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ホンダが支援するシューズイン型ナビゲーションシステム「あしらせ」実証実験中! 視覚障がい者にも移動の自由を!

2021年6月11日 発表

視覚障がい者の移動の自由を支援するシューズイン型のナビゲーションシステム「あしらせ」

 どうもアカザーっす! 2000年に怪我で脊髄を損傷して以来、車いす歴21年のオレです。

 普段の移動には車いすが欠かせないオレですが、21年前に比べてめちゃくちゃバリアフリー化が進んだとはいえ、いまだ移動の際に苦労するコトはけっこうあったりします。

どうもアカザーっす! 車いすユーザー歴21年です。(イラスト・水口幸広)

 でも、ここ最近のICTの進歩により、これまでにないくらいすごいスピードでバリアフリー化が進んでいるのを肌で感じます!

 今日ご紹介するのはそんなICTでバリアフリー化を促進させる、少し未来のガジェット「あしらせ」です! これは、視覚障がい者の歩行をサポートするシューズイン型のナビゲーションシステム。

ホンダが支援する新事業創出プログラムから誕生!

ホンダ発のベンチャー企業Ashiraseの代表取締役千野歩氏

 本田技研工業が2017年より実施している新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」から生まれた初のベンチャー企業となる「Ashirase(アシラセ)」。その設立を発表する記者会見が6月11日にオンラインで開催されました。

 そこでAshiraseの基幹事業として発表されたのが、2022年度中の販売を目指して開発中の、視覚障がい者用ナビゲーションシステム「あしらせ」です。

オンライン記者会見で開発中の「あしらせ」を紹介する、ホンダ発のベンチャー企業Ashiraseの代表取締役千野歩氏

 Ashiraseの代表取締役である千野歩氏は、本田技術研究所で自動運転システムやモーター制御の研究に携わっていた方。でも、あることがきっかけで「あしらせ」を開発したいと思うようになったとのこと。

 そのきっかけというのが、3年前に目の不自由だった千野氏の奥さまの祖母が川に転落して亡くなるという不慮の事故。

視覚障がい者であった身内の事故をきっかけに「あしらせ」の開発を決意

 それ以来、視覚障がい者用ナビゲーションシステムを開発するために、多くの視覚障がい者にインタビューを実施。そのインタビュー取材なかで、彼らがふと口にした「自由に移動するなんてことは諦めている」という言葉にショックを受けたという。

自由な移動を視覚障がい者は普通に諦めているという現実

 私たちが当たり前にやっている自由な移動を、視覚障がい者は普通に諦めている。その事実にショックを受けた千野氏は、視覚障がい者にとっての当たり前となっている「移動の不自由さ」を何としても解決したいと強く願うようになったという。

コロナ禍でさらに不自由になる視覚障がい者の移動

 現在、日本には約164万人の視覚障がい者が存在しているそうなのですが、その方たちの外出方法はタクシー、盲導犬、ガイドヘルパー、家族同伴などに限られ、それぞれにバリアがあり、なかなか気軽に外出することができないのが現状。

視覚障がい者の移動にはさまざまな制約がある

 また、日本の視覚障がい者の大半である約145万人が、うっすらとは周りが見え、条件さえそろえば単独歩行が可能なロービジョンと呼ばれる方々。

 しかし、この方々が移動時の目印にしていたお店の明かりなどが、コロナ禍での休業や閉店により消失。これまで以上に移動が制限されており、その傾向は今後も継続する懸念もあるという。

少し見えるロービジョンの方でも、コロナ後の社会では移動が制限される恐れが

視覚障がい者の単独歩行を支援するナビゲーションシステム

 そんな、視覚障がい者たちの不自由な移動の現状を打破すべく、開発中の視覚障がい者用ナビゲーションシステム「あしらせ」は、靴の中に取り付ける立体型のモーションセンサー付き振動デバイス。

 専用アプリを入れたスマートフォンと組み合わせて使用することで、視覚障がい者の単独移動を支援する。

靴の中に取り付ける振動デバイスと、専用アプリを入れたスマートフォンを組み合わせて使用する

 靴の中に仕込んだモーションセンサーと電子コンパスで位置情報などを計測し、そのユーザー情報をスマートフォンのナビアプリに送り、その情報をもとにアプリ上で移動ルートを設定。その際、目的地などの設定は音声入力で行なう。

