をかけよう!」、「明日、八郷さん(筆者注:本田技研工業 社長の八郷隆弘氏のことだと思われる)に話をしよう」、「SUBARUも誘おう」などのコメントを残していた。脇阪氏も公式の社長アカウントとして紹介していたので、実際に豊田社長自身がそうしたコメントをしていた可能性が限りなく高く、そうしたコメントもレースを盛り上げるのに大きく貢献していた。
レース2は可夢偉選手vs宮田選手で、最終コーナーの熾烈なバトルを制して宮田選手が優勝
レース2は鈴鹿サーキットを利用して、スーパーフォーミュラのSF19で行なわれた。予選グリッドはレース1のリバースグリッドで、先ほどのレースで勝利した宮田選手が最後尾からスタートすることになった。このレースでも宮田選手は大活躍し、レースの最終ラップにピットに入るという作戦を決めて、ピットを出てきたところで宮田選手よりも1回多くピットストップをしていた小林可夢偉選手を1コーナーで抑え、トップのままコースに戻ることに成功。
しかし、そこから可夢偉選手が実際のレースを彷彿とさせるような激しい追い上げを見せ、ヘアピンで宮田選手の真後ろに迫り、その後スプーンまでにインに入ってそのまま首位を奪取した。これで可夢偉選手の優勝かと思われたが、シケインで宮田選手が可夢偉選手のインに飛び込むと、可夢偉選手はシケインを曲がりきれずに直進してしまい、シケインを曲がってきた宮田選手と接触。両車ともに最終コーナーのアウト側に飛び出すというまさかの展開に。それでもストレートでわずかに早くスピードを乗せることができた宮田選手が先にチェッカーを受け、レース2でも優勝を飾った。敗れた可夢偉選手は放送禁止用語ギリギリの言葉で悲しみを表現し、うなだれるシーンが映るなど、大いに盛り上がるレースとなった。
今回の第1回 TGR e-Motorsports Fesを視聴した率直な感想は「途中で配信が止まっちゃうなど手作り感満載だったけど、それも含めてライブ感が面白い。もっと見たい」というものだった。
放送中にはドライバー同士が「Zoom」というテレワークのリモート会議などで使われるソフトウェアを利用してお互いに連絡を取り合っており、その音声も完全ではないもののライブ中継に入っていたことから、ドライバー同士がこんなことを話しながらレースしているんだという様子が分かって、いつものレースとは違う面白さがあって楽しめたことも理由の1つで、そしてやはり、普段はサーキットで見ているプロのドライバーたちが、ゲームといえどもレースをする様子は理屈抜きで楽しめた。
モリゾウ(豊田社長)氏を名乗るアカウントが語ったように、ぜひこうしたバーチャル・レースに、トヨタだけでなく、ホンダや日産なども参加すればより盛り上がると思うので、今後はSUPER GTやスーパーフォーミュラの公式イベントとしてバーチャル・レースを行なうというのはどうだろうか? もちろん、普段のレースとは違うものだが、レースができない現状では、レースファンにとって最高のエンターテインメントになると感じた。関係者の皆さまにはぜひご検討いただきたいということでこの記事のまとめとしたい。
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