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新生パイオニアを象徴する新コネクテッドデバイス「NP1」発表会 2輪用も開発して2030年には1000億円のビジネスに

2022年2月10日 開催

ドライビングパーソナル音声AIを搭載した新しいコネクテッドデバイス「NP1」の発表会を都内で開催

 パイオニアは2月10日、「音声」と「通信」による新しいドライブ体験を実現するドライビングパートナー「NP1」の発表会を都内で開催した。会場ではパイオニア 代表取締役 兼 社長執行役員の矢原史朗氏から新事業に関するプレゼンテーション、常務執行役員 坂本雅人氏から新商品に関するプレゼンテーションが実施された。

 今回発表されたNP1は、ドライビングパーソナル音声AIを搭載した新しいコネクテッドデバイス。従来のナビでは画面の表示と音によるルート案内が基本になっていたが、NP1では音声だけで案内する。開発のきっかけは、車載機器の著しい進化に伴ってドライバーが車内で接する情報量が増えており、「目」や「手」で行なう機器の操作や情報の確認がドライバーにとって大きな負荷やストレスになっていたこと。これを解消しつつ、ドライバーや車両の状況を把握しながら今後の行動を予測し、音声により必要な情報をドライバーにとって最適なタイミングで伝えるモビリティAIプラットフォームの開発を進めてきた。

 NP1は、新開発のモビリティAIプラットフォーム「Piomatix(パイオマティクス)」を初採用しており、音声だけで操作や検索が行なえる。通信の常時接続により、常に最新の地図や機能で音声によるルート案内や情報提供を可能にした。Cerenceの自然対話型音声認識エンジンを採用し、ドライビングパーソナル音声AIと組み合わせることでクルマに最適化した音声コミュニケーションを実現している。また、録り逃しのないクラウドドライブレコーダー機能、車室内をオンライン化するWi-Fiスポット機能など多彩な機能をコンパクトなボディに搭載しているのが大きな特徴になっている。

 本体サイズは118×36×93mm(幅×高さ×奥行き)で、前後一体型2カメラとマイク・スピーカーシステムを搭載。CPUにクアルコム製を採用したほか、カメラはSTARVIS技術を搭載するソニー製CMOSセンサーを採用し、前方カメラおよび車内/後方カメラはフルHD画質(1920×1080ピクセル)、有効画素数はともに約200万画素とした。位置センサーにはGPSや6軸モーションセンサーなどを用いる。

NP1の本体サイズは118×36×93mm(幅×高さ×奥行き)。記録画角は前方カメラが水平130°/垂直68°/対角159°、車内/後方カメラが水平124°/垂直65°/対角151°。レンズF値はいずれもF2.0

 なお、NP1は2月10日から予約を開始し、3月2日に発売となる。通信とサービス利用料1年分が付く「ベーシックプラン」、通信とサービス利用料3年分が付く「バリュープラン」の2つの購入プランが用意される。価格はベーシックプランが6万5780円、バリュープランが9万3500円となっており、バリュープランはベーシックプランで毎年更新するよりも3年間で3960円お得な設定となっている。

 さらに必要に応じて移動中の車内でドコモのデータ通信(LTE)を、Wi-Fiを用いて利用できる車載向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」(550円/日、1650円/月、1万3200円/年)を用意するとともに、専門の取付け事業者が希望する場所に出張して1~2時間程度でNP1の取り付けを行なう「NP1出張取付け」(1万3750円~)を設定している。

パイオニア、カーナビとドライブレコーダー機能が合体した新製品「NP1」ファーストインプレッション

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1387168.html

2輪用NP1の開発も視野に2025年に300億円、2030年に1000億円のビジネスに成長させる

パイオニア株式会社 代表取締役 兼 社長執行役員の矢原史朗氏

 発表会の冒頭に登壇したのは、2020年1月1日付でパイオニアの代表取締役 兼 社長執行役員に就任した矢原史朗氏。同社は2018年12月にベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)による770億円の出資および現株主からの約250億円での株式買い取りによる「パイオニア再生プラン」を発表。これは今後の事業運営に必要不可欠な運転資金を確保し、加えてBPEAの経営支援を得ることでパイオニアの安定的な事業継続に対する不安を払拭し、事業運営の安定を実現するための計画で、その中で矢原氏はパイオニアの経営再建を託された人物になる。昭和61年(1986年)に伊藤忠商事に入社して自動車部門に従事したのち、平成10年(1998年)に日本GE、平成16年にGE横河メディカルシステム、平成19年(2007年)にベインキャピタルジャパンに入社。パイオニアには令和元年(2019年)12月に入社している。

 その矢原社長からは今回のNP1がNext Productの略称であること、NP1の開発にはモビリティAIプラットフォームのPiomatixを用いたこと、オープンプラットフォームであるPiomatixをベースにパートナー企業と共に成長していくのが新生パイオニアの姿であることが紹介されるとともに、経営再建にあたって「よいアイデアをマネタイズできるようにしっかりと戦略を突き詰めること」「縦割りや官僚主義を徹底的に排除して意思決定のスピードを速めること」「ものづくりの強さだけにこだわり続けるのではなく、データを活用したサービス事業の成長に投資をすること」、特にこの3点を粘り強く続けたことで2021年3月期に2期連続で黒字を達成することができたという。

 これをもって矢原社長は「社内の再建ステージは完了し、これからは成長投資ステージに入る」と宣言。とくにデータを活用したサービス事業への投資を加速するとし、マクロソフトやGoogle、KDDIといったさまざまな企業から“パイオニア愛”のある人材を募ってプロパー社員とともに切磋琢磨しながらNP1の事業化を担う「NP事業本部」をはじめ、「SaaS(Software as a Service)テクノロジ センター」「サウンド事業統括グループ」などを新設している。