靴の中に仕込んだ振動インターフェースと独自アルゴリズムのナビアプリ、それぞれが組み合わさることでルートを案内を可能にする

 ナビを開始すると、生成されたルート情報をもとに、曲がり角などにさしかかった際に、靴に取り付けたデバイスが振動、曲がる方向などをユーザーに伝えるという仕組み。

足の甲、側面、かかとに仕込まれた振動子により、使用者に進行方向を伝える仕組み

具体的なナビゲーションのながれ

①スマートフォンで専用アプリを立ち上げ、目的地を音声もしくは画面入力で設定

【あしらせの使い方】

1:スマートフォンで専用アプリを立ち上げ、目的地を音声もしくは画面入力で設定

2:最初に直線・左右どちらの方向に進むべきかの指示が出るので、指示のとおりに歩行開始

3:直進時は足の甲を一定間隔で振動させることにより、ルートに沿って進んでいることを使用者に伝える

4:曲がり角に差し掛かった際には、まず全体を激しく振動させ、一時停止を使用者に促す

5:停止後、左もしくは右側を振動させることで左折もしくは右折を促し、目的地までナビゲートする

②最初に直線・左右どちらの方向に進むべきかの指示が出るので、指示のとおりに歩行開始
③直進時は足の甲を一定間隔で振動させることにより、ルートに沿って進んでいることを使用者に伝える
④曲がり角に差し掛かった際には、まず全体を激しく振動させ、一時停止を使用者に促す
⑤停止後、左もしくは右側を振動させることで左折もしくは右折を促し、目的地までナビゲートする
視覚障がい者用歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」

視覚障がい者に寄り添えるナビゲーションシステム

「あしらせ」が掲げている開発コンセプトは “安心” “余裕” “持続的な達成感” の3つ。“安心”とは、視覚障がい者が利用している既存のインターフェースである、足裏、耳、白杖を持つ手などを邪魔しないナビゲーションであること。“余裕”とはルートに迷わない誘導情報の提供。これらふたつは、足の甲や側面やかかとを振動させることで実現。“持続的な達成感”は、生活に溶け込んだUXデザインにすることで、具体的には取り付けたまま脱ぎ履気が可能で、TPOに合わせて靴を選べたり、充電は週1回簡単なマグネット充電にすることなどで対応するという。

「あしらせ」が掲げている開発コンセプトは“安心”“余裕”“持続的な達成感”の3つ
“安心”とは、視覚障がい者が利用している既存のインターフェースである、足裏、耳、白杖を持つ手などを邪魔しないナビゲーションであること
“余裕”とはルートに迷わない誘導情報の提供。これらふたつは、足の甲や側面やかかとを振動させることで実現
“持続的な達成感”は、生活に溶け込んだUXデザインにすることで、具体的には取り付けたまま脱ぎ履気が可能で、TPOに合わせて靴を選べたり、充電は週1回簡単なマグネット充電にすることなどで対応するという
実証実験に参加し、開発中の「あしらせ」をすでに体験された、ロービジョンの谷田氏によれば、「歩くことに集中できるので周りを確認しながら歩ける。それが街を楽しみながら歩くことにつながる」とのこと

 実証実験に参加し、開発中の「あしらせ」をすでに体験された、ロービジョンの谷田氏によれば、「歩くことに集中できるので周りを確認しながら歩ける。それが街を楽しみながら歩くことにつながる」とのこと。

 高齢化もあって、2030年には200万人ちかくまで増えると予想されている日本の視覚障がい者。こういった新しいヒューマンマシンインターフェース(HMI)の登場で、すべての人が安全に自由に移動できるような、さらなるバリアフリー社会が加速することを願って止みません。

 実は筆者の叔父も数年前からロービジョンとなり、それまでは歩きでどこへでも行くほど散歩が好きだったのですが、ここ数年は家の周りをぐるぐると歩くだけに。2022年に製品化となった暁には、いの一番に叔父にプレゼントしたい! そんな期待を抱いてしまう「あしらせ」でした。

「あしらせ」は2022年度の製品化を目標に開発中。