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新型バッテリEV、トヨタ「bZ4X プロトタイプ」とスバル「ソルテラ」の違いを考える
2021年11月12日 00:00
- 2021年11月11日 公開
日本で初公開したトヨタのバッテリEV「bZ4X」と、世界初公開されたスバルのバッテリEV「ソルテラ」
トヨタ自動車の新型BEV(Battery Electric Vehicle、バッテリEV)である「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」が11月9日に日本で初公開された。そして、本日11日、スバルの新型BEV「ソルテラ」が世界初公開された。この2つのクルマは、かねてからアナウンスされていたように、トヨタとスバルの共同開発車になる。
アライアンスとしては、86/BRZ、GR86/BRZに続く3つ目の車種(2つ目のプラットフォーム)。86/BRZ系はスバルが生産を行なったが、bZ4X/ソルテラはトヨタが生産を行なう。開発もトヨタのZEVファクトリーにスバルの技術者が出向して行ない、「SUBARU×TOYOTA いっしょにいいクルマつくろう!」とのスローガンのもと、作り上げられたSUVタイプのEVプラットフォームから生まれたクルマになる。
プラットフォームの特徴としては、BEVのために完全に新設計されており、低重心&高剛性を実現。バッテリを剛性部材として使いながら、それを取り囲むようにシャシー構成部材がデザインされるなど、TNGAやSGPの思想が色濃く表われたものとなっている。ちなみに、駆動用バッテリに用いられるリチウムイオン電池は、トヨタとしても初の水冷を採用しており、10年後も90%以上の性能を発揮する新開発のものになる。
bZ4X主要諸元(日本仕様、社内測定値)
仕様 | 2WD(FWD)モデル | 4WD(AWD)モデル |
---|---|---|
車両重量 | 1,920kg~ | 2,005kg~ |
車両総重量 | 2,195kg~ | 2,275kg~ |
最小回転半径 | 5.7m | |
一充電走行距離(WLTCモード) | 500km前後 | 460km前後 |
全長 | 4,690mm | |
全幅 | 1,860mm | |
全高 | 1,650mm(アンテナ含む) | |
ホイールベース | 2,850mm | |
室内長 | 1,940mm | |
室内幅 | 1,515mm | |
室内高 | 1,160mm(ノーマル/ソーラールーフ) | |
乗車定員 | 5名 | |
最小回転半径 | 5.7m | |
モーター | 交流同期電動機 | |
最大出力(フロント) | 150kW | 80kW |
最大出力(リア) | - | 80kW |
最大出力(全体) | 150kW | 160kW |
動力用電池 | リチウムイオン | |
総電圧 | 355V | |
総電力 | 71.4kWh | |
AC充電器最大出力 | 6.6kWh | |
DC充電最大出力 | 最大150kW | |
サスペンション フロント | ストラット式コイルスプリング | |
サスペンション リア | ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング | |
加速性能(0-100km/h) | 8.4秒 | 7.7秒 |
ソルテラ主要諸元(日本仕様、社内測定値)
仕様 | 2WD(FWD)モデル | 4WD(AWD)モデル |
---|---|---|
車両重量 | 1,930kg~ | 2,020kg~ |
車両総重量 | 2,205kg~ | 2,295kg~ |
全長 | 4,690mm | |
全幅 | 1,860mm | |
全高 | 1,650mm(アンテナ含む) | |
ホイールベース | 2,850mm | |
室内長 | 1,940mm | |
室内幅 | 1,515mm | |
室内高 | 1,160mm(ノーマル/ソーラールーフ) | |
乗車定員 | 5名 | |
最小回転半径 | 5.7m | |
最低地上高 | 210mm | |
一充電走行距離(WLTCモード、日本国内向け基準) | 530km前後 | 460km前後 |
モーター | 交流同期電動機 | |
フロントモーター最高出力 | 150kW | 80kW |
リアモーター最高出力 | - | 80kW |
システム最高出力 | 150kW | 160kW |
動力用電池種類 | リチウムイオン電池 | |
動力用電池総電力量 | 71.4kWh | |
動力用電池総電圧 | 355V | |
AC充電器最大出力 | 6.6kW | |
