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アウディ、電動ドライブトレーン搭載の「RS Q e-tron」で2022年ダカールラリー参戦

2021年7月23日(現地時間) 発表

電気モーターで駆動するラリーカー「RS Q e-tron」

 独アウディは7月23日(現地時間)、2022年1月に開催されるダカールラリーに電動ドライブトレーン搭載の「RS Q e-tron」で参戦すると発表した。RS Q e-tron(プロトタイプ)は7月初旬に独ノイブルクで最初の走行テストを行なっており、年末までに集中的なテストプログラムとクロスカントリーラリーへの最初のテスト参戦が計画されているという。

 RS Q e-tronは電気モーターで駆動するラリーカーだが、砂漠に充電ステーションがないため走行中に高電圧バッテリを充電するエネルギーコンバーターの役割を担うTFSIエンジンを搭載。このエンジンはDTM(ドイツツーリングカー選手権)で採用されているもので、もっとも効率的な4500-6000rpmの範囲で作動するため、その燃料消費量はkWhあたり200gをはるかに下まわるという。

RS Q e-tron

 前後アクスルには、2021年シーズンのフォーミュラEを戦うためにAudi Sportが開発したMGU(モータージェネレーターユニット)が搭載され、小変更を加えるだけでダカールラリーで使用することが可能になった。まったく同じ設計の3番目のMGUは、エネルギーコンバーターの一部として走行中に高電圧バッテリを充電するために使用するとともに、制動時にもエネルギーを回生。バッテリ重量は約370kgで、容量は約50kWhとのこと。

 また、RS Q e-tronは1速の前進ギヤを搭載。一般的なBEV(電気自動車)と同様、フロントアクスルとリアアクスルは機械的に接続されていないため、アウディは前後アクスル間のトルク配分を制御し、自由に設定可能なバーチャル センターディファレンシャルとして機能するソフトウェアを開発した。これによってプロペラシャフトや機械的なディファレンシャルを搭載する必要がなくなり、重量とスペースを削減できるという2次的なメリットを生み出しているという。

 なお、RS Q e-tronの電動ドライブトレーンの最大システム出力は500kWとしており、ダカールラリーでどの程度の出力が認められるのか、現在主催者が最終調整を行なっている段階としている。

 今回の発表について、Audi Sport マネージングディレクター兼Audi Motorsport責任者のユリウス・シーバッハ氏は「アウディはquattroで、世界ラリー選手権に一大革命をもたらしました。また、電動化したドライブトレーンでル・マン24時間レースを制した最初のブランドとなりました。今回、アウディはダカールラリーに参戦して、新しい時代の到来を告げたいと考えています。その一方で、ダカールラリーへの参戦は、過酷な条件下で私たちのe-tronテクノロジーをテストし、さらなる開発を推進する舞台にもなるでしょう。Audi RS Q e-tronは、アウディのスローガンである“Vorsprung durch Technik”(技術による先進)に基づき、まったく白紙の状態から記録的に短い時間で製作されました」とコメント。

 また、Audi Sport モータースポーツプロジェクト開発担当責任者のステファン・ドライヤー氏は「バッテリは、パートナー企業と共同で独自に開発しました。私たちエンジニアは、基本的にすべてのコンポーネントに開発の余地が残されていると考えています。しかし、ドライブトレーンシステムに関しては、フォーミュラEですでに97%を超えるシステム効率を達成していますので、これ以上の改善の余地はありません。しかし、バッテリとエネルギーの管理では状況がまったく異なります。これは、eモビリティの開発において、最大の可能性が秘めている分野です。極めて過酷なダカールラリープロジェクトから得られたノウハウは、将来の市販モデルへとフィードバックされます。いつものように、私たちはこのプロジェクトでも、市販モデルの開発スタッフと緊密に協力しています」と述べている。