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自動車開発向けDXソリューションでアプトポッドとテラデータが協業。Excelによるデータ集計と手作業の非効率を追放へ

2020年8月4日 開催

アプトポッドとテラデータが自動車開発向け DX ソリューション提供で協業

 アプトポッドと米国Teradataの日本法人となる日本テラデータ(以下併せてテラデータ)は8月4日、自動車開発向けデジタルトランスフォーメーションソリューションで協業すると発表。同日、共同でオンライン記者説明会を開催した。

 両社によれば、アプトポッドが提供する「intdash(イントダッシュ)」とテラデータが提供する「Teradata Vantage(テラデータ バンテージ)」を連携させ、自動車メーカーが自動車を開発する際に車両からのデータ収集を容易にし、その収集したデータを分析することが、これまでよりも効率的にできるようになるという。

intdashとTeradata Vantageの組み合わせによるメリット(出典:日本テラデータとアプトポッド、自動車分野のDX化対応に向けた協業について、株式会社アプトポッド/日本テラデータ株式会社)

 例えば、路上における車両試験から上がってくるデータの整理を、従来はExcel(PCの表計算ソフト)や手作業で行なっていたが、クラウド上において自動で行なえるようにして、より効率よくデータの分析ができるようになるという。

自動車の開発にもデジタルトランスフォーメーションの波が。そのために両社が協業

日本テラデータ株式会社 インダストリアルサービス事業部事業部長 石井誠人氏

 日本テラデータ インダストリアルサービス事業部事業部長 石井誠人氏は「自動車の開発でも、新型コロナ以前からMaaSなどの進展によりデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが進んでいる。今回両社は共同で自動車メーカーなどに対して画期的なソリューションを提供していきたい」と述べ、この取り組みにより、自動車メーカーの開発プロセスのデジタルトランスフォーメーション(業務プロセスなどのデジタル化のこと)を加速していきたいとした。

株式会社アプトポッド 代表取締役社長 坂元淳一氏

 アプトポッド 代表取締役社長 坂元淳一氏は「自動車などでは制御信号やセンサーなどにより1秒間に数千から数万のデータが生成されていく。それを確実にサーバーに運ぶ仕組みのミドルウェアとしてintdashを提供している。今回さらにテラデータさまと提携することで、そのデータより容易に分析することなどが可能になる。今後は自動車メーカーだけでなく、産業向けのIoTやロボットなどの課題も解決できるようなソリューションを提供していきたい」と述べ、両社が共同して取り組むことで、自動車メーカーの開発プロセスの効率化を加速していき、それを自動車だけでなく、他の産業向けにも提供していきたいとした。

坂元氏のスライド(出典:日本テラデータとアプトポッド、自動車分野のDX化対応に向けた協業について、株式会社アプトポッド/日本テラデータ株式会社)

車両からのデータを効率よくサーバーに送る「intdash」

株式会社アプトポッド ソリューションアーキテクト 富田聡氏

 アプトポッド ソリューションアーキテクト 富田聡氏によればアプトポッドのintdashは、データを収集するエッジとなるデータ送受信ターミナル、そのエッジからデータの受信をしてさまざまな処理を行なうサーバーアセット、さらにはデータを可視化する「Visual M2M」などの3つから構成されており、自動車やロボット、建機、重機などのエッジ端末からデータを効率よく収集し、クラウドにデータとして格納することができるソフトウェアだという。

intdashの説明
Automotive Proの説明

 そのintdashを自動車産業向けに最適化したパッケージが「intdash Automotive Pro」で、CANバスや各種センサーをカバーするターミナルシステム、Visual M2Mなどをまとめて提供し、遠隔地にある自動車からのデータを効率よく収集することを可能にする。intdash Automotive Proは車両台数に応じた価格設定になっており、その点でも自動車メーカーなどが導入しやすいという。

intdashとAutomotive Proの説明
富田氏のスライド(出典:日本テラデータとアプトポッド、自動車分野のDX化対応に向けた協業について、株式会社アプトポッド/日本テラデータ株式会社)

