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ホンダF1今季初優勝、「勝つかもよ」と広報に伝えていた。山本雅史 マネージングディレクター

2020年8月9日 決勝

優勝トロフィーを持つ田辺豊治 HONDA F1テクニカルディレクター(左)と、山本雅史 Honda F1マネージングディレクター(右) (c)Getty Images / Red Bull Content Pool

 8月9日(現地時間)、F1第5戦 70周年記念GPがイギリスで開催された。この第5戦において、ホンダのPU(パワーユニット)を搭載したマックス・フェルスタッペン選手(33号車 レッドブル・ホンダ)がメルセデス勢を抑え、見事優勝。ホンダPUに今季初勝利をもたらした。

F1第5戦 70周年記念GP、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン選手が今季初優勝 メルセデス勢は2位、3位に

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1270351.html

 レース後、ホンダF1を統括する山本雅史 Honda F1マネージングディレクターのリモート記者会見が行なわれた。山本氏は、開幕からの5戦を振り返り、土曜日のQ2(予選2)でハードタイヤを装着してQ3(予選3)に進出するというストラテジ(戦略)を確実に実行できたことが勝利のポイントだと語った。

勝利の記念写真。スタッフ全員レッドブルを持っている (c)Getty Images / Red Bull Content Pool
記念撮影後、レッドブルシャワー開始。笑顔で逃げ惑う山本氏と田辺氏 (c)Getty Images / Red Bull Content Pool
Honda F1マネージングディレクター 山本雅史氏

 5戦を振り返ってみますと、開幕戦は電装系のトラブルでレッドブルは2台ともストップしてしまいました。それ以後、マックスについては常に表彰台に乗っていますし、先週のイギリスGPの経過を学習してというか、検証して今週に臨みました。

 今季初優勝というのが本当に素晴らしいと思います。今週は先週とは違って金曜日からマックス(マックス・フェルスタッペン選手)は落ち着いていました。先日、田辺に対する質問で(FPの)周回数がいつもより少ないのではという質問もいただいていましたが、赤旗で最後走れなかったこと以外は、プログラムどおり行なえていました。マックスの金曜日のコメントにあるように、自分たちのやりたいことがやれて満足と。金曜日からレッドブルは落ち着いていたというのが印象的でした。

 今回の優勝は、はっきり言って土曜日のストラテジ(戦略)だと思います。ピレリも言っているように、唯一Q3にハードタイヤで行った(Q2をハードタイヤで通過した)。過去にいなかった。レースは攻めていかなければいけないなということを改めて痛感した予選でした。それをちゃんと成し遂げるレッドブルのチーム力、それをうまくやり切ってくれるマックスのドライバビリティの高さ、それが土曜日だと思います。

(その土曜日の予選があったので、上位陣の中で)スタートはハードタイヤでレースをできました。私たちもレースの中で、とくに1周目の3コーナー、4コーナーまでうまくクリアすれば、マックスの腕をもってすれば、3位をキープしてゴールラインを越えてくれれば、ストラテジ的におもしろいレースになるよねと言っていました。

 先ほど田辺も言っていましたが、まだまだメルセデスのマシンとPU(パワーユニット)にかなわないところもあるのですが、レッドブルの戦略性の高さ、チーム力があれば、F1を大きく捉えた総合的なパフォーマンスでまだまだ割って入れる隙間があるなと感じたレースだったと思います。

 何よりも今年はアルファタウリがよくなっていて、今日は本当にガスリー(ピエール・ガスリー選手)がかわいそうだったのですが、タイヤのデグラデーションがひどくなり、2回目のタイヤのハードが非常に厳しい状態で、最終的に11位となりポイントが取れませんでした。そんな中、クビアト(ダニール・クビアト選手)もポイントを取ってくれました。

 アルボン(アレクサンダー・アルボン選手)も徐々にクルマに慣れてきています。最終的に5位で本人は不満そうでしたが。そういった意味では後半戦に私たちをワクワクさせてくれるドライバーかなと思っていますし、今後が楽しみです。