DC充電器最大出力 | 最大150kW | |
ステアリング | ラック平行式電動パワーステアリング | |
サスペンション形式(前/後) | ストラット式コイルスプリング/ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング | |
ブレーキ(前/後) | ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク | |
駆動方式 | 前輪駆動方式 | 4輪駆動方式 |
ホイール | 18インチホイール | 18インチホイール/20インチホイール |
タイヤサイズ | 235/60R18 | 235/60R18、235/50R20 |
トヨタとスバルで共同開発、しかし実際のクルマには違いもある
bZ4Xとソルテラは共同開発されたクルマではあるが、兄弟車というよりお互いのメーカーの色が強く反映されたクルマになっているようだ。bZ4Xはプロトタイプという位置づけで、まだまだ変わっていく部分があり不明な点も多いが、現時点で分かっている違いについて紹介していく。
まずは、大きな話題となった、ステアバイワイヤでコントロールするワンモーショングリップ仕様のステアリング。日本で展示されたbZ4X、世界初公開されたソルテラのいずれにも装着されていなかったが、これは当初bZ4Xのみのオプションとして登場しそうだ。トヨタのリリース発表時は中国市場からとされていたが、反響が大きく、要望次第では日本市場にも当初から設定されるかもしれないとトヨタの担当者は話をしてくれた。
一方スバルのソルテラに関しては、まずは丸いステアリングでとしており、当初は設定予定がない。しっかり作り込んだEVならではの走りを楽しんでほしいとの意思が込められている。
このステアバイワイヤはオプション設定でもあり、価格も大きく上がりそうなため、ラインアップ上設定しないという判断もありだろう。
一方、ソルテラだけに用意されている装備としては、パドルタイプの回生ブレーキコントロールがある。ソルテラのステアリングコラムにはパドルが装備されており、これを使って標準段階から緩い方へ1段階、強い方へ3段階調整できるとのこと。さらにリジェネというモードがあり、実質的にワンペダルで操作できるほどの強い回生を発生できるという。
パドルによる回生ブレーキコントロールは、三菱自動車のアウトランダーPHEVにも装備されており、とくに雪道での速度コントロールに強みをもつ。雪道を走るユーザーの多いスバルとしては、EVならではの機能として採り入れたかったのだろう。
また、加速方向ではソルテラはパワーカーブを3段階に設定可能。パワー、標準、エコといった形でアクセルと出力の関係を切り替えることができる。SI-DRIVEといった形でスバルのガソリン車ではおなじみの機能だが、それをBEVでも採り入れている。一方、トヨタは標準とエコの2段階のパワーカーブ。2段階がよい、3段階がよいとかではなく、両社の思想の違いが表れている部分だ。いろいろ調整できるスバルと、分かりやすい選択肢を提示するトヨタという哲学の違いになる。個人的には、回生、コースティング(惰行)、加速といったところが明確に足でコントロールできるパワーモードが望ましいと思うが、この辺りは好みもあるので実車登場時の試乗などで確かめていただきたい。
さらに、サスペンションに組み込まれているショックアブソーバーの設定もbZ4Xとソルテラで違うようだ。GR86とBRZのサスペンション設定が異なるのはよく知られた話だが、bZ4Xとソルテラでもショックアブソーバーの減衰力に差が出ている。若干、ソルテラのほうが強い減衰力を発生するようなセッティングになっているそうだ。しかしながら現在発表された仕様では、ソルテラのほうが若干重めの数値。室内装備などの増加に対応するためかもしれず、一概にどちらが硬いとは言いづらい部分でもある。これも出てからのお楽しみになる。
ちなみに数値の違いが大きかったのが、2WD車の一充電走行距離(WLTCモード)。トヨタは500km前後、スバルは約530kmとしており、bZ4Xとソルテラで6%ほどの違いが出ている。重量はソルテラのほうが重く不利になると思われるが、いずれも社内測定値のため、正式発表までなんとも言えないところ。4WD車は460kmでそろっているため、とくに違いが目立っている。
スバルによると、開発にはスバルのエクステリアデザイナー、インテリアデザイナーも加わっており、フロントまわりなどスバルらしいデザインも実現され、bZ4Xとソルテラの印象は大きく異なる。ただ、外観の印象以上にクルマとしての仕上げが異なっているのには驚いた。2022年半ばとアナウンスされている発売時期にはその全貌が明らかになっているだろう。