データ分析を行なう「Teradata Vantage」

日本テラデータ株式会社 エンタープライズ・テクノロジーセールス事業部 プリシンパル・ソリューション・エンジニア 富髙弘之氏

 日本テラデータ エンタープライズ・テクノロジーセールス事業部 プリシンパル・ソリューション・エンジニア 富髙弘之氏はTeradata Vantageの概要を説明した。Teradata Vantageは、簡単に言えばデータ分析ツールで、マシンラーニングなどの分析エンジンを利用してさまざまなデータを分析することが可能になる。

 今回の両社の提携では、アプトポッドのintdashが収集した車両のデータをTeradata Vantageに取り込み、さまざまなデータ分析などを行なっていくのだという。

Teradata Vantageの説明

 富髙氏によれば「従来はデータの計測やそのデータの処理に膨大な時間がかかっていた。例えばデータの可視化はExcelで研究者自身が行なうなど、データを分析するという本来の仕事よりも労力がかかってしまっていた。そこで、intdashとVantageを利用することでそうした作業にかかっていた時間を減らしていくことができる」と述べ、テスト車両などから上がってくるデータの解析を、人の手を入れずほぼ自動で行なうことで、自動車の開発のモダン化を実現すると説明した。

富髙氏のスライド(出典:日本テラデータとアプトポッド、自動車分野のDX化対応に向けた協業について、株式会社アプトポッド/日本テラデータ株式会社)

従来はExcelや手作業で行なっていた非効率なデータ分析の効率を改善し、エンジニアが本来の仕事に戻れるようにする

日本テラデータ株式会社 ビジネスコンサルティング事業部マネージャービジネスコンサルタント 矢野寛祥氏

 日本テラデータ ビジネスコンサルティング事業部マネージャービジネスコンサルタント 矢野寛祥氏は、intdashとVantageを利用した想定されるユースケースに関して説明した。

 矢野氏は「自動車業界でのデジタルトランスフォーメーションは他の産業よりも進んでいる。しかし、全体を通した作業ではExcelやマニュアル作業があり非効率になっている。それにより本来エンジニアがやるべき価値想像に時間が取れなくなって、新しいことができないという課題があった。われわれはそうした非効率を改善するソリューションを提案していきたい」と述べ、3つのユースケースを紹介した。

市場走行結果データの抽出/活用(出典:日本テラデータとアプトポッド、自動車分野のDX化対応に向けた協業について、株式会社アプトポッド/日本テラデータ株式会社)

 1番目の想定ユースケースは「市場走行結果データの抽出/活用」で、データ取得用の車両を走らせ、そこから特定のエリアや時間などのデータをのみを抽出して、他の要因(例えば天候など)と組み合わせて分析を行なう使い方を想定しているという。

ECU適合の高速化・設計との連携(出典:日本テラデータとアプトポッド、自動車分野のDX化対応に向けた協業について、株式会社アプトポッド/日本テラデータ株式会社)

 2番目のケースでは「ECU適合の高速化・設計との連携」で、車両から上がってきたデータと、シミュレーションからの結果とを照らし合わせて、走行パターンやパラメーターの変更などを遠隔地から指示することができる仕組みを実現するという。従来はエンジニアとドライバーがセットでテストに行っていたが、この仕組みを導入するとエンジニアは研究所にいて、ドライバーだけが道路に出て運転するという仕組みが実現できるという。例えば、ドライバーと車両は海外に、エンジニアは国内の研究所にいてテストすることができるので、効率がよい。

実走行データからのRDEルート作成(出典:日本テラデータとアプトポッド、自動車分野のDX化対応に向けた協業について、株式会社アプトポッド/日本テラデータ株式会社)

 3番目のケースとなる「実走行データからのRDEルート作成」では、公道路上排出ガス試験(RDE:Real Driving Emissions)の確認を行なう際に、従来は実車からのデータを手作業で地図とマッピングしていたものを自動で行なえたり、上がってきたデータを元にシミュレーションを行ない、ある程度設定などを追い込んだところで実車の試験ができたりする。全部実車でテストするよりも、効率よくテストできるようになると矢野氏は説明した。