 こうした激動の中で生まれたNP1について、矢原社長は「パッと見は画面のないドライブレコーダー、でも中身はすごいドライブレコーダー、そしてすごいカーナビ、すごいスマートスピーカーという風に仕上がっています」とアピールした。

パイオニア株式会社 常務執行役員の坂本雅人氏

 ここでバトンをタッチした常務執行役員の坂本雅人氏からはNP1の製品概要が紹介された。坂本氏は「NP1をひと言でいうと“会話するドライビングパートナー”です。クルマの便利がこれ1つに詰まった、ドライブの体験がこれまでと全く違うものに変えてくれる助手席のパートナーのような存在とお考えください」と述べるとともに、「NP1は特徴ある車載器とPiomatixが連携して音声と通信で運転を新しくします。まるで助手席に優秀なパートナーがいるかのような移動体験を提供します。声で操作して音で確認、さらに通信が加わりカーライフに必要なものを1つに、そしてもっと便利になります」とコメント。

NP1をひと言でいうと“会話するドライビングパートナー”

 また、NP1では大きく4つの特徴があると紹介。1つ目は「スマート音声ナビ」で、行き先や周辺施設などさまざまな情報をNP1に話しかけるだけで検索でき、ルート情報や検索結果も音声で案内する。例えば「NP1、次どこ曲がればいい?」と聞けば「2つ目の信号を右です。右車線をお進みください」と助手席目線の案内を音声で行なってくれる。また、クラウド型のナビゲーションのため地図データは常に自動でアップデートされるメリットも挙げた。

スマート音声ナビ

 2つ目は映像をクラウド上にも保存する「クラウドドライブレコーダー」。これは録画映像を通常時のSDカード保存に加え、衝撃検知時やユーザーの音声や手動による操作時にはクラウドにも自動保存を行なうというもの。もしもの時にも録り逃しの心配がなく、スマートフォンで簡単に録画映像を確認することができる。また、駐車中に衝撃を検知して録画する「駐車異常通知」機能や、目にとまった景色や車内の様子など残しておきたい場面を音声だけで撮影・録画できる機能、トラブルになりそうな後方車の接近を通知する「後続車異常接近通知」機能も搭載している。

クラウドドライブレコーダー

 3つ目は車室内をオンライン化する「クルマWi-Fi」。車内向けインターネット接続サービス「docomo in Car Connect」を別途契約すると、LTEデータ通信を定額で制限なく利用できるWi-Fiスポット機能を搭載しており、スマートフォンやタブレット端末を最大5台まで接続でき、動画・音楽などのストリーミング再生やオンラインゲームなどのコンテンツを車内で楽しむことができる。

クルマWi-Fi

 4つ目はOTA(Over The Air)により新サービスの追加が可能な「もっとカーライフ++(プラスプラス)」。発売時には地図画面とドラレコ画面を車外の人と共有できる新しいドライブコミュニケーションツール「ドライブコール」機能と、「桜の名所 上野公園が近くにあります」といった運転が楽しくなる情報を届ける「ドライブトピック」機能を搭載。「Amazon Alexa」の音声アシスタントも搭載予定(2022年春予定)としており、購入後も新機能の追加やアップデートにより、常に最新の地図情報や便利なドライブサポート機能を提供していくという。さらにおすすめの使い方や新機能の追加情報、目的地検索・案内・録画映像の確認、設定などはスマートフォン専用アプリケーション「My NP1」で行なえるようになっている。

ドライブコール
My NP1

 そしてふたたび登壇した矢原社長からは今後の展望が語られ、今後はNP事業部以外でもPiomatixを活用した製品を市場へ導入していくとし、「例えば、地域的には日本を皮切りに北米、欧州、アジアといったように世界展開をしていきます。さらに地域的な成長戦略以外にも計画があります。それは対象となる車種の拡張性です。実はこのNP1、4輪の自動車だけが対象ではありません。例えば2輪車ユーザー向けのプロダクトでは音声インターフェイスという特徴を持つPiomatixを活用し、これまでにないようなすごい商品を開発中です」と、今回の4輪向け製品に加えて2輪用のデビューも示唆。また、「私たちがターゲットとして見ている市場は国内の新車500万台というよりも、国内保有台数8000万台、もっと言えば世界の保有台数の約15億台、これを見据えています。しかもこれは4輪自動車だけの数字で、2輪を見てみれば世界最大市場のインドを含む、世界約7億台という巨大な市場もターゲットになると考えています」と述べた。

 なお、NP事業の売り上げ目標についても語られ、2025年に300億円、2030年には1000億円のビジネスに成長させることを明言。サービスでハードウェアでの収益を超えることを目標に、再上場も視野に入れているとした。

2輪車ユーザー向けのプロダクトも開発中
パイオニアがターゲットとするのは世界の保有台数である約15億台(4輪)
NP事業の売り上げ目標

 最後に矢原社長は「NP1とPiomatixを紹介した2022年2月10日を、新生パイオニアの復活ののろしを上げた日として皆さまの記憶に残っていただければとてもうれしく思います。Next Product、Next Platform、Next Pioneer。新しいパイオニアの今後にどうぞご期待ください」としてプレゼンテーションを締めくくった。

発表会の後半にはNP1のCMに出演する千原ジュニアさん、藤本美貴さんによるトークセッションも行なわれた