 まず、何より今週から日本はお盆休みで、ホンダにとっても日本のファンにとってもお盆休みにいい報告ができたことを心からうれしく思っています。


 ホンダのF1活動を統括する山本氏らしく、最後は勝利のタイミングのよさについても言及。ホンダのF1活動が企業の活動である以上、その勝利が会社の利益に結びつかなければならない。そのためには、多くの人にホンダPUの勝利を知ってもらう必要があり、期待された2020年シーズンの初勝利を最高のタイミングで届けられたということだろう。

 この勝利のタイミングについて、「もともとここを勝利のタイミングとして狙っていたのか?」「次週のスペインGPもお盆休みにあたるが、お盆休みの締めくくりも期待してよいか?」と山本氏に質問してみた。

 山本氏は、「個人的には今週、今までの中では一番勝機はありました。僕、広報(モータースポーツ広報、今シーズンのF1は帯同スタッフに制限がかかっているため、日本で時差のある欧州とのやりとりを行なっている。リモート記者会見などもモータースポーツ広報さんが設定)には『勝つかもよ』言っていたのです。僕、めったに言わないので。僕が言ったときに勝っています」と、自信があったことを明かす。それは、レースに向かうまでの流れであったり、チームの動きであったりだという。

 山本氏は昨年のオーストリアGPでの初勝利前も「勝つかもよ」と伝えていたほか、このリモート記者会見も通常は田辺氏だけの出席(日本では深夜の時間帯になるので、あまり長くならないように)なのだが、70周年記念GPに関しては山本氏の出席も事前に決まっていた。きっと山本氏に「勝つ」という自信があり、それだけの準備をしてきたという裏付けがあったのに違いない。

 スペインGPに関しては、「スペインは……微妙です。もちろんスペインも勝ちに行きたいと思っていますが、みなさんご存じのように第3セクターはメルセデスが速すぎるので。そこのレッドブルのセットアップが決まるか、決まらないかです。金曜日に走らないと分からないです。第3セクターを金曜日走った感じで……。正直、今回よりも勝機は低いかな。でもあきらめていません」と、山本氏らしく正直な気持ちを語る。

 世界の頂点で戦っているので、勝つのは簡単ではないし、なにより今回負けたメルセデス勢も現状を分析してなんらかの改良は施してくるだろう。一つ一つが戦いである以上、ホンダにはそれを上回る工夫をし続けるという厳しい現実が待っている。その戦いに一人一人のファンが声援を送ることが、ホンダの力になっていくし、SNS時代でもあるので声援も確実に届く。何より、欧州を転戦しながら日本のお盆休みを忘れない山本氏は、その声をしっかり受け止めてくれるに違いない。

 次戦の第6戦スペインGPは、8月14日~16日に開催される。山本氏の語る金曜日のFP1、FP2において、第3セクターの速さに注目していただきたい。

F1第5戦 70周年記念GP 決勝結果
順位カーナンバードライバー車両周回数タイム(トップとの差)
133マックス・フェルスタッペンレッドブル・レーシング・ホンダ521時間19分41秒993
244ルイス・ハミルトンメルセデス52+11.326s
377バルテリ・ボッタスメルセデス52+19.231s
416シャルル・ルクレールフェラーリ52+29.289s
523アレクサンダー・アルボンレッドブル・レーシング・ホンダ52+39.146s
618ランス・ストロールレーシングポイント・BWT・メルセデス52+42.538s
727ニコ・ヒュルケンブルグレーシングポイント・BWT・メルセデス52+55.951s
831エステバン・オコンルノー52+64.773s
94ランド・ノリスマクラーレン・ルノー52+65.544s
1026ダニール・クビアトアルファタウリ・ホンダ52+69.669s
1110ピエール・ガスリーアルファタウリ・ホンダ52+70.642s
125セバスチャン・ベッテルフェラーリ52+73.370s
1355カルロス・サインツマクラーレン・ルノー52+74.070s
143ダニエル・リカルドルノー51+1 lap
157キミ・ライコネンアルファロメオ・レーシング・フェラーリ51+1 lap
168ロマン・グロージャンハース・フェラーリ51+1 lap
1799アントニオ・ジョビナッツィアルファロメオ・レーシング・フェラーリ51+1 lap
1863ジョージ・ラッセルウイリアムズ・メルセデス51+1 lap
196ニコラス・ラティフィウイリアムズ・メルセデス51+1 lap
NC20ケビン・マグヌッセンハース・フェラーリ43DNF
(c)Getty Images / Red Bull Content Pool