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OmniVision、ドライバーモニタリングシステム向け車載用ウェハーレベル・カメラモジュール「OVM9284」発表

140db HDR/LFMを備えた車載イメージセンサー「OX03C10」も

2020年6月25日 開催

OmniVisionが発表したOX03C10とOVM9284

 米国の半導体メーカー OmniVision Technologiesの日本法人となるオムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパン(以下両社合わせてOmniVision)は、6月25日にオンラインで会見を行ない、米国本社が6月2日(米国時間)に発表した新製品に関する記者説明会を開催した。

 発表されたのは140dbのHDR(ハイダミックレンジ機能、明暗に対応する機能のこと、数字が高ければ高いほど明暗に対応できるカメラになる)とLEDフリッカー抑制機能(LFM:Led Flicker Mitigation)を備えたバックカメラやサラウンドビューなどの車載向けカメラ用イメージセンサー「OX03C10」と、DMS(ドライバーモニタリングシステム、ドライバーが運転に集中しているかなどをチェックする仕組みのこと)向けに低照度でも確実にドライバーの動きを監視できるレンズなども含めたカメラモジュールをウェハー(半導体が製造される板のこと、製造後に切り出してパッケージに封入される)レベルで統合した「OVM9284」の2製品。

 OmniVisionによれば、自動車向けCMOSセンサー市場で30%のシェアを獲得し、市場シェアとしては2位になっており、新製品を国内の自動車メーカーなどに採用を呼びかけていくことでシェアの拡大を目指していく。

CMOSセンサーに強みを持つOmniVision、スマートフォンやノートPCなどにも多数の採用例

オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパン 日本支社長 薄井明英氏

 オムニビジョン・テクノロジーズ・ジャパン 日本支社長 薄井明英氏は、OmniVisionの会社概要などに関して説明した。薄井氏は「OmniVisionは25年の歴史がある半導体メーカーで、CMOSセンサー製品を中心に製品を展開している。アナログ回路に強いWill Semiconductor Shanghai、スマートフォン向けセンサーなどに強いSuperpix Micro Technologyなどと合併し、2019年にOmniVisionグループとなった。今後はそうした3つの企業が持っている強みを新しい強みにつなげていきたい」と述べ、Will Semiconductor Shanghaiによる他2社の買収により、新しくOmniVisionグループとして統合された経緯などが説明された。

OmniVisionグループ
グループの歴史
今後のビジョン

 薄井氏によればOmniVisionグループのポートフォリオ(製品群)はCMOSイメージセンサー(デジタルカメラなどで一般的に使われている半導体技術によるアナログからデジタル変換を行なう回路のこと、カメラが撮影する画像をデジタルに変換する役割を持つ)、ASIC(組み込み向けの半導体)、LCOS(プロジェクターなど向けのディスプレイ素子)、アナログICなどがあり、それぞれの市場で大きなシェアを取っているという。

製品ポートフォリオ
注力市場

 現在ではそれらの製品を利用して、スマートフォン向け、車載、監視カメラ、IoT/VR、PC、医療向けなどの市場に注力しており、薄井氏によればスマートフォン向けのCMOSセンサーは12.4%の市場シェアで3位、セキュリティカメラは48%で1位、車載は30%で2位、ノートPC向けのCMOSセンサーは50%で1位、VRやドローンなどのIoT市場は48%で1位、内視鏡などのメディカルは81%で1位だという(数字は同社の説明によるもの、同社によればTSR、Yole、OVTなどの2018年のデータ)。

 なお、日本メーカーのノートPCではほぼ市場シェア100%とのことで、多くのノートPCのフロントカメラで採用されているという。横井氏は「昨今はCOVID-19の流行によるテレワークの普及でノートPCのインカメラの画質にも注目が集まっており、ノートPCのインカメラのHDR化に関してもご相談が相次いでいる」と今後はノートPCのインカメラの高画質化やHDR化などに取り組んでいきたいと述べた。

各セグメント間でのテクノロジーシナジー
研究開発拠点

 このように、OmniVisionは特にCMOSセンサーに強みを持ち、スマートフォン、PC、IoT、監視カメラ、車載といった機器に採用されており、現在ではそれぞれ市場向けに開発した技術を他の市場に展開するといった形で波及効果を出しているという。例えば、セキュリティカメラでは暗いところでも写るように、近赤外線量子化効率向上の技術である「Nyxel」(ニクセル)を開発して投入しているが、近年ではそれを車載向けに展開するという形で相互に応用しているということだった。

140dbのHDRやLFMのサポートで、どんなシーンにも対応できる車載カメラに

オムニビジョン・テクノロジーズ シニアマーケティングマネージャー 車載製品担当 ケルビン・チャン氏

 オムニビジョン・テクノロジーズ シニアマーケティングマネージャー 車載製品担当 ケルビン・チャン氏は今回発表された2製品、OX03C10とOVM9284を紹介した。

