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フォルクスワーゲン、2020年内にグループ最大15の工場をクラウドで統合

2025年末までに約2億ユーロのコスト削減効果

2020年4月29日(現地時間) 発売

「Volkswagen Industrial Cloud」への工場の統合を加速

 フォルクスワーゲン グループは4月29日(現地時間)、同社の工場を「Volkswagen Industrial Cloud(フォルクスワーゲン インダストリアル クラウド)」に統合する作業を進めていると発表した。これにより工場の効率をさらに高め、生産コストの削減を目指すという。

 2019年にすでにフォルクスワーゲン乗用車を生産するケムニッツ、ウォルフスブルグ、ポルコビツェ(ポーランド)の3工場から統合に着手。2020年にはさらに、アウディ、セアト、シュコダ、フォルクスワーゲン乗用車、フォルクスワーゲン商用車、ポルシェ、フォルクスワーゲン グループ コンポーネンツの各工場のうち、最大で15工場が接続される予定だと言う。コロナウイルス危機により生産が停止している間も、プロジェクトの作業は継続され、作業は順調に進行。「現在は大幅にペースを速めています」と、フォルクスワーゲン グループ エンタープライズ&プラットフォーム アーキテクチャー責任者のロイ・ザウアー氏は述べている。

 Industrial CloudはAmazon Web Services(AWS)上に構築されており、シーメンスが統合パートナーとなっている。AWS IoT担当副社長のダーク・ディダスケロゥ氏は今年に入って数多くのフォルクスワーゲン生産施設でIndustrial Cloudの開発と拡大が急速に進んでいるとし、「AWS上で共同開発している機能は、各工場のデータをコスト効率よく、 そして標準化された形でIndustrial Cloudに集めて整理することを可能とします。それによって、フォルクスワーゲンの生産および物流プロセスのさらなる効率化につながるアプリケーションをより迅速に提供することができます」と述べている。

 フォルクスワーゲン グループは、最初のステップとして、15ほどのアプリケーションを定義し、標準化されたアプリとしてすべての工場で利用可能とした。その主な焦点は、人工知能(AI)を利用した生産機械の予測的なメンテナンスの実施と、車両のリワークの削減だといい、最初の15のアプリケーションの実用化だけでも、2025年末までに約2億ユーロのコスト削減効果が見込まれると言う。

「Brown Field(ブラウンフィールド)」と呼ばれるこのアプローチでは、工場に設置されている数十万台の機械および工場内装置のデータがセンサーにより記録され、クラウド上の標準化されたアプリケーションによって分析される。それぞれの機械、装置、システムは手動で接続され、年式の古い機械では、センサーの取り付けも必要となる。

 フォルクスワーゲン グループは、このデータから効率を高めるための方法を導き出すノウハウを持っているといい、現在、グループ内の220人の専門家がこのプロジェクトに参加。その人数は2020年末までに約500人に増加する予定だとした。

 フォルクスワーゲンによって現在開発されているソリューションおよびアプリケーションは、オープンエコシステム内の他の企業でも利用可能になる予定。アプリケーションを利用できるのは、自動車分野だけにとどまらず、すでにさまざまな分野で複数のパートナー企業との話し合いが進んでいるという。参加企業は、共同利用と開発により、プラットフォームやサービスを自社開発することなく、システム内でのシナジーを活用するという大きな利点を得ることができるとしている。

 フォルクスワーゲンは、2016年から2025年にかけて、工場の生産性を30%向上させることを目指しており、「Industrial Cloudは、この目標を達成するための重要な手段になるでしょう」と、フォルクスワーゲン グループ 生産責任者のゲルド ヴァルカー氏はコメントしている。フォルクスワーゲン グループは、124の工場のすべてのデータを標準化された方法で評価できるようになれば、合計で数十億ユーロのコスト削減効果が得られると予測している。