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パイオニア、デジタル地図子会社インクリメントP売却説明会 矢原社長「動的なデータで差別化したい、静的な地図データは差別化に影響しない」
2021年3月10日 14:14
- 2021年3月10日 発表
インクリメントP売却
パイオニアは3月10日、100%子会社「インクリメントP(インクリメント・ピー」」売却を発表。同日、連結子会社の地図事業の譲渡およびパイオニアの成長戦略に関するオンライン説明会を開催した。説明会にはパイオニア 代表取締役 社長執行役員 矢原史朗氏が登壇。インクリメントP売却と、パイオニアの今後の戦略について語った。
矢原社長は今回の売却について、「新ビジョン、新戦略の中で両社にとって成長を加速できるもの」と説明。インクリメントPにとってもパイオニアの看板が外れることで外部パートナーの参加が容易となってデータ関連の開発が加速、パイオニアにとってもその開発されたデータを使えることはメリットになるという。今後パイオニアは、「ソリューションサービス事業の進化を加速していく」(矢原社長)と大きな流れを説明した。
現在、パイオニアの事業の柱はカーナビやカーオーディオ、ドライブレコーダーなどハードウェアに関するものが多いが、2025年を見据えたビジョンではソリューションサービス事業をもう一つの柱にしていくという。
そのための新サービスとして、矢原社長は音によるHMI(Human Machine Interface)のソリューション発表を予定していると、将来戦略を発表。これは、家ではスマートスピーカーがあり、外ではスマートフォンがあるものの、クルマの中ではまだ標準的なサウンドインターフェースがないことに着目。「制約の多い、非常に特殊な環境である」(矢原社長)クルマの中においてパイオニアは強みを発揮し、音によるHMIのサービスを提供できるものであるとした。
動的データ重視
矢原社長は、地図事業は静的データであると位置付け。今後パイオニアは動的データ事業に注力するという。「結論から言うと、われわれが差別化したいのは動的なデータ。われわれのハードウェアのリアルタイムデータを解析したことから生まれる動的データ」を重視。「静的なデータである地図データに関しては、差別化という観点においてはほとんど影響しない」(矢原社長)と語る。
現在パイオニアが開発に注力しているLiDARなどはインクリメントPの地図データと協調しながら作られている部分もある。そのため、将来事業であるLiDARについて確認してみたが、LiDARなどは動的データを生み出す製品であるため継続事業になるという。これは動的データを生み出しているドライブレコーダーも同様のため、パイオニアはいわゆるマップデータのベースレイヤーではなく、そこに重畳されていくヒヤリハットデータなど付加価値データに注力していくということだろう。
その付加価値データに音のHMIを組み合わせていくとなると、すでに同社のカーナビなどで一部実現されている、交通事故の多い交差点などでの警告音発生などをクラウドのサービスレイヤーで提供。自動車会社はパイオニアと契約することで、そのような運転にとって意味のあるデータを音で提供できるようになる。
パイオニアは、そのような価値あるデータをハードウェアとしてではなく、クラウドサービスなどのサービスやミドルウェアとして提供していき、サブスクリプションのような形態を目指している。ハードウェア売りきりではなく、サブスクリプションとすることで常に新しいデータを提供し、常に新しいサービスをユーザーが得られるという価値の提供へと舵を切る。
なお、インクリメントPの売却額(譲渡額)については非開示。取引の実行日は2021年6月1日。パイオニアはNTTドコモや本田技研工業と協業しているが、インクリメントPが連結から外れることでの影響はないとしている。