車載カメラのトレンド
OmniVisionの車載カメラへの取り組み

 チャン氏は車載カメラに期待されている要素としてHDR、LFM(LEDフリッカー抑制機能、ディスプレイに生じる細かなチラツキを抑制する機能のこと)、低照度性能、高精細化、サイバーセキュリティへの対応、赤外線感度、グローバルシャッター、低消費電力化などがあると説明。OmniVisionはそうした要素に対応した車載向け製品を2005年の最初の製品の量産開始以降、徐々に実現してきたと説明した。

SVS/RVC
CMS

 CMOSイメージセンサーのOX03C10はバックカメラ、サラウンドビューカメラ、電子ミラーなどの車両の周囲を把握するためのカメラとしての用途が考えられている。チャン氏によれば「バックカメラは米国ではすでに装着が義務づけられるなどして需要が高まっている。要求される機能としてはより広いレンジをサポートするHDR、高解像度、さらには低照度での性能などだ」とのことで、年々求められる要求は高くなっているという。また、同じように電子ミラーなどの需要にはLFMやHDR、低消費電力、1秒間に60フレームを撮影できる機能などが必要になると説明した。

OX03C10
HDRとLFMの課題
LFMがないiPhoneのカメラでディスプレイを撮影するとこのようにチラツキが発生する
フリッカー抑制の必要性

 チャン氏によればOX03C10はそうしたニーズを満たすように、数々の強化が行なわれているという。例えば画素そのものを3μmへと強化し、パッケージは“スタックドダイ”と呼ばれる複数のダイ(半導体チップの単位)を重ねてパッケージに封入する形になっており、パッケージのサイズを小さくすることで実装面積を少なくすることができるとともに、低消費電力を実現している。

OX03C10のHDRとLFM
OX03C10のHDRを利用している例。橋の下の暗いところと明るいところがきっちりと撮影できていることが分かる
こちらは暗い駐車場から出てくるところ。やはり暗いところと明るいところを撮影できている
電子看板もチラツキを起こしていないことが分かる

 HDRは従来の製品が120dbまでのレンジしか実現できていなかったのに対して、140dbまで実現できるという。具体的には従来製品では3つの画像から合成してHDRを実現していたのに対して、この新しい製品では4つの画像から合成する形になり、140dbまでをカバーすることが可能になっているとのこと。また、LFMの機能では露光時間を調整することで、LFMを抑制しているという。

OX03C10の特徴

 こうした機能を実現しつつ、競合他社の製品に比べて消費電力は25%削減しており、パッケージサイズは50%小型化を実現していているとチャン氏は説明した。

ウェハーレベルの統合でDMS用の小型化、低消費電力を実現したOVM9284

DMS

 チャン氏によれば「OVM9284」の主要なアプリケーションはDMS(Driver Monitoring System)になるという。DMSはレベル2以上の自動運転で今後必要になると考えられている、ドライバーの状態を常にチェックするシステムだ。例えば、レベル4以上の自動運転ではある特定の環境下(例えば霧が濃くなって自動運転システムでは対応できないときなど)では、運転の制御がシステムからドライバーに戻される。その時にも、ドライバーが運転できる状況にあれば制御はドライバーに戻されるが、ドライバーが寝ているなどして運転できる状況にはないとシステムが判断した場合には、システムは車両を路肩などに安全に停止する。そうしたシーンで、ドライバーが運転できる状況にあるのかをチェックする仕組みがDMSで、カメラなどを利用してドライバーの状況(起きているか、寝ているかなど)をチェックする。

 このDMSだが、レベル2やレベル3では本来は必要とされていなかったが、レベル2の自動運転で自動車側がアクセルやブレーキの制御を行なっている状態でドライバーが寝てしまい、それが悲惨な事故につながっているなどの経緯もあり、欧州の自動車の安全テストであるEuro NCAPでは2022年からDMSの装備が必須とされるなど、より幅広い車両への装備が広がり始めている。

DMSで必要とされる設計要求

 チャン氏はDMSにおける設計要求に関しては「運転手の状況をチェックするマシンビジョン機能、近赤外線、グローバルシャッターセンサー、小型/低消費電力」などをあげ、OVM9284はそれらのニーズを満たす製品だと説明した。

グローバルシャッター
Aピラーに統合可能

 チャン氏によれば、OVM9284は従来のローリングシャッターに変えてグローバルシャッターを採用しており、940nmの近赤外線の照射は短時間ですむため、LEDの消費電力を低く抑えることができるという。このため超小型化が可能で、Aピラーなどのスペースが十分ではないところに搭載することができ、運転手にとっても「見られている」という感じがなくなるというメリットがあるという。

ウェハーレベルでカメラモジュールを統合しているため、小型、低消費電力
DMSのデモ

 チャン氏によればこのOVM9284はレンズなどの結合はウェハーレベルで行なわれ、よりコンパクトに低消費電力にできると説明した。

 OmniVisionの発表によれば、OVM9284はすでにサンプリング提供開始されており、量産出荷は第4四半期(10月~12月期)が予